小島正憲の凝視中国

チャイナ・インサイドウオッチ:2012年2月&中国版スローシティ 


チャイナ・インサイドウオッチ : 2012年2月 
13.FEB.12
1.春節後の人手不足状況 : 一般情報と現実にズレ?

@一般情報

・珠江デルタ地区で、労働者100万人以上不足。内訳は深セン市20万人、広州市11万人以上、仏山市8万人、恵州市8万人、中山市5万人、東莞市10万人以上など。今年は、中高級人材は戻って来ているが、一般ワーカーの戻りが悪いのが特徴的だという。なお、月給3000元以上でも、募集状況は芳しくない。

・湖北省では、経済成長が著しい武漢市を中心にして、労働者が60万人不足。

・北京市と天津市の企業が、河北省各地で労働者争奪戦を演じている。石家荘市では、地元企業も2500元の給料を提示し、労働者の引き留めを図っている。

・上海市では、家政婦不足で、賃金が高騰している。清掃など簡単な家事でも、通いの場合で最低月額1500元、住み込みのベビーシッターの場合で平均月額4600元。

・長江デルタ地域の紹興市でも、春節後、多くの企業で従業員の2/3が戻ってきていないという。

・安徽省でも人手不足。従来、出稼ぎ労働者の供給元であった安徽省の地元でも、人手不足が発生。阜陽市の地元企業400社が、春節後、8万人を募集する予定で大型募集会を行ったが、応募者が少なくほとんど充足できなかった。

・山東省でも、春節後の労働者募集には、10〜20%の応募者しかない状態。

・河南省鄭州市では、春節で戻った労働者が、地元に新設された富士康の会社などに就職し、沿岸部に戻らなくなった。富士康鄭州工場は、今年末までに従業員を23万4千人に増員する計画。月給は2000〜3600元。

・大連市では、春節後、給与を2割以上引き上げ、人材確保に必死になっている企業が目立つ。

A繊維業界情報

 春節後、私が集めた繊維業界の情報、ことに縫製業界の日系各社(20社以上)では、沿岸部・内陸部を含めて、90〜100%の充足率であった。この現状は、一般情報との間にズレがある。現在、慎重に、その理由を分析中であるが、今のところ、欧米系の縫製工場がほとんど東南アジア各国に移転してしまったため、就職口が少ない、内需向けの縫製工場が受注不振で従業員を採用しない、モグリ工場が激減している、などの理由が考えられる。

Bその他、人手不足関連情報

・電子機器受託製造の世界最大手の富士康、春節後、深セン市の工場で2万人のワーカーを採用。研修後の基本給を2200元に引き上げたのが効果的だったという。なお富士康深セン工場は40万人の従業員を擁しており、春節後は、従来の従業員は97%が戻った。

・春節前、富士康武漢工場では、従業員100名余の飛び降り示威行動があったが、この行動はネットや携帯電話のメールで全国各地に伝播し、これに類似する示威行動が散見されるようになっている。

・広東省などの零細企業では、逆にこの春節の従業員の帰省を利用して、工場を閉鎖する企業も増えている。春節前に、従来支払っていたボーナスなどを、わざと支払わず、従業員に工場の先行きを不安視させ、戻って来ないように仕向ける手口である。正式に工場閉鎖ということになると、労働者の反発を招き、余分な出費がかさんだり、ストライキなどに巻き込まれる可能性もあるので、経営者は「次第細り」で工場を閉鎖することを画策している。

・欧米寒波特需で、突然にぎわっている業界もあり、そこではベテラン従業員の超引き抜き合戦が行われている。

C最低賃金制などの賃金動向

・中国政府は、2/08、2015年までの5か年計画で、最低賃金を毎年13%以上引き上げる方針を打ち出した。

※つまり中国の企業の人件費は過去5年で倍増し、さらに今後5年で現在の2倍になるということである。現在、労働者の実質の平均給与が3000元(約3万6千円)、最短で3年後には6000元(約7万2千円)となる計算となり、人民元高の要素を加味すると、約10万円になる可能性もある。また技術者や管理職などの高給取りは、日本人の給与と同等となる可能性も出てくる。

