小島正憲の凝視中国

最近の中国の天災・人災など 


最近の中国の天災・人災など   
31.AUG.10
 最近、中国の天災や人災の情報が多い。

 なにしろ中国は13億人の住む大国であり、急成長を遂げている最中であるから、それは驚くにはあたらないかもしれない。

 1990年中盤、韓国ではソウルの聖水大橋崩落、三豊百貨店倒壊、大邱の地下鉄工事現場ガス爆発など、大事故が相次いだ。直後、韓国政府が行った全国高層建築緊急一斉調査では、立て替えが必要なものが全体の15%弱、修理が必要なものが80%との結果であった。

 最近の中国の事故情報は、かつての韓国を思い出させる。

1.天災

@7/27、四川省漢源県万工郷二蛮山で、豪雨による土石流発生。

・双合村の5世帯、21人が生き埋めとなる。

A7/28、吉林省永吉県で、豪雨による大洪水。化学工場からドラム缶7000個が、松花江に流出。

・7/28、中国東北部は100年ぶりといわれる豪雨に見舞われ、各所で洪水が発生した。中でも吉林省永吉県では、新亜強化学工場かの倉庫が洪水で倒壊し、化学薬品トリメチルクロロシラン(TMCS)が入った大量のドラム缶が、近くを流れる松花江に流出した。TMCSは引火性が高く、火災時に有毒ガスを発生されるため、近隣住民や流域住民が一時かなり緊張し、水の買いだめに走った模様。

・政府当局と解放軍が、ドラム缶の回収に努め、1日午前までに5365個を回収した。その後も回収作業続行中。なお政府当局は、「ごく少量でパニックになる必要はない」と発表している。

B8/08、甘粛省甘南チベット族自治州舟曲県で、大規模な土石流が発生。

・8/08未明、甘南チベット族自治州舟曲県で、豪雨による大規模な土石流が発生した。中国政府は「特大災害」として、たたちに温家宝首相が現地入りし、災害復旧の指揮を取った。

・同県では7日夜から豪雨が続き、土石流が300世帯の住宅を巻き込み、近くを流れる白竜江をせきとめ、洪水被害も引き起こしている。大量の軍や武装警察が投入され、生き埋めになった人の救出や行方不明者の捜索、せき止められた川の掘削を行っている。

・昨年の四川省大地震、今年4月の青海省玉樹県地震に引き続き、またもチベット族居住地域で災害が起きたため、政府はきわめて神経質になっている模様。8/15を全国哀悼日として、公的な場所では半旗を掲げ、TVなどでは終日、哀悼番組を流した。また被災地では、犠牲者を含む1700人の追悼式が営まれた。なお上海万博会場でも、文化演芸活動はすべて中止された。

・8/21時点で、死者1434人、行方不明者331人、負傷入院中72人。

・8月末、中国の国土資源庁は、復興と再建、災害の再発防止に向けた地質調査などに、総額22億3千万元(約277億円)を投じることに決定。

C8/12〜15、四川省で大雨被害続出。

・大雨で、観光で有名な九寨溝と成都間の道路が遮断され、陸路の九寨溝ツアーは中止となった。

D8/18午前1時半ごろ、雲南省怒江リス族自治州貢山県普拉底郷で大規模土石流発生。

・大雨で大規模な土石流が発生し、集落に土石流が流れ込み、家屋29戸が押し流された。死者は14人、行方不明者48人。電話など通信が遮断されており、復旧活動は難航している。

