小島正憲の凝視中国

上海モーターショーあれこれ


上海モーターショーあれこれ
 07.MAY.09
                            

 4/22〜28まで、モーターショーが上海浦東新区の上海新国際博覧中心で開催された。


 初日の来場者は6万8千人、25日の土曜日は13万6千人、26日の日曜日は12万1千人を超え、通算では60万人に達し、過去最高を記録した。私は中国での車の売れ行きが今後の世界経済を左右することになると思い、それを見定めるためにこの会場に足を運んだ。


 とは言うものの、車にはまったくの素人なので、京大の塩地洋教授の後ろにくっついて歩きいろいろと教えていただいたというのが本当のところである。


 とにかく会場は大変な人混みで先生にはぐれないように付いていくのがやっとだった。いずれにせよモーターショーは運にも恵まれて大盛況で終わった。もし開催が2週間遅れていたら、豚インフルエンザの影響で開催は中止になっていたかもしれないし、もし開催されていても人出はかなり減っただろうと思うからである。きっと中国の経済発展を神様も応援しているのだろう。


 今回の上海モーターショー(正式名:第13回上海国際汽車工業博覧会)では、展示面積が一昨年より20%増の約17万平米となり、世界各国から約1400社の参加があり、計918台が展示された。


 展示の内訳は、輸入車が316台、国産車が602台であり、中でもトヨタは4500平米を確保し約50台を並べ、中国の同様の展示会と比較して過去最大規模となったという。

 

 ダイハツを除くその他の日本メーカーもそれぞれ力の入った展示をしていた。

 

 破産もうわさされている米のビッグ3も、ここでは積極的な展開を見せていた。なお欧米メーカーでは仏のルノー、伊のフィアットが経営不振で出展を断念していた。


 中国の3月の自動車販売は過去最高の111万台にせまっており、このままの調子でいくと通年では米国を抜き、世界トップになる可能性が出てきた。欧米や日本の自動車需要が冷え込む中、中国が世界最大の自動車市場として存在感を急速に高めている。そのような中での上海モーターショーだけに、各自動車メーカーもこれに全力で取り組んでいた。


 まず私たちは奇端公司のQQの新車を見に行った。なぜなら中国政府の新政策の結果、この小型車が大量に売れ始めているというので、ぜひ見てみたかったからである。この車は3〜5万元で販売されており、セカンドカーとしても買いやすい値段となっている。


 この中国政府の新政策とは以下のようなものである。まず消費刺激策の一環として、1600cc以下の自動車の取得税を5%に半減させたことである。その減税効果で3月はこのクラスの販売が激増した。次に3月からは農村でのオート三輪などから小型車への買い替えに補助金を出す「汽車下郷(農村に自動車を)」制度を開始したことである。したがって今後も低価格の小型車の販売が増加するとみられている。

                         ≪奇端の新QQ≫


 余談ながら、翌日私がマンションのベランダから、なにげなく駐車場を見ているとそこに薄緑色のQQが入ってきた。中からは4階の住人の奥さんが出てきた。たしかご主人はGMの黒のビュイックに乗っていたから、あれは奥さん専用のセカンドカーに違いないと思った。しかし奥さんもご主人とは違う会社の総経理で、かなり高収入であると聞いていたので、きっとそのうち別の高級車に乗り換えるのだろうと思い直した。同時に中国では共稼ぎが一般的で男女の給与差がないので、日本や欧米よりも車が売れるようになるのではないかと考えた。


 次にBYDのコーナーに行った。中国自主ブランドメーカーの比亜迪(BYD)汽車の車は、現在、中国でもっとも売れており、3月の販売台数は3万3千台に及び、昨年同月対比231%となり、中国自主ブランドメーカーの中でトップとなった。

 BYDの王伝福総裁は、今年の販売台数目標を40万台とし、民族系大手の奇端を抜きトップを狙うと豪語している。たしかにコーナーには人が多かった。そのBYDも昨年末に家庭用電源で充電可能なプラグイン型ハイブリッド車を発売したが、まだ1台も売れていないという。たしかにBYDのHV車コーナーには人が少なく、人気がないようだった。


 トヨタのコーナーに行ってみた。広い場所を確保しゆったりと展示しているように見えたが、それまで民族系の派手な展示を見慣れてきたので、かなりおとなしく感じた。数日前に、トヨタの合弁会社=広州豊田汽車生産のカムリのブレーキが不具合で、26万台のリコールが発表されており、その影響かとも思った。またトヨタのコーナーにはモデルがいなかったので、カメラを構えシャッターを切る中国人が少なかった。 

 

 ≪トヨタの展示コーナー≫

 それでもHV車には多くの人が関心を寄せており、説明係の女性が一生懸命応対していた。またレクサスの展示場は対面にあり、一段と立派だった。

その後、ホンダ、マツダ、ニッサン、スズキなどのコーナーを回ったが、概して日本車の展示はおとなしい感じがした。


 ついでフェラーリの展示場に行こうと思ったが、人混みで近づけづ断念した。

 

   ≪フェラーリ前の大混雑≫

民族系の自動車メーカーはモデルをたくさん登用して派手な演出をしていた。それらは車に魅力がない分をモデルでカバーしようというような感じを受けるほどだった。それでも中国人の観客はカメラを持って、一生懸命にモデルを映すので、

きれいなモデルの前には人の山ができており、肝心の車はまったく見ることができなかった。


 なお中国政府は国内の自動車メーカーを現在の15社から10社以内に絞り込む計画を年内に発表するという。次のモーターショーでは、これらの民族系メーカーがかなり減っているだろう。


 最後に日系や台湾、韓国の部品メーカーのところへ行った。

 中国の国産部品メーカーのところは人がちらほらいるだけだった。なお、事前の情報では中国の自動車部品サプライヤーの4割が資金難にあえいでいるということだった。

     

   ≪ダイムラーの小型車≫    ≪フォードの展示コーナー≫    ≪部品メーカーの展示場≫