※中国政府は、最低賃金のアップで、労働者の収入を増やし、購買力を高め、内需を活性化することを目指している。しかし多くの労働集約型企業は、賃金アップと多発する労働争議を嫌って、東南アジア各地へ工場を移転させている。その結果、これまで労働者を吸収していた産業が中国から消失し、にわかに失業問題が浮上してくる可能性がある。先進各国でも、理論上、最低賃金のアップが経済の向上に寄与するかどうかは、疑問視されているところでもある。

・深セン市、2/01から最低賃金を、月額1500元に引き上げ決定。広州市も年内の最低賃金引き上げを言明。

・深センの大卒者は、平均月収3500〜4000元を希望しているという。

D量的不足から質的不足の時代に転化

 従来から私は、中国では2003年度から人手不足現象が現れており、やがてそれが中国経済に深刻な影響を与えると力説してきたが、昨今、やっとそれが認知されるようになってきた。ただし、その原因はまだ究明されておらず、多くの学者が内陸部での就職機会の増加や、一人っ子政策の結果の若者減を上げるにとどまっている。私は、その真因は、中国におけるもぐり企業の存在にあると考えている。この検証は、近日中に行う予定であるので、ここでは省き、中国における労働者の問題は、すでに量的な問題から、質的な問題へ転化しているということを指摘しておく。

 現在の出稼ぎ農民工は、80年代生まれの「わがまま一人っ子・小皇帝世代」であり、楽な仕事に就きたがり、現場作業を嫌う、能力もないのに高給を望む、ちょっとした不満ですぐ転職する、フリーターやニートになりやすい、などの特長を持つ。その傾向は日本などの先進各国よりも、はるかに強い。それは元来の儒教の影響が強い国民性、商の民族としての特性が、拝金主義の横行や一人っ子政策の結果によって、増幅されている。現代の中国の若者からは、軍隊でいうところの下士官、つまり現場の工場長や管理者クラスが育たない。それが今後の中国の大きなネックになる。とにかく自分で苦労して技術をマスターせず、簡単に他人のものを横取りしたり、目的達成のために楽な手段を選ぼうとする。 

 大学では論文などの剽窃が多く、その売買市場ができているような惨状である。最近でも、写真専門誌が全国規模の写真コンクールを行ったところ、当初の入賞作品52点のうち25点が、コンピューターで修正されていたものであったことが判明し、入賞を取り消されたという。

 企業も自助努力で、イノベーションに取り組むことが少なく、とにかく最先端技術を持っている外国企業を買収したり、外国人技術者を雇用し、手っ取り早く模倣しようとする。しかしそれらの技術そのものを、現場で学び取ろうとする若者が少ないので、それは定着しない。特許申請なども数は多いが、独創的なものが少ない。

 中国政府も、いまだに先進各国の最先端技術を保有している企業の誘致に、全力を挙げており、技術面での自力更生の努力を放棄している。

2.春節後のマンション販売 : 売り手・買い手のにらみ合いで、物件動かず?

@一般情報

・深セン市の1月の住宅販売数、前月比56%減。春節のあった昨年2月比、24%減。

・上海市の1月の新規分譲住宅物件、前月比92.1%減。春節中に販売された住宅は、前年同期比33.3%減。中古住宅の値下げ幅は、8〜12%。

・青島市、春節中の住宅販売、わずか2戸。

・北京市の1月の新築住宅成約件数、昨年同月比61.6%減。販売価格は前月比15.7%、前年同期比20.5%減。中古住宅は、前年同月比80%以上減少、価格は前月から6.6%、前年同月比16%下落。いずれも春節後も低迷。

・大連市、春節中の住宅販売量、前年同期間比85.1%減。

・瀋陽市、春節後の土地入札で、買い手つかず、2件不成立。

・銀川市(寧夏回族自治州)、1月のマンション販売価格22%減。

・春節の住宅制約件数は、主要都市で80%減。

A実情 : 売り手・買い手のにらみ合いで、物件動かず?

