暴動情報検証 : 2010年5月
暴動情報検証 : 2010年5月 |
06.JUL.10 |
5月の暴動情報検証は私の行動時間が不足したため、広東省に集中してしまった。
ただし今回の広東省の暴動はそれぞれに特徴があり、性善説に立つマスコミ情報と、性悪な人間群が織り成すど ろどろとした現場での実情との間には、かなりのギャップがあった。私はこれが中国の実態であると考えている。ぜ ひ熟読していただきたい。 なお5〜6月には中国全土で工場ストが頻発した。これについては次回、まとめて報告する予定である。 1〜4は検証済み。5〜9は未検証。 暴動レベル基準は文末に掲示。 1.5/18、広東省広州市花都区獅嶺陽光路で、仕事を求める出稼ぎ農民工と警察が衝突。
暴動レベル0。 ・マスコミ報道 : 5/18午前9時ごろ、広州市花都区獅嶺陽光路の獅嶺労務大市場の付近で、1000人以上の 仕事を探しに来ていた出稼ぎ農民工(労働者)と労務市場を管理する職員とが衝突した。原因は、最近、この労務 市場では企業が不法に労働者を採用し、トラブルが続出していることから、獅嶺政府が労務市場の管理を適切に 行うため、5/17から6/19まで新しいシステムを導入して管理を強化しようとしていた。ところが労働者がそれを 誤解し、労務市場の管理職員と口げんかとなり、殴り合いになった。すぐに路上に2000人ほどの労働者が集ま り、交通を麻痺させ、近くにあった治安警察用のバイクを壊した。100人以上の警察が出動し、午前11時ごろに事 態を鎮静化。 ・実情 : 5/18の午前9時ごろ、獅嶺陽光路の路上で、約2000人の出稼ぎ農民工と労務市場管理職員とがけ んかになり騒動に発展し、警察100人以上が出動し、10人ほどの労働者が派出所に連行された。午前11時ごろ に鎮静化。 5月18日当日 獅嶺陽光路一帯の様子 広州市花都区は皮革(バッグ)生産がきわめて盛んな街で、400万人が登録住民であるが、その他にかなりの人 数の出稼ぎ農民工がいるという。バッグ生産を行っている企業は、ほとんどがモグリ零細企業で、2万社以上がこ の地に集中している。バッグ生産工場は7万元ほどあれば起業可能であるため、工場で少し技術を覚えた出稼ぎ 農民工が、この地でどんどん起業している。花都区には巨大な「獅嶺(国際)皮革皮具城」(ここにはバッグ関係の 卸売り業者や資材関係者が数千社、入居開店している)があり、出稼ぎ農民工出身の零細工場経営者がそこか ら、毎日、バッグの生産を受注し、その市場で資材を購入し、ただちに獅嶺陽光路の路上の自由労務市場で労働 者を日給で雇って生産をし、翌日には納品をするシステムを取っている。この花都区には外資の大型工場は少な く、ほとんどが内資の零細企業であり内需製品を取り扱っているという。 労働者のほとんどが口頭での日給の日雇いで働いており、労働契約法などとは無縁で、最近、給料未払いや時間 外強制労働、労働災害などのトラブルに巻き込まれることが多くなっていた。しかも今年に入って、獅嶺陽光路の路 上の自由労務市場には、毎朝、3000人ほどの労働者が殺到するようになり、交通が麻痺し、ひったくりやスリが 横行するなど治安上にも問題が生じてきていた。今回の騒動は、地元政府がこの問題を管理するために、自由労 務市場に介入しその管理を強化しようとしたため、これに労働者が反発し起きたものである。その後は地元政府も 管理をあきらめ、放任状態となっているという。 7/03の朝10時、私はこの獅嶺陽光路の路上の自由労務市場に着いた。そこには2000人ほどの労働者が集 まっており、騒動かと思わせるような異様な光景が広がっており、いささか驚いた。労働者たちがそこかしこで、10 人から数十人の群れを作って、自動車やバイクを囲んでいた。その群れの中に割り込んで見てみると、そこでは業 者らしき者が、バッグのサンプルを見せたり、日給を書いた紙を見せて説明をしていた。私の目の前で業者と労働 者たちの間で簡単な応答があり、労働者がワゴン車に乗り込んでいった。 近くにたむろしていた労働者たちが、「今日は土曜日だから人が少ない。普通の日は道路に溢れかえるよ」と話して くれた。彼らの話によれば、普通の技術者で、日給は90元から100元が相場で、残業もかなり行うので月給に換 算すれば、手取りが3000元ほどだという。ちなみにこの広州市の一般正規労働者の手取り月給は1500元ほ ど。なおこの街の銀行や郵便局の前には大勢の若者たちが列を作っていた。現金を持っていると危険なので、給 料をもらうとほとんどの人が田舎に送金してしまうという。 ・私見 : 獅嶺陽光路の路上の自由労務市場は、雇用者と労働者の双方のニーズに合致したものである。