小島正憲の凝視中国

上海万博雑報 : その1  


上海万博雑報 : その1  
21.SEP.10
 上海を起点として行動していながら、お膝元の上海万博にはなかなか行くチャンスがなかった。
 先々週、殺人ダニ騒動のおかげで、急にスケジュールが空いたので、やっと万博会場に足を運ぶことができた。

1.アメリカ館のスポンサーにアムウェイ(安利)。

 1年ほど前、マスコミではアメリカ館の資金が半分ほどしか集まっておらず、建設が遅れているという報道がかまびすしかった。もし万博開催日までにアメリカ館の建設が間に合わなかった場合、それが大きな汚点になるのではないかと心配されていたのである。しかしその後、なぜかその話題はマスコミをにぎわすことがなくなった。私はいったいだれがスポンサーになったのだろうかと、不思議に思っていた。

 今年に入り、地下鉄や虹橋空港などが整備され、上海市全体が万博ムードに一色に染まってきた。私は新設の虹橋空港のオープン日に、新たにそこに乗り入れることになった地下鉄2号線に乗って行ってみた。大きなトラブルもなく、虹橋空港に着き、豪壮な新設空港に見とれていた私は、その空港の入り口でおもしろい広告に出会った。その広告にはデカデカと「上海万博アメリカ館のスポンサー:アムウェイ(安利)」と書いてあった。

                   
                     虹橋空港の安利の宣伝広告                           万博アメリカ館スポンサー掲示前で

 万博会場に入って、まず私はアメリカ館に行き、それを確かめてみたかった。ちょうど小雨が降っており、夕方でもあったため、万博会場に入るのには待たされずに入ることができた。それでもアメリカ館の前にはかなりの人数が並んでおり、入館するまでに30分かかった。やっとのことで、入館してみると、最初の部屋の壁にずらりとスポンサーの名前が掲示されていた。その中央付近にアムウェイ(安利)があった。それは簡単にみつけることができた。

 米国生まれのアムウェイは中国最大の企業であり、最高の利益をあげている集団である。したがってアムウェイがアメリカ館のスポンサーになっても、中国ではだれも不思議には思わない。しかしながら日本でのアムウェイの活動を見聞してきた私にとっては、アムウェイが大手を振って、社会の前面に出て来て、堂々と万博の米国館スポンサーに名を連ねることには、いささか疑問を感じる。もちろんアメリカ館のスポンサーは、50社余であり、アムウェイはその中の1社に過ぎないと見ることができる。それでもアムウェイのような業態の企業からも、支援を受けなければアメリカ館が開催できなかったということは厳然たる事実である。

 アムウェイに惹かれてアメリカ館に入った私は、そこで皮肉にも新たな発見をした。その意味ではアムウェイに感謝している。なぜならアメリカ館には展示物がまったくなく、順次3部屋を回りビデオを鑑賞するようになっているだけで、いわばもぬけの殻であったからである。長時間並んでアメリカ館に入った多くの中国人は、出口付近で、なにかまだ特別の展示物があるかと思い、そのあたりをうろうろ見回していた。しかしそのまま外へ押し出され、ブツブツ言いながら詐欺同然のアメリカ館を後にし、次の館に向かう人が多かった。大阪万博でアメリカ館が話題の「月の石」を展示したことを思うと、それは雲泥の差であった。私はこのアメリカ館を見て、「中国はアメリカになめられた」と思った。またこのアメリカ館が上海万博や現在の中国を象徴しているのではないかとも思った。なぜなら建物の外観は立派だが、中身がさっぱり伴っていなかったからである。もちろん上海万博のすべてのパビリオンを回ったわけではないので、そのように結論付けてしまうわけにはいかないが、おそらく私の推測は大きく外れてはいないだろう。10月末まで、まだ期間は残っているのでその仮説を検証するために、再度、万博会場を訪ね、「上海万博雑報:その2」をお届けしたいと思っている。

2.上海万博の入場者数、5千万人の大台突破。

 9月11日、上海万博開催側は、開幕から133日目で、来場者数が5千万人を突破したと発表した。開催側は、「このままで推移すれば、当初の予定の7千万人をクリアーし、8千万人に届きそうな勢いである」と強気な発言をしている。

