小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2010年 7月 


暴動情報検証 : 2010年 7月 
21.AUG.10
1.と2.は検証済み。3〜5は未検証。
暴動レベル基準は文末に掲示。

1.7/11〜13、広西チワン族自治区百色市靖西県で、村民がアルミニウム工場に抗議。暴動レベル1

・マスコミ報道 : 7/11、アルミニウム工場の道路建設に反対する村民1万人以上が、県政府に抗議を行ったが、県内へ入る道路の入り口で大勢の武装警察に阻止された。同日、凌晩村の現場では、工事を実力阻止しようとした村民たちを、工場の従業員や工場に雇われた暴力団風の男たち約300人が襲った。村民たちはこれに石や手製の爆弾などで応戦した。ここにも武装警察が出動し騒動を鎮めた。12日、800人余の村民が、工場を襲撃し、工場の車や門を破壊した。それを止めようとした工場従業員3人が死亡し、18人が負傷した。13日、近在の村民も加わって、約2万人の村民が再び県政府に抗議。武装警察300人が出動し、それを阻止した。

             
              7月13日 靖西県凌晩村

・実情 : 少数民族:チワン族の居住地の靖西県ホウ(まだれに龍)凌村の付近にはアルミニウムの原料のボーキサイト鉱床があり、さらに石炭も産出されるため、アルミニウム製造工場には最適条件であった。ここに2007年から山東省資本のアルミニウム工場(広西信発リョ業有限公司 リョ:金へんに呂)が建設され始め、3年後の2010年には従業員2万人を超える巨大企業となった。急成長の結果、地元の環境は破壊され、ことに鉱山近くの河川の汚染が激しく、ホウ凌河は清流が泥流に変わってしまった。村民の健康被害も出始めたため、村民が工場に抗議を行っていた。最近になって工場が、鉱山現場と工場を直接つなぐ道路の建設を開始したが、村民たちとの間で農地収用が未決のままであったため、村民の激しい反発にあっていた。さらにその工事により、地下水路が塞がれ川の水が溢れ出し、400世帯の村民の住居が冠水、下流の村には農業用水が行き渡らないという被害が出るに及んで、村民は補償金を要求し、団結して抗議行動に立ち上がった。7/13には、約2万人の村民が集結したため、百色市から数千人の武装警察が出動、事態を鎮めたという。現在、この地の環境問題は未解決。

             
                 泥川と化したホウ凌河        アルミニウム工場前、後方に火力発電設備4基

・私見 : 広西信発リョ(金へんに呂)業有限公司は工場内に火力発電設備4基を備え、2万人を越す従業員を抱えた巨大企業であった。もともとこの地域の開発は、隣の県の徳保のチワン族企業が行っていたが、経営が軌道に乗らず撤退した。その後、地元政府が奔走し、山東省企業を誘致した。工場は地元政府の優遇政策を受け急成長した。なお、この山東省企業は政府要人の甥にあたる人物が経営に携わっているという。工場の幹部はほとんど山東省人で固められ、地元のチワン族は単純労働に従事するのみで、その賃金格差は3〜10倍に及んでいるという。それでもこの工場は、地元チワン族に貴重な就業機会を与えており、それまで工場内外で漢族とチワン族の対立はなかった。しかし地元に環境被害が頻出するに及んで、対立が表面化した模様。

 ※靖西県の人口は63万人。そのうち約99%がチワン族。


2.7/14〜19、江蘇省蘇州市通安県で、農民2万人が土地収用で政府に抗議。  暴動レベル1

・マスコミ情報 : 7/14、蘇州市高新区通安鎮新銭村の村人たちは、08年以前に売買した土地収用の価格に不満で鎮政府に抗議を続けてきたが、政府の返答がないため、1000人ほどの村民が通安鎮役場に押しかけ、役場内の備品を破壊した。16日には鎮政府が約束の場に現れなかったため、村民たちが騒ぎ立て警官隊と衝突。17〜19日には約1万人の村民たちが近くの国道を封鎖し抗議を続行した。武装警察約500人が南京市から派遣され、事態を鎮めた。鎮の党書記、副書記、鎮長が罷免。

             

・実情 : 今年に入って政府に収用された土地の価格が以前の約3倍となったため、以前に売却した村民が差額を要求して抗議を行った。鎮政府は2003年から土地の収用を開始していたが、そのほとんどが開発されておらず、村民は鎮政府がその間に巨額の資金を手にしているため、その差額を追加補償金として支払うことを要求した。また村民は政府の規定では村民の土地付き住居を収容する場合には、一戸につき70万元の補償金となっているのに、実際には政府は18万元しか払わず、その差額が政府役人に着服されていると主張している。さらに今年に入ってからも、土地付き住居収用価格は、各戸でばらつきがあり、政府とコネのある村民のものは高いなどという事態に村民の不満が溜まっていた。村民約2万人が19日、国道31号線を封鎖し抗議をした。 事件後、ただちに鎮政府関係者、区局長が罷免されたが、村民の要求は未解決状態が続いている。地元のタクシー運転手たちには、村民が中央政府に抗議に行くのを防ぐため、鎮公安局から情報提供要請があるという。なお、以前に土地を売却した村民たちは、市内の小奇麗なマンションに移住済みである。


3.7/25、広東省広州市海珠区で、広東語使用制限に市民約2千人が抗議行動。  暴動レベル0

・マスコミ報道 : 7月初め、広東省政府がこれまで広東語をメインにしていたテレビ放送を普通語(北京語)に切り替える方針を発表したため、これに反発した市民が、7/25、夕方5時ごろから、地下鉄2号線「江南西」駅の地上周辺に集まりデモ行進を行った。参加者は、「私は広東語を愛する」、「広東語を守ろう」、「言語の自由を」などのプラカードを掲げた。公安当局は1000人以上を出動させ、警戒に当たったが、衝突はなかった。デモは6時半ごろ解散した。

広東省政府は、「アジア大会に合わせ、国際都市のイメージを形成する」との意向で、テレビでの広東語の使用制限を提案していた。これに対して一部の市民が不満を表明し、小さなデモを行っていたが、インターネットで25日のデモが呼びかけられ、大規模な示威行動につながった。無許可デモのため、現場で3人が逮捕・拘束された。

7/28、広州市弁公室は、「広東語を廃止することは永遠にない」と発表し、市民の理解を求めた。またインターネット上で、「広州市がすべての番組を普通語にしようとしている」と誤った情報を流して、許可されていないデモへの参加を呼びかけるなどした湖北省出身の男性を拘束、5日間拘留したことを明らかにした。


4.7/26、広東省深セン市福田区の交通警察官が、区委員会に高温手当てを求めて陳情。
                                               暴動レベル0

・マスコミ報道 : 7/26、深セン市福田区の交通警察官数十名が、福田区委員会の門前に集合し、一人当たり150元の高温手当てを求めて陳情活動を行った。


5.7/04、四川省阿ハ(土へんに覇)州で、道路の使用をめぐってチベット族が当局に抗議。
                                               暴動レベル0

・マスコミ報道 : 四川省阿ハ州で、寺院に通じる道路が長年にわたって、工事という理由で塞がれていることに対して、村長らが上級政府に陳情書を提出していたが、返答がなかったため、7/04、地元のチベット族が多数集まって抗議。警察官と衝突し、村長ら7人が逮捕された。