つま り、雇用者は仕事があるときだけ、熟練労働者のみを時給で雇用することができ、社会保険やその他の経費を負 担しない。もちろんモグリ企業であるため税金などを支払わない。労働者は技術を売り物にして高い時給を手にす ることができ、毎日、現金を手にすることができる。したがってこの自由労務市場に地元政府が介入して管理しよう としても、労使双方から反対される。 広州市花都区には、零細モグリ企業が約2万社あるということであり、そこには出稼ぎ農民工が100万人ほど雇用 されているのではないかという。そのほとんどが上記のような日雇いに近い雇用形態である。つまりこれらの企業も そこに働く労働者たちも、どこにも捕捉されてはおらず、統計数値にはまったく反映されていないということになる。 はからずも今回の調査は、私の「現在の中国の超人手不足の原因が無数のモグリ企業の存在にある」という仮説 を実証するものとなった。 2.5/19、広東省東莞市万江ハ頭村の村民が、港口大道延長の土地開発反対デモ。(ハは土へんに覇)
暴動レベル0。 ・マスコミ報道 : 5/19、東莞市政府が港口大道を延長するために開発工事を始めようとしたところ、もとの持ち 主である万江ハ頭村の村民100名以上が、土地開発反対抗議行動を起こし、工事を実施しにきた重機を現場か ら追い出した。 ・実情 : 港口大道付近は東莞バス総ターミナルのすぐ側であり、東莞市の一等地である。問題の土地周辺はマ ンションが林立しており、その中心にぽっかりと未開発の土地=約50ムーが取り残されている感じである。この土 地は、1992年に農民が政府に1ムー=5万元で譲渡しており、サイン済みの契約書がしっかりと保存されている。 ただしなぜかその代金が未払いとなっていた模様。この間に、近隣の土地はうなぎ上りとなり、この土地にマンショ ンを建て売り出せば、1u=8000元ほどになり、開発商に巨額の儲けが転がり込むという。今回、村民はこのこと に納得せず、200名以上が開発阻止の行動に出た。 私は現地で、そこの畑で野菜を作っていた農民に声をかけてみた。すると彼は広東省の田舎の農民で、ここに出 稼ぎに来て農民として働いているのだという。まさにこれこそ正真正銘の出稼ぎ農民だと思い、私はびっくりした。現 在、この土地を万江ハ頭村の村民は耕作しておらず、地方からの出稼ぎ農民に1ムー=1000元で貸し出し、耕作 させている。しかもこの出稼ぎ農民たちが、すでに政府から補償金1ムー=2000元を受け取っているというから、 話がもっとややこしくなっている。 ・私見 : 万江ハ頭村の村民は、現在係争中の土地から車で数分の場所に住んでいる。そこには立派なマンショ ンがたくさん建っており、周辺においてある自家用車も外車が多く、村民が相当裕福な生活をしていることは一目瞭 然であった。そのような村民?が、今回の騒動を起こしているわけであり、銭ゲバを行っているのである。 3.5/13夜、広東省広州市海珠区瑞康大道で、市民と警察が電動自転車取り締まりで衝突。
暴動レベル1。 ・マスコミ報道 : 5/13夜、広州市海珠区瑞康大道で、地元警察が電動自転車取り締まり中に、警察官が持ち 主数人を拘束し殴打し怪我をさせたため、周辺の市民が殺到し警察官に抗議した。すぐに千人ほどの市民が現場 に集まり、警察官にペットボトルや石を投げつけ、警察車両5台をひっくり返すなどした。20数分後に、大量の武装 警察が現場に駆けつけ、事態を鎮静化させた。 ・実情 : 騒動は5/13夜8時ごろ起き、11時ごろにおさまった。一時は野次馬を含め5千人ほどが集まった。た だし石を投げたりして騒いだのは100人前後。 ・私見 : この瑞康大道は広州市最大の繊維関連市場「中大広場」に面しており、周辺には数千社繊維関連業者 が店を構えている。ここには中国全土から無数の買い付け業者が殺到している。これらの業者が各店で買い付け た品物を指定のトラックまで運ぶためには、電動自転車などが不可欠であり、この街ではそれらが大活躍してい る。また多くの出稼ぎ労働者たちも、その商売で生計を立てている。地元政府はその実情を無視して、2006年末 から電動自転車の使用やその営業を禁止した。しかもその取締り方法が一貫せず、あいまいなため、市民から不 満が多かった。一方、地元政府が身体不自由者や生活困窮者には、電動自転車の運行許可を出しているので、 それを得た当該者が健常者に電動自転車を貸し出したりしており、実際には警察の取締りが不可能に近かった。7 /03現在、瑞康大道には、多くの電動自転車が走り回っていた。 4.5/23、広東省仏山市里水草場蟹坑村で、村民と業者に雇用された男たちが土地開発をめぐり衝突。