E8/18〜19、四川省で再び豪雨。

・豪雨のため、崇州の懐遠定江大橋、都江堰の白沙河大橋、広漢の石亭江大橋など、多くの古い橋が押し流された。

・蒲江では馭虹橋が倒壊した。まだこの地域には倒壊する危険のある橋が10か所以上あるという。

F8/19午後3時15分ごろ、四川省で増水のため鉄橋崩落。汽車脱線。

・四川省の宝成鉄道の徳陽から広汗の間にある石亭江大橋が、大雨のため増水した川に押し流され、崩落した。通りかかった汽車が脱線したが、幸いに死者はなかった。

 
         鉄橋崩落現場

G8/19〜21、遼寧省で豪雨被害。

・3日間降り続いた豪雨のため、鴨緑江下流の丹東市で洪水が発生。家屋230戸が崩壊、3人行方不明、約1万人が避難、約5万1千人が被災。

北朝鮮側にもかなりの被害が出ている模様。

・遼寧省の豪雨被害は、丹東、阜新、錦州、本渓、鞍山の5市17県に及び、被災者は46万人に上っている。4人死亡、1人行方不明。


2.人災

@炭鉱事故

・7/08、河南省平頂山市の炭鉱で、爆発事故。6人死亡、34人負傷。クレーンや工場建物が大破。原因不明。

・7/21、河南省平頂山市衛東区の興東第2炭鉱で、坑内爆発事故。47人が死亡、5人行方不明、6人重傷。

・7/31、山西省臨汾市翼城県の炭鉱で、従業員宿舎が爆発し、17人が死亡、14人が重傷を負った。労働者の一人が違法に爆薬を所持しており、それが爆発した模様。容疑者は拘束。

・7/31、黒竜江省鶏西市の炭鉱で、坑道が冠水し、24人が閉じ込められた。

A7/03、福建省の「紫金山銅鉱」で、有毒排水漏出。

・7/03、中国最大の金・銅採掘会社「紫金山銅鉱」の現場で、豪雨のため、汚水貯水場の水位が上昇し、銅を含む酸性排水約9100立方メートルが汀江に漏出。周辺の養魚場の魚など約2000トンが死んだ。

・7/16、同じ鉱山で、再び約500?の有毒排水漏出事故発生。下流の汕頭市民は水質の汚染を心配し、ペットボトルなどの水の買いだめに走っている。紫金山銅鉱は下流の広東省から損害賠償を請求されている。

・7/28、紫金山銅鉱の陳家洪副総裁が、重大な環境汚染を引き起こした容疑で、公安機関に身柄を拘束された。

B7/16午後6時ごろ、大連港で石油パイプラインが爆発炎上。

・大連新港の「中国石油」の石油パイプラインが爆発炎上。埠頭では30万トン級のパナマ国籍のタンカーが石油をおろす作業中に事故が発生。最初のパイプラインの消火は16日深夜に一段落したが、その後、隣のパイプラインにも燃え移り火が20mほどまで上がった。約400台の消防車、2000人以上の消防士が出動し、消火活動に当たり、翌日朝9時ごろ、ようやく鎮火した。

・事故原因は、パイプラインへの脱硫材の流入を受け持った業者の運営、作業ミス。

・この爆発炎上事故で、海面に1500トンの原油があふれ出した。この原油の除去作業に、35隻の原油除去作業専門船と、その他の各種船舶約1000隻、1万人以上が当たっている。原油は430平方キロメートル範囲に、厚さ20センチで広がっている。

・米環境保護団体の現地調査結果によれば、原油流出は最大で9万トン、その範囲は946平方キロメートルに及び、完全な生態系の復活までには10年以上かかる。

・この原油大量流出で大連港周辺では異臭がただよい、避暑に来る観光客が激減しているという。

・中国保険監督管理委員会の関係者によると、この事故で被害を受けた企業は650万元の保険金を受け取ったという。

また消火活動中に亡くなった消防士の家族には、保険会社から20万元が支払われた。

・この事故で付近の海域約50平方キロメートルの海水が汚染され、経済損失は最大で1億元に達すると見られている。

C7/28、南京市でガス爆発事故。

・7/28午前10時ごろ、市内のプラスティック工場でガス爆発があり、10人が死亡、重傷者14人を含む、120人が入院。軽症者も含めると数百人に達した模様。地元住民の間では、死亡者76人、負傷者5千人余という情報が飛び交っている。海外ニュースではすでに死者は259人に上ると報じている。

・工場を解体作業中に、地下に埋設されたガス管から漏れたガスに引火、爆発した模様。

D8/05、上海でマンションにひび割れ。倒壊の恐れがあり住民が退去。

・上海市普陀区桃浦鎮白麗路(紫藤苑小区)701に建っている8棟のマンションのうち、3棟(32、33、34号)の壁に、数年前からヒビが入り始め、次第に大きくなってきていたが、8/05、とうとう人影が透けてみえるようになってきたため、地元当局が倒壊の恐れがあるという判断で、住民98世帯を引っ越させた。

・住民によればマンション倒壊の危険性の原因を、「このマンションは7階建てなのに2階建ての基礎工事しか行われていない、またマンションの下がもともとは川であり地盤が軟弱であった」と語っている。

・6日午前、桃浦鎮政府は、この問題を解決する会議を開き、当面住民全部の3日間のホテル滞在と毎日一人当たり30元の食事代を払うことを決定したが、その後のことは未定だという。