 たしかに来場者数という量的側面だけから見れば、上海万博は大成功で終わりそうである。しかし来場者の満足度を含めて質的側面から見た場合、果たして及第点がつけられるかどうかは疑問である。過去の万博が、その開催国や開催地の人民に与えてきたインパクトと、比較検討してみる必要もある。

.「瀬戸&上海ジョイントコンサート」の「第九をうたう会」大成功。    

 以下は中小企業家上海倶楽部同友会事務局員の報告である。少し古い話になるが、掲載する。


 上海万博開催中の5月29日に、“第九”のきずなを愛知から上海へとの願望で、愛知万博の共演から5年を経て、瀬戸市の瀬戸第九合唱団と上海交響楽団による「瀬戸&上海ジョイントコンサート」が、上海東方芸術センターで開催されました。今回ステージに上られたのは瀬戸の合唱団及び全国第九をうたう会連合会の有志者二百四十人、それに上海市内の合唱団約五十人が加わり、総勢約三百人でした。

私は芸術センターへ聞きに行きましたが、客席はほぼ満員で、彼らの熱唱はすっかり聴衆を魅了した様子でした。

 【瀬戸第九をうたう会】会長を務めていらっしゃる加藤洪太郎様は、我が中小企業家同友会上海倶楽部会員です。2005年7月愛知万博の会場があった瀬戸市で、第一回ジョイントコンサートを開催されましたが、日中友好を深めようとの願いを込め、上海でも共演することとなり、2008年から準備を進めてきました。同年8月上海交響楽団との間で契約書の調印が行なわれました。

 中小企業家同友会上海倶楽部事務局は準備段階からご相談を受け、いろいろなアイディアを出し合って、積極的に協力をして参りました。今回の成功を心から喜んでおります。加藤様は、次のミラノ万博でも、引き続き「第九をうたう会」を開催しようと企画されています。私たちも全力で支援をさせていただこうと思っています。やがて全世界が「第九をうたう会」で手をつなぐことになれば、本当に素晴らしいと思います。

 会員の加藤様から下記のような暖かいお言葉を頂きました。
 5/29上海東方芸術センターでの公演に、多大のご支援をくださり、ありがとうございました。
 おかげさまで何とか、所期の目的を達成することができました。
 成るか成らぬか、心細い心境の時に、お仲間のご支援がどんなに心強いものか、あらためて実感しました。

4.上海万博レポート。  

 以下は中小企業家同友会事務局員のレポートである。6月のものであるが、現在と比較して読んでいただくと、それなりにおもしろいと思う。私も閉幕までには、ここで推奨されている館などに行って、中国人に混じって買い物を楽しんでみたいと思う。


<万博の入園状況>

6月13日の上海万博の入場者数は41万7300人で、5月1日の開幕から44日間の累計入場者数が1356万人となり1300万人を超えた。万博ネットサイト6月13日午前中のデータによれば40数日間で全国万博接待指定旅行社の団体ツアー客11万9587組、451万3303人が入園し、上海市旅行社のツアー客が6割以上を占めるという。

5月15日から、団体ツアー客の毎日の入園数は12万人から18万人、最も多い時で18万5200人であった。そのうち、一般団体ツアーが90%を占め、中小学生ツアーは21万3800人で7%、大学生ツアーは2万100人で、全体の0.7%を占めた。6月に入ってから、万博は夏時間になり、各パビリオンの閉館時間を夜10時半に延長することになった。このほか、6月の高校入試と大学入試が終わると夏休みに入るので、万博を訪れる学生が多くなる。特に長三角からの来園を主要な地方客源と考えた場合、節句休日などのある下旬には1日当たり60万人の来場が予想され、6月には来場規模は1200万人以上になると考えられる。

<万博の販売状況>

データにより、開園一ヶ月の5月の入園人数803万2700人であったが、一日当たり25万9100人になり、商品販売の総額は4億1300万元を実現し、一人当たり51.36元の計算となった。その内、浦東会場の販売額は3億6900万元で総額の89.4%を占め、浦西会場を大きく上る。

