小島正憲の凝視中国

09年10月:暴動情報検証


09年10月:暴動情報検証  
26.NOV.09
 この欄にレポートの寄稿をいただいている小島正憲氏から以下の訂正、削除の要請がありましたので、氏の意向に沿って訂正、削除しました。

なお、同レポートと同じページに掲載した「ウイグル族版女工哀史は誤報」は、すでに小島氏によって手直しされたものを掲載しています。(編集担当)


情報削除のお願い 

 10/17付け発信の≪09年9月:暴動情報検証≫において、下記の項が誤報であるとの指摘が読者から寄せられました。私はその指摘が正しいと判断しましたので、ここに陳謝すると同時に、読者各位に既報のこの項の全文の削除をお願い申し上げます。


削除していただきたい項 : 6.9/25 ウィグル料理店「新疆美食」で爆発事故。 

誤報と指摘していただいた点: @住所に不備がある、A単なる爆発事故を暴動というのは誤りである、B事後の匿名電話は裏づけができないのでデマの類いである。


 今回は、未検証情報として送信した部分に誤りがあり、まさに私の送信した情報が読者の手によって検証された結果となりました。

 今後は、未検証情報といえども発信に際しては、細心の注意を払いたいと思います。しかしながら私個人の力には限界があると思いますので、ぜひとも読者各位にも情報検証をしていただき、ご批判をいただければと思っております。

 また「ウィグル族版女工哀史…」のレポートについても、複数の読者の方から「表現がきつすぎる」あるいは「言葉に品位がない」というご叱声をいただきました。私も冷静になって読み返してみて、ご指摘通りだと感じました。今後はあまり感情を移入しないで、できるだけ事実に即し、冷静沈着な記述に心掛けますので、ご寛恕ください。




 10月後半になって暴動情報が多くなってきました。未確認ではありますが、全国的に退役軍人の抗議活動が起きているようです。今後とも注視しておかねばならない事態だと思っています。読者各位のお手元に関連する情報があれば、ぜひ私までお寄せください。

今回は1.のみ検証済み。2以下は未検証(情報のみ)。暴動レベル基準は文末に提示。

1.9〜10月 河南省済源市柿檳村 鉛公害抗議行動。  暴動レベル0。

@マスコミ情報 

・済源市には鉛精錬工場が多数集中しており、住民が鉛公害を恐れて抗議行動を続けてきた。市当局も遅まきながらその対策に乗り出し、工場周辺の1km以内に住んでいる14歳以下の児童約3000人の血液検査をしたところ、1008名が汚染されていることが判明した。市当局はただちに工場の操業を一時停止させ公害対策を施行させると同時に、汚染地域の児童全員を安全地域に転校させ、次に住民を安全な地域に移住させることを決定。

A実情 

・済源市にはアジア最大といわれている河南豫光金鉛公司を筆頭に、万洋集団、金利鉛業などの大型鉛精錬工場が市の西北部に集中しており、さらにその周辺一帯に32の中小鉛関連工場がある。その上、近くの山中にまだ多くの無認可の鉛関連工場が存在しているという。済源市西北部一帯は空気がどんより濁っており、50mほど先が見えないくらいであった。土壌汚染もかなり進んでおり、周辺では住むことができない状態だという。水質汚染もひどく周辺の小川が数10km先で黄河に流れ込んでおり、中国を代表する大河の汚染が心配されている。

    
       河南豫光金鉛公司              どんより曇る工場周辺                零細鉛工場

・上述の地域以外でも、約200人の児童の血液検査を行 ったところ、12名の汚染が判明した。市当局は鉛精錬工場周辺の柿檳村など6村の全村移住を決定。すでに移住先を確保ずみだという。14歳以下の児童の移住先の家賃や子供の治療に伴う看護費や栄養費などの補助を開始。

・11月14日時点では、すでに全工場が操業を再開しており、どの工場でも煙突からはグレーの煙が立ち上っており、資材の搬入門周辺には大量のトラックが並んでいた。どの程度の公害防止措置が取られたかはさだかではない。

