小島正憲の凝視中国

最近の中国の奇病など


最近の中国の奇病など
11.SEP.10
 私は9/09〜11まで、河南省の鄭州市に、富士康集団の新設工場の調査に行く予定だった。

 しかし8日の晩遅く、わが社の中国人スタッフから、「明日からの鄭州出張は、中止にして欲しい」という緊急電話が入った。理由を問いただしてみると、「最近、河南省で小さな虫に噛まれて死ぬ人が続出している。危険だから絶対に行かないでください」という。そのとき私は、「河南省といっても広いから大丈夫だろう」と思ったが、その中国人スタッフが強硬に主張するので、翌日からの出張を中止にした。

 最近、中国では原因不明の奇病が続出している。中国は広大な国であり、つい最近まで「野人の発見」に懸賞金がかかっていたほどの国でもある。少々の奇病が発生しても、驚くほどのことはないかもしれない。しかしSARSのときのように、その奇病が瞬く間に中国全土を恐怖に陥れることもある。警戒するに越したことはないのかもしれない。

 というわけで今回は、最近、中国で報じられている奇病や伝染病、公害などについてレポートする。


1.9/08:河南省衛生庁報道、ダニに刺されて死亡。3年間で18人。

・河南省南部の信陽市商城県の近辺で、2007年5月から今月までに、ダニに刺されて、全身の倦怠感、頭痛、吐き気と筋肉痛、食欲不振、下痢、高熱などを発症する例が557件に及び、うち18人が死亡した。患者は40〜70歳代に多く、5〜8月に発病が集中しており、刺されてから約1〜2週間後に発病する。

・現在、この病気は、ダニに噛まれたことによる、血小板の減少、多臓器不全などに陥る症候群として、「発熱を伴う血小板減少総合症」と暫定的に名付けられ、専門家や関係機関が原因究明と予防などの対策に当たっている。

2.8月中旬、南京市で、ザリガニを食べて筋肉が溶解する奇病発生。

・南京市周辺では、ザリガニ料理が名物となっているが、最近、同市でザリガニを食べて、筋肉の痛みなどを訴える人が相次ぎ、とうとう23人にも及んだ。この病気は筋肉が溶ける「横紋筋融解症」と診断されている。患者は筋肉痛の脱力感、疼痛や麻痺、筋力減退、赤褐色尿などの症状に見舞われるが、死に至ることは少ない。現地では、ザリガニを洗浄する際に使用された蓚酸が残留しており、それが原因ではないかと疑われている。蓚酸で洗うと、ザリガニが鮮やかな赤色になるため、従来からレストランでは使用していたという。ただし確証はつかめていない。

・9/07、中国疾病予防制御中心と江蘇省南京市食品安全委員会は、この病気を「患者は淡水魚介類を食べHAFF病を発症した」との調査報告を発表した。ただし原因は不明。

3.8/30、雲南省関遠市で、原因不明の死。家畜なども原因不明の死。
  近辺は「恐怖の死亡区」と呼ばれる。

・8/30、雲南省紅河哈尼族彝族自治州の開遠市小龍潭鎮で、羊の放牧をしていた男性が死亡した。その男性に目立った外傷はなく、しかも盗賊に襲われたような気配もなかった。この近辺では、羊などの家畜などの原因不明の死亡が相次いでおり、地元の住民はこの地区を「恐怖の死亡区」と呼んでいる。

・近くの炭鉱からの有毒ガスが原因ではないかと取沙汰されているが、原因不明。

4.8/16〜30、安徽省亳州市蒙城県で、コレラ患者33人発生。

・コレラ患者はすでにほとんどが全快したが、県衛生庁は「不潔な食品が原因」として、県内のすべての飲食店に対して、冷たい前菜類を提供することを禁止した。また「食べ物は十分に加熱する、水は沸騰させてから飲む、手洗いを励行する」などの指導を強化している。

5.赤ちゃんの胸が膨らむ。

・前々回のレポートでも書いておいたが、いまだに各地で、乳幼児の胸が膨らむなどの早熟問題が発生している。原因は不明。

6.メラミン入りミルク再流通。

・2008年度に、三鹿集団が製造じた粉ミルクに、メラミンが添加されており、それを飲んだ乳幼児が腎臓結石などになる事件が頻発した。そのとき中国当局はそのメラミン入りミルクの全量回収と廃棄を指示したが、それが徹底されておらず、その粉ミルクが全国各地で再流通していることがわかり、中国当局は8月20日までに、230トンを押収した。

・問題の粉ミルクは、他のミルクと混ぜ合わされたり、乳製品の製造に使用されていた。

7.カビ米が銘柄米に変身して流通。

・広東省東莞市樟木頭地区の米加工工場では、カビの生えた古米の表面を削り、新米と配合して国産や輸入物の銘柄米として販売している。売れ行きはたいへん好調で、加工待ちのカビ米がまだ100トンもある状態だという。この加工工場の責任者の話しによれば、全国各地にこのような加工工場があり、このような加工は業界で常識的なことで、いずれの加工工場も盛況であるという。

8.食用油に基準の6倍の発ガン性物質。こっそり自主回収。

・湖南省にある食用ツバキ油製造、中国最大手の金浩茶油有限公司は、今年3月下旬に自社製品から基準値の6倍の発ガン性物質が検出されたので、自主回収していると発表した。

・問題のツバキ油には発ガン性物質が含まれていると、ネット上で告発されていたが、8月21日の時点でも、湖南省品質監察局と金浩社はそれを否定していた。

・しかし品質監察局の職員が匿名で、「3月に危険物質が検出されていたにもかかわらず、同局上層部が社会不安を避けるため情報を公開しないと決定した」と内部告発したため、金浩社も事態を公表せざるを得なくなったという。

9.浙江省余桃市のゴミ捨て場の海水汚染深刻。

・余桃市臨山鎮の海辺に不法ゴミ捨て場があり、海水を汚染している。風が吹くと悪臭が漂う。このゴミ捨て場は20年間に渡って使われており、政府はお手上げ状態である。

・臨山鎮政府関係者によると、鎮の中の10村のゴミはすべて鎮環境衛生部門が収集し、ここに運んでくるという。このゴミ捨て場は市の認定を受けてはいるが、最終的な承認は受けていない。

・鎮には他にもゴミ捨て場があるが、街から遠く離れており運送費がかかること、このゴミ捨て場に捨てることが20年以上の習慣になっていること、これに代わるよい処理方法がないということ、などの理由により不法投棄が続行している。

・臨山鎮環境衛生部はゴミをここまで運び、ゴミを消毒し、泥土と砕石で覆い、ごまかし続けてきた。

10.新型耐性菌が一気に蔓延する可能性。

・中国の専門家は、日本や欧州で問題化している抗生物質が効かない新耐性菌(NDM1)が、中国に入ってきた場合、きわめて容易に広まる恐れがあると指摘している。中国の一般大衆がきわめて安易に抗生物質を使ってきたし、病院もそれを容認してきたからだという。また農業や漁業でも、抗生物質が大量に使われているからだとも指摘している。

・同時に専門家は、中国人の抗生物質の使用量は、米国人の10倍であり、明らかに乱用であると指摘している。

・中国では現在すでに、抗生物質に耐性を持つ「スーパー病原菌」が急増している。これは一般大衆が抗生物質を「万能薬」と思い込み、多用している結果だという。