暴動レベル1。 ・マスコミ報道 : 5/23午前6時30分ごろ、仏山市里水草場蟹坑村で村民たちと、不動産開発商に雇われた男 たちとが7時間にわたり激しい衝突をした。28台のパトカーと100名ほどの武装警察が現場に駆けつけ、事態を 収拾した。雇われた3名の男と村民9名負傷(うち3名が重傷)。村民数名が警察に拘束。この村のこの土地をめぐ る争議は、1月から12回に及んでいる。 ・実情 : 仏山市里水草場蟹坑村の騒動は、周囲を高層マンションと古い靴工場、農家、武広高速鉄道などに囲 まれた97ムーの未開発の土地を巡って起きた。マスコミ報道通り、5/23午前6時半ごろ、仏山市里水草場蟹坑 村で激しい騒動が起きた。不動産開発商が雇った男たちがバス5台で乗りつけ、この土地の前に集まっていた村 民たちを木刀などで殴打。村民たちは鍬や鍬で応戦したが、逆にそれを奪い取られ、頭などを殴られた。村民の中 には55針を縫う重傷者も出て、地元の病院では処置できず広州市内の病院に搬送されたという。なおこの治療費 は10万元で、村民の自己負担であるという。警察に拘束された村民は6/30に帰宅を許された。 この土地は、12年前に村民が一戸当たり2800元の補償金を受け取り、30年の使用権をすでに地元政府に譲渡 済みであった。そのとき別のなにかの契約があった模様だが、その当時の村長はすでに死去し、その契約書は紛 失したという。土地は未開発のまま、政府から不動産業者に売却され、さらに業者間で転売された結果、現在では 2.55億元の破格の値段に膨らんだ。最後にその土地を買い取った不動産開発業者が、この土地の開発をしよう としたところ、補償金の増額を求めて村民が開発阻止行動に出たため、1月から13回にわたる小競り合いが続 き、とうとう今度の騒動に発展した。 5.5/14、広東省東莞市謝崗区で、遺族300人がデモ。 暴動レベル0。 ・マスコミ報道 : 5/14、東莞市謝崗区のガソリンスタンドで、汕尾市から出てきた陳招さんが射殺された。警察 が自殺と断定したので、納得しない遺族ら300人が真相究明を訴えてデモを敢行。 6.5/17、広東省東莞市清渓鎮で、ゴミ焼却場建設反対の住民600人が抗議デモ。 暴動レベル0。 ・マスコミ報道 : 5/17、市政府が決めた東莞市清渓鎮羅馬村のゴミ焼却場が住民の居住地に近すぎるという ことで、羅馬村の住民100人など600人が抗議デモを敢行。 7.5/26、広東省珠海市夏湾石泉新村で、桃屋珠江食品の移転を求め抗議デモ。 暴動レベル0。 ・マスコミ情報 : 珠海市夏湾石泉新村の住民約30人が、付近にある桃屋珠江食品の排気の悪臭が耐え切れな いという理由で、会社の移転を求め横断幕を掲げてデモ。桃屋珠江食品は移転の意思を表明中。 8.5/07、北京市昌平区沙河鎮で、不動産開発商の雇った男200人が農家を襲撃。 暴動レベル0。 ・マスコミ情報 : 5/07、昌平区沙河鎮の野菜農家に、早朝4時、開発商に雇われたと思われる200人ほどの 男が突然現れ、14台のフォークリフトで、200mのフェンスと野菜温室を徹底的に破壊した。男たちは止めに入っ た農民たちを棍棒などで殴り、大怪我をさせた。警察は1時間後、すでに男たちが去ってから駆けつけた。 北京嘉溢農業開発有限公司は昌平区沙河鎮綵河新村から土地を借りた後、野菜農家にこれらの土地を貸し付け ていた。ところが政府に土地が収用されたので、綵河新村は契約を停止した。しかし一部の農家と嘉溢農業開発 有限公司との間では、賠償金でもめており、農家は引越しをしていなかった模様。 9.5/17、湖北省潜江市で電動三輪車の運転手が市政府の門を封鎖し、抗議行動。 暴動レベル0。 ・マスコミ報道 : 5/17、潜江市の電動三輪車の運転手52名が、電動三輪車を市政府の門前に並べ、封鎖し、 約束の実行を訴えた。潜江市政府は、2006年に人力や電動の三輪車の市内運行を禁止した。そのとき同市政 府は身体障害者の三輪車運転手52名には、公益性のある職位を与え、生活を十分に補償すると約束した。ところ がそれが実行されず、給料は毎月460元のみで、それぞれの職場では年金や保険の加入措置も取っていなかっ た。 ≪私の暴動評価基準≫ 暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし 暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む 暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動 暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動 |
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