中国初の開催となる今回の万博は、のべ7000万人が訪れると予想され、この中には、中国のハイエンド消費者層がほとんど包括されていると言える。この巨大なビジネスチャンスをどのようにつかみ、競争力のある自国の製品をどのように売り込むかは、参加各国の共通の課題となっている。

「人民網日本語版」2010年6月10日の統計によると、現在万博会場における一日あたりの販売額はすでに1千万元を突破しているという。これには世界各国の参加企業も大喜びだ。

クロアチア館では、半円形の展示エリアが様々なネクタイに「占領」され、中国人観光客の注目を集めている。ここで展示されているネクタイは様々なタイプに分かれており、価格は200元から500元まで、様々だ。

ポーランド館では、10平方メートルほどの展示エリアにポーランド産の琥珀が所狭しと並べてある。ポーランドの琥珀アクセサリーは世界的にも有名で、同国で最も競争力のある製品の一つだ。この琥珀販売コーナーはとても人気を集めており、スタッフによると1日の販売額は約10万元に上るという。

各パビリオンを巡る中国人観光客はこのほかにもフランスの手袋、チリのワイン、アイスランドのミネラルウォーター、ベルギーのチョコレートなど様々な製品を見てまわっている。すばらしい商品と販売技術に、中国人観光客たちはつい財布の紐を緩めてしまう。

5月1日-23日にかけて、万博会場の累計販売額は2億7663万1400元に上ったという。開幕から3週間目以降は、会場の1日当たり販売額が1千万元を超えている。

<私の見た日本館>

日本館のナショナルデーの式典が6月12日、上海万博会場の万博センターで開かれた。日本の菅直人首相の特使として鳩山由紀夫前首相が出席した。

開幕から日本館はますます熱気を帯びている、待ち時間3時間〜4時間で、一日あたり約2万人の入場者がある、日本館の熱気の源はなんだろうか、私は好奇心を持って訪ねてみた。

「こころの和、わざの和」をテーマとする日本館は万博会場のAゾーンの位置にある、敷地面積は6000平米となっている。パビリオンは発電する膜に覆われ、生命体のように呼吸する、環境に優しい建築となっている。館内は過去・現在・未来の3つの展示エリアに分かれ、実物と映像で2020年の未来の都市生活を表現しているほか、日中両国の文化の根源、自然と共生する日本人の生活、活力とファッション性に満ちた日本の現代の都市、地球環境の問題に対する先進技術、自然保護に向けた市民の活動などを紹介している。

           
                   日本館の外観                      バイオリンを弾くロボット

また、地球環境問題の解決に向けた日本の先端技術が展示されている、トヨタ自動車株式会社が開発した人間型ロボットは繊細な動きでバイオリンを弾き、中国の民謡「茉莉花」を演奏するパフォーマンスを披露している。

僅か1時間の観賞だったが、とても素晴らしく、進んだ技術に感動した。

<その他> 
開幕44日目を迎えた上海万博では、人気館と不人気館がはっきり分かれている。サウジアラビア館、日本館、ドイツ館、イギリス館、中国館、イタリア館、韓国館、フランス館、スペイン館、スイス館など行列者数が多いパビリオンである。日本館は3〜4時間待ち、サウジアラビア館はなんと9時間待ちということもあった。話によれば館内の映像はとても感動的なものである。

               
                              待ち時間「9時間」の掲示

上海万博開幕してからまだ44日間しかたっていないが、史上最大規模とも言われているこの万博に、ぜひ一度足を運んでみられたら如何でしょうか。


5.尖閣沖衝突と上海万博。

 尖閣沖衝突事件を巡り、9月18日、中国各地で抗議行動が行われた。万博開催中の上海では、万博会場や上海総領事館周辺で、過激な抗議行動が起きることが心配されていたが、会場では変わった動きはなく、総領事館前でも抗議者10数人が横断幕をかかげたりしたものの、すぐに当局によって排除された。

 ただし上海総領事館の周辺は、通常よりかなり警戒が厳しかった。周辺道路は通行止めとなったし、私服を含めて、200名ほどの警察官が出動して、警戒に当たっていた。うわさでは、近くの極秘の場所に、6000人ほどの警察官が待機していたという。