・柿檳村の小学校はすでに廃校となっており、児童の姿は見られなかった。

 
      小学校廃校跡

・済源市西北部の村にはどこも立派な家が立ち並び、寒村という感じではなかった。おそらく鉛精錬工場の関係で村も恩恵を受け続けてきたのではないだろうか。しかしながらそれが鉛被害との交換条件では、村人も納得しなかったのではないか。9月から10月にかけて豫光金鉛公司の3つの門に数百名の村民が抗議に集まったという。11月に入って抗議は収束しているという。


2.10/11 浙江省温州市永嘉県 工場内で遊んでいた男児死亡、民工1000人余が抗議。
                                                     暴動レベル1。

・10/11、温州市永嘉県にあるボタン製造工場の倉庫で、忍び込んで遊んでいた3人の男児のうち1人(6歳)が、積んであった袋の下敷きになって死亡。

・10/12午前、死亡した子どもの両親は江西省から出稼ぎに来ていた民工で、同郷の民工数十人といっしょになって工場に抗議。抗議の人数は次第に100名以上になり、地元政府前に集まり、政府のビルに石を投げつけ、車や門を壊した。野次馬も数千人集まり騒ぎに便乗した模様。

・警察の出動で20人余が逮捕された。


3.10/12 山西省呂梁市臨県白家茆村 村の炭鉱で村民が暴力団に襲われ死亡。  暴動レベル2 

・村民の共有財産であった白家茆村の炭鉱が、村民の同意を得ずに、村当局の手で売却されてしまったので、村民はそれに抗議して半年前から炭鉱前で座り込み監視中であった。

・10/09、村民が集団で、太原市の裁判所に押しかけ問題の解決を求めたが、解散させられた。その後、村民の代表である村長が公安局に連行された。

・10/12、村長救出の相談をしていた村民を、暴力団200人ほどが手に棍棒などを持って襲いかかり、4人の村民が殺され、約100人が負傷。

※11/16、呂梁市中陽県で山崩れが発生。幼児を含む23人が生き埋めとなり全員死亡。地元政府は記録的な雪と雨による被害と発表しているが、村民は中小炭鉱の乱掘による地中の空洞化が原因だと主張している。 


4.10/26 北京市西城区月壇南橋付近 元国有銀行職員1000人の抗議デモ。    暴動レベル0。

・10/26午前9時、北京市西城区月壇南橋付近の「金融街国際会議センター」前で、国有4大銀行を解雇された元従業員約1000人が、不法な解雇に反対して抗議デモ。

・北京市公安警察が抗議者の一部を逮捕。6台の警察車両で強制連行。


5.10/29 甘粛省蘭州市 学生約1000人がデモ行進。  暴動レベル0。

・10/29、蘭州市の甘粛建築職業技術学院の大学生約1000人が、高額な学費や劣悪な生活条件に抗議して市内をデモ行進。省政府に押しかけたが、1000人以上の武装警察が出動し阻止。学生10人ほどが負傷。


6.10/30 雲南省昆明市 三輪車の車夫の死亡に、民衆数百人抗議。  暴動レベル1。

・10/27、雲南省昆明市で人力三輪車の車夫の潘懐用さんが、2〜3人の城管(都市管理人、路上販売などを取り締まる職務)に囲まれ、三輪車を没収された(理由は不明)。

・10/28、潘さんが居民委員会に三輪車を取り戻しに行ったところ、罰金を要求された。潘さんが罰金を払わず三輪車を持ち出そうとすると、複数の城管が殴る蹴るの暴行。

・10/29、潘さんは病院で死亡。

・10/30、潘さんの家族が居民委員会の前で抗議。その後、民衆数百人が集まり、門や駆けつけた警察のバイクを壊した。


7.10月中旬 退役軍人、各地で抗議行動。  暴動レベル0。

・10/26朝、退役軍人数百人が北京の解放軍総政治部前に集まり、待遇改善と前日に直訴で逮捕された甘粛省の退役軍人の釈放を要求して抗議。午後、大量の警察が投入され、請願者を排除。その際、10数人が負傷。

・今年始めから、退役軍人の待遇改善の抗議行動が全国で行われている。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動