 上海市内の不動産屋の店頭を見て歩いたが、ほとんど客がいなかった。帰省した不動産セールスマンも戻っておらず、閑散とした状況。

 それでも強気の販売業者が、市外の新築マンションの販売促進のため、バスでの現地視察を行っていたので参加してみた。春節後はじめての視察会への参加者は40人ほどであった。現地で物件を見たり、宣伝をそれなりに聞いていたが、成約しそうな参加客は2組のみだった。

 
    昆山市花橋鎮 中城国際花園 

 このマンションは、建設中の地下鉄11号線の終点から、歩いて5分ほどの場所であり、便利は良さそうであった。価格は、すでに昨年末、建設開始時に売り出されたときの値段よりも、30%下落した。またこのマンションは建設中で今年の10月ごろに完成する予定であるという。参加者たちが、「それまでにまだ下がる可能性があるのではないか」と、さかんにセールスマンに聞いていたが、彼はなにも言わなかった。なおこの団地には、低層住宅が200戸、すでに完成済みであったが、現時点で半分しか売れていないという。

3.その他

@江蘇省無錫鋼材貿易トップ企業《一州集団》の経営者が夜逃げ。

・鉄道やマンションの建設が右肩下がりになったため、鋼材のメーカーの経営が苦しくなってきた。そのような中で、江蘇省無錫鋼材貿易トップ企業《一州集団》の経営者が、妻子を連れて夜逃げした。経営者の不動産や高級車などが銀行によって差し押さえられた。この経営者は、本業の他に、マンション投資や高利貸しに手を出しており、その損害もかなり大きいという。

A温州市で「世界温商大会」開催。

・温州市政府は、2/01、中国国内や世界各地に散らばる温州市出身の企業家約1000人を集め、「世界温商大会」を開催した。大会では、陳徳栄市共産党書記が、「民間資金が大量に流出し、市の産業が空洞化しているので、ふるさとへ戻って欲しい」と、投資を呼びかけた。

BIMF、今年の中国の経済成長:4%台の可能性を示唆。

・IMFは、このまま欧州危機が悪化すれば、今年の中国の経済成長は4%台まで悪化する可能性があると予測を示し、景気刺激のための財政出動を促した。

C原発建設に反対

・安徽省の望江県政府は、隣接する江西省彭沢県に建設が計画されている原発の中止を、中央政府に求めた。「地震発生時の安全性などに問題がある」として反対している。原発建設を推進している中央政府に地方が反対するのは異例。今後の展開が注目されるところである。


中国版スローシティ ここにタイトルを入力します
16.FEB.12
 2010年11月、「国際スローシティ連盟」から、江蘇省南京市の南方にある高淳県椏渓鎮が、中国初の「国際スローシティ」に認定された。椏渓鎮の人口は2万人ほどで、6つの村からなる生態観光エリア(面積49平方キロ)で構成されている。この鎮の2009年度の1人当たり年間収入は9900元。

 

 もともと「スローシティ」という運動は、1988年、イタリアのローマで発表されたファーストフードチェーン店の開店計画に、市民が反発して起こした、「スローフード」運動を拡張したものとされ、ネット上には下記のような解説が載せられている。

「スローシティ」は、イタリアの小都市、オルヴィエト市、キアンティ市、ブラ市、ボスティアノ市など、スローフードに力を入れる街が、“質”“多様性”“感性”“楽しみ”といったスローフードの理念を街づくりにまで広げようと1999年に結成した小都市が発信する率先運動である。グローバリゼーションがもたらす標準化、効率化によって失われている街の個性や固有の文化、生活のリズムを守る、または再び呼び起こす、という考えがこの運動の根本にある。参加できるのは、人口5万人以下の街で、登録後に“スローシティ憲章”に則った街づくりを自らに義務付ける。スローシティの度合いを測るための評価基準も設置され、環境保全のほか、市民の意識や観光、景観など多岐にわたる。現在イタリアをはじめ、スイス、クロアチア、ドイツなどから約100の自治体が会に加盟しており、他のヨーロッパの国々、アメリカ合衆国、日本などからも参加の問い合わせがあるという。「スロー」とは、ここでは、「注意深い」「心地よい」「豊か」という言葉に訳すのが、適切だ。グローバリゼーションのもとで効率化され、スタンダード化されている私たちの生活や身の回りの環境を注意深く観察し、見直し、そして地域の文化や伝統的なライフスタイルのなかに隠れている「心地よさ」「豊かさ」をみんなで探しだそう。(EICネット「スローシティ」から引用)