          
       上海:住民が退去したマンション        広西:貴港市のマンション倒壊現場

E8/13、広西チワン族自治区貴港市港南区橋虚鎮の3階建てのマンション突然倒壊。

・朝6時半ごろ、突然倒壊。住民12人が生き埋め。市の消防隊員300人が救出活動に当たったが、3人死亡、9人負傷。当マンションは、1階が店舗、2階が事務所、3階が住居となっていた。倒壊原因は、現在調査中。

F8/16、黒龍江省伊春市内の爆竹製造工場で爆発事故。19人死亡、不明5人、148人負傷。(17日現在)。

・地元当局は消防車62台、消防隊員1700人以上、ヘリコプターなどを投入し消火活動を展開。

・この工場は、地元当局から安全面の不備のため操業を許可されず、生産停止中だったという。

G8/19午後1時20分ごろ、広東省東莞市東城立新社区新街路で、落雷のため工場炎上。

・この工場はペンキなどに使う化学薬品を製造していたため、火炎が燃え広がり、周辺の家屋や工場が炎上した。

           

・この工場は無許可営業(モグリ工場)であったため、工場責任者や従業員は火災と同時に、消火活動もせずにどこかに逃げてしまったという。


3.公害関係・事故など。

@7月、江蘇省南京市六合区馬鞍鎮大営村で、井戸水が汚濁し飲用できず。

・当村にはまだ水道水が普及しておらず、住民たちは池の水や井戸水を利用していた。ところが最近、その池の水が汚濁し、井戸水も黄色くなり、飲めなくなったという。ろ過装置などをつけても、見た目がきれいになるだけで、汚染された水質は変わらないという。村の周辺人口が急激に増え、ゴミなどが大量に排出され、そこかしこに放置されていることが原因ではないかと考えられている。

・当局は、早期に水道を通す計画であり、ゴミ焼却場を建設すると発表。しかしそれが実現するのはまだまだ先のようであり、住民は悲嘆にくれているという。

A7月、湖北省武漢市の武漢南湖で、魚大量死。

・7月に入って、武漢市の武漢南湖では、毎朝、湖面に魚の死骸が大量に浮かぶようになった。その臭いに住民が閉口して市政府に陳情。魚の大量死は生活排水などの排水口近辺で発生しており、その周辺の水の色は茶褐色になっている。市政府が漁業関係者と合同で調査に乗り出している。

B8月、広東省陸豊市大安鎮の水道水のマンガン含有率が標準の12倍。

・陸豊市大安鎮の水道局は毎月の定期水質検査で、水道水に標準値の12倍のマンガンが含まれていることがわかったため、ただちに市政府に報告し、原因調査に入った。

・報告を受けた市政府は、この事態を住民に告知し、当面、水道水を飲まないように指示した。また警察当局に連絡し、市場で、ペットトボトルなどの値段の吊り上げや売り惜しみが起きないように、監視を依頼した。

・市政府はマンガンが人体に有害であり、現水源の地質に問題がある可能性が大きいとして、代替水源の確保に着手。

C乳児の早熟騒動。

・山東省の乳製品メーカー:青島聖元栄養食品の粉ミルクを飲んだ赤ちゃんの胸が膨らみ始めるなどの早熟現象が、相次いで報告されている。原因について、専門家は「乳の出をよくするため乳牛に投与された女性ホルモンが残留していた可能性がある」と指摘している。

・中国衛生省は8/15の記者会見で、山東省の乳製品メーカー:青島聖元栄養食品の粉ミルクを飲んだ赤ちゃんの胸が膨らむなどの早熟現象について、「単純性の早期乳房発育で、粉ミルクとは関係ない」とする調査結果を発表した。

・同社の張亮董事長は政府の調査結果を受けて、メディアに謝意を表し、同時に消費者の信頼回復をめざして、1000万元を拠出し乳幼児基金を設立することを表明した。乳幼児の病気に関する研究や知識の普及などを進めることを目指す。

D8/24夜、黒龍江省伊春空港で、旅客機着陸失敗、爆発炎上。43人死亡、53人救出。

・ハルピン発伊春行きの河南航空のVD8387機が着陸時に、滑走路から1.5km離れた草地に激突。

・伊春空港は2008年に開港したばかり。山間部にあり、夜間の飛行条件は複雑だったという。

・同機はブラジルのエンブラエル社製のE190型ジェット機で、全長36m、106人