1.中国版スローシティ

 中国初のスローシティに認定された高淳県椏渓鎮は、上海から直行バスで約4時間、南京から1時間ほどの地点にある。椏渓鎮でバスから降りて、タクシーに乗って10分ほど走ると、道路沿いに「国際慢城椏渓鎮」という大きな看板がある。その看板にしたがって脇道に入るとすぐに、そこにはのどかな田園風景が広がっている。道路には車がほとんど走っておらず、田畑やぶどう園、梨園、竹林、池などの風景をゆったりとした気分で満喫できる。20分ほどで、慢城椏渓鎮の中心にあるホテルに着く。そのホテルは新築の3階建てである。この地区の景観を乱さないように配慮された建築であるという。ただし5階ぐらいの高さに相当する望楼がある。登ってみると、四方ともに、遠方までなだらかな丘が続くのみで、工場らしきものはまったくなかった。

 

 ホテルの支配人は、「スローシティに認定されるには、人口5万人以下で、工場がない、騒音がない、大きなスーパーや飲食店がない、環境汚染がない、都市緑化に尽力する、伝統手工芸を有す、地元の特産料理を有す、などの54項目をクリヤーしなければならない。椏渓鎮がスローシティに認定されるには、まだまだ不十分なところが多いが、当地には工場が1か所もないし、植物が豊富であり、都会の近くにしては自然の生態系が多く残っているし、文化遺産も持っているので、都会の人間がここに来て生活すれば緊張感もほぐれ、ゆっくり、ゆったりできる。それが、椏渓鎮が“スローシティ”に認定された理由だと思う」と、話してくれた。

  
    サイクリングロードにある蝸牛の道標

 ホテルにはまったくお客さんがいなかったので、支配人に聞いてみると、「冬季にはお客さんは少ない。菜の花の咲く季節には、たくさんのお客さんで賑わいます。お客さんたちは自転車に乗り、終日、のんびりとこの近辺で過ごされます」と、話してくれた。そこで私も自転車を借りて、ホテル周辺を回ってみたが、意外に起伏が多く、きつくてサイクリングを楽しむということにはならなかった。しかも寒かったので、1時間ほどでホテルへ戻った。ホテル周辺には、飲食店などはまったくなかったので、ホテルの食堂で食事をすることにし、この地の伝統の名物料理を食べようと思った。しかしメニューを開いてみると、一般的な食堂の定番中華ばかりで、特別な料理はなかった。

 翌日、タクシーの運転手に、「慢城農家楽」という名前の食堂に案内してもらい、地元の伝統料理だという「紅焼老鵝」を食べることにしたが、値段が高いのとあまり美味しくなさそうだったので、注文しなかった。また慢城椏渓鎮には、土産物屋もなく伝統手工芸品の類もまったくなかった。慢城椏渓鎮の案内地図には、寺院や芸術劇場、太平天国の戦跡などが書き込んであったので、タクシーの運転手に案内してもらった。しかし寺院は新しく小さなものだったし、芸術劇場なるものは粗末な野外劇場で、しかもそこでは1年に1回の公演が行われる程度だという。南京の近くだから、せめて太平天国の戦跡はきちんと遺っているだろうと思い、心を躍らせて現地に行ったが、現在、整備中ということで、それを見ることはできなかった。

 地元政府の関係者は、これらの実情について、「つい最近まで、椏渓鎮は道路も工場もなく、貧しく、都会の繁栄から、完全に取り残された村であり、“この村だけにはお嫁さんに行くな”と言われていた。それが幸いして、現在は“国際スローシティ”に認定された。実際には、村内に銅の加工工場が1か所あったが、それは村外に移転させた。これからは“国際慢城”として、売り出して行く。昨年の国慶節の連休中には、1日に1万人の観光客が訪れた」と、強気で話している。残念ながらここにあるのは、「スローシティ」の思想ではなくて、ビジネスで言うところの「逆張り経営」思想である。

 また中国人識者は、「過去において“スロー”という言葉は、中国の政治家にとってタブーのようなもので、彼らはもっぱらGDP成長に躍起になっていた。ところが中国は現在、世界経済が低迷しているのを背景に、経済構造調整と経済成長維持のバランスを取る道を模索しており、もしかするとこの先、椏渓鎮は持続した発展を遂げるモデルケースになるかもしれない」と語っている。しかし私には、椏渓鎮を取り巻く状況は、やはり拝金主義に毒されたもので、看板に蝸牛を付け、「スロー」を連呼しているだけで、他所と違う方法で「経済成長路線」を追い求めているように見える。そこからは「スローシティ」の思想のにおいはまったく嗅ぎ取れなかった。

2.日本版スローシティ

 日本の「スローシティ」運動の音頭を取っている久繁哲之助氏は、その著書「日本版スローシティ」(学陽書房刊)で、以下のように書き、その地域のライフスタイルの重要性を説いている。

 「可視、論理、効率」から創られる均質化した都市を「ファストシティ」と定義する。ファストシティは学者が大資本と連携して考案、大資本が経済的利益を享受してきた。しかし、それは地域固有の風土・人間性を衰退、喪失させ、その弊害は小さな都市ほど大きい。欧米では、その反省から、ゆとりと豊かな感性を有する市民が地域固有の文化。風土を回復・創造する「スローシティ」への変換が進んでいる。現在では、小さな都市におけるまちづくりの潮流となっている。欧米のスローシティ成功は、地域に根づいた文化・風土とその地域に集まる市民のライフスタイルを尊重する精神が根底にあることが大きい。こういう根底にある不可視な精神こそ、現代日本のまちづくりにもっとも求められよう。

 その上で久繁氏は、「スローシティ」の要件として、@ヒューマニズム:人間中心の公共空間をゆっくり歩ける、Aスローフード:地域固有の食をゆっくり味わえる、B関与:地域固有の文化・物語に市民が関与(参加)できる、C交流:ゆっくり話せる・観れる・癒される、D持続性:市民のライフスタイル・意向を把握する、の5点をあげている。このような視点で、中国版スローシティの椏渓鎮を眺めたとき、やはりそこに真のスローシティの姿を見い出すことはできない。もっとも日本にも、その代表的成功都市は少ない。

 さらに久繁氏は、現代は都市をめぐって5つの社会変化が起きているといい、@車社会、Aインターネット社会、Bグローバル社会、C格差社会、Dカップル減少社会をあげている。@からCの久繁氏の指摘はよく目するものだが、Dのカップル減少社会という視点はおもしろい。ここで久繁氏は、日本の非婚率の上昇は、「女性が男性へ高い期待」をもつことにあると推測し、特に男性に期待する収入が、男性が現実に得ている収入より非常に高いことが根本にあり、男性の多くは、収入面で女性の高い期待に応えられないため、「金銭的に余裕がない」と結婚を諦め、「自分の欲望を満たす趣味に走る」結果、シングル文化の国が誕生しているのであると説明している。このような現象は、現代中国においてはもっと顕著であり、「マンションを持たない男性は結婚できない」というのが、常識化している。

 私はこれらの都市変化に加えて、今後は高齢化社会の要素を付け加えるべきであると考える。中国より一足早く高齢化社会に突入した日本は、この問題をライフスタイルの思想にまで昇華させ、スローシティ思想として結実させていかねばならない。古来、日本には、伝統文化としての「姥捨て思想」がある。この思想は、自己犠牲の精神の極致である。われわれ高齢者は、飽食の時代を生き、医学の発展に裏打ちされた人類史上かつてない長寿社会に到達した。今こそ、われわれ高齢者は新たな思想を打ち立て、実践せねばならない。