小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2011年1月 


暴動情報検証 : 2011年1月 
17.FEB.11
 1月の暴動は、春節前のため賃金がらみのものが多くなると思っていたが、情報入手不足のため、下記のみ。実際にはかなりの件数があるものと思われる。しかも元請け・下請けなどのからみや企業倒産などを含めて、解決不能の複雑なものが多くなってきている。1.2.は現場検証済み。3以下は未検証、情報のみ。
※暴動評価基準は文末に掲示。

1.12/16〜、湖北省咸寧市でタクシースト続行中。  暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 昨年12/16から、咸寧市でタクシー運転手が政府の新方針に反対してストライキを続行中。12/23、運転手たちが市政府前に集まり、道路を塞ぎ抗議したため、警察が出動し、一部の運転手を拘束したが、旧正月前には釈放した模様。

       
                            12/23の市政府前の様子

従来、咸寧市では、タクシーの経営権が市政府から運転手から個人に売買されており、その価格は近年、30万元を超えるようになってきていた。市政府が省政府からの指導で、その経営権を10年後に無償返却させるという新方針を発表。それに運転手がいっせいに反発したという。2/13現在、未解決。

・実情 : 12/16から市内のタクシー456台がいっせいにストライキをしたため、市民も困り、市政府に解決を迫った模様。市政府は1月中旬、新たに市内のタクシー会社に200台のタクシー経営権を売り、それを運行させストに対抗。その結果、従来のタクシー運転手たちはこのままストを続行するかどうか様子見になったという。
2/13現在では、市内に赤い古いタクシーと、新しいグリーンのタクシーの両方が走っていた。

       
           2/13の市政府前の様子

・私見 : 1/12に、鄭州でもタクシー運転手たちが、「政府の料金メーター、監視カメラ強制設置」に反対しストを行った模様。どちらも政府が、民衆の意見を無視し、権力を濫用した結果、起きているスト騒動である。また咸寧市のスト解決方法は、市政府側の一方的なものであり、新たな火だねを作り出しかねない。

2.昨年12月末〜1/中旬、河北省遵化市政府前で、農民工200人、賃金支払いを求めて座り込み。
                                                    暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 昨年12月30日から、遵化市政府前で、出稼ぎ農民工が賃金の支払いを求めて座り込んで抗議。彼らは四川省からの農民工で、市内のマンション建設現場で働いていた。マンション開発業者は宏偉房地産開発有限公司で、建設施工業者は唐山市永興建築工程有限公司。この2社は2009年11月から、遵化市南関大橋東にマンション“宏偉帝景”を建て始め、2010年10月にはほぼ完成にいたった。ところが唐山公司は農民工200人余に賃金(総額250万元)を支払わないので、旧正月の帰省を前にして困った農民工たちは市政府への抗議に踏み切った。

      

唐山公司は宏偉公司から建設代金を半分しか受け取っていないので、農民工に賃金を支払えないと言い訳をしている。その後、四川省のマスコミなども騒ぎ始めたため市政府が介入し、旧正月前の賃金の支払いにこぎ着けた模様。

・実情 : 2/15日現在、“宏偉帝景”のマンション建設現場では、工事が中途でまったく止まっており、無人であった。マンション販売事務所で、マンションの値段や完成日時を聞いても、販売員は「わかりません」というばかりであった。しかも私がマンション建設現場の写真を撮っていたら、それを大声で制止した。市政府前に行ってみたが、そこには警察が数人並んで立っており、近寄りがたい雰囲気であった。なお、遵化市のあちこちに、建設途中のマンションが立ち並んでいた。

・私見 : ひとまず農民工への賃金支払いは解決したようであるが、私はここに中国におけるマンションの開発事業の危うい未来像を見る思いであった。おそらく開発業者は、マンションの建設が8〜9割ほど終わった時点で、それを全部売り出し、その代金で施工業者に支払いをする予定であったと考えられる。ところが実際に売り出してみると、買い手がなく、資金回収ができず、行き詰まり、施工業者に代金支払いができなくなったものであろう。遵化市は北京からバスで東へ3時間ほど走った場所であり、片田舎ではない。そこでこのような現象が起きているということは、中国のマンション・バブル崩壊も間近に迫っているのではないかと推測できる。

3.1/09、広東省広州市海珠区江南東路の嘉宏閣ビル前で、下請け業者と労働者がデモ。
                                                  暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 広州市海珠区江南東路の嘉宏閣ビル前で、同ビルの施工下請け業者である潮陽七建集団の林代表とその従業員が、開発商の広州金居地産開発有限公司に下請け代金の支払いを求めて、プラカードを掲げてデモ。

潮陽七建集団と広州金居地産開発有限公司は、1999年に施工契約を結び、2003年に基礎工事が終わったが、その時点で金居公司が下請け代金を支払わず、裁判となった。その後、潮陽七建集団が勝訴し、裁判所は金居公司に266万元の支払いを命じたが、金居公司はそれに応じていないという。

4.1/18、湖北省潜江市で、300名余の出稼ぎ労働者が市政府に抗議。 暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 1/18午前9時、潜江市で各地から出稼ぎに来ている労働者300名余が、賃金の支払いを求めて潜江市政府と章華路の道を塞いで抗議を行った。労働者たちは、南水北調の移民のために住宅を建設したが、潜江市の住宅会社から賃金の支払いがないため、それに抗議したもの。住宅会社側は、工事の元請けの親方に支払い済みのため、2重払いはしないという。労働者の抗議は小雪の降る中、夕方の7時まで続けられたという。

5.1/16、広西チワン族自治区梧州市長洲区竹湾村で、農民工が賃金の支払いを求めて市政府に抗議デモ。  暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 1/16、梧州市蒼悟龍湖金域藍湾建築現場の農民工50〜60人が、会社側に春雪前の給料や週末の残業手当の支払いの保障を求めていたが、明確な回答が得られなかったため、市政府に抗議に向かった。その途中で野次馬などが増え、1000人以上の規模となった。警官隊がこれらの民衆を解散させるため、発砲したため、5人が被弾し、少なくとも20人が負傷したという。ただしプラスティック弾あるいは催涙弾だったという説もある。

6.1/18、広東省深セン市龍崗区南湾街道の日系工場:布吉日塑工業で従業員1000名余のスト。
                                                   暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 1/18、深セン市龍崗区南湾街道の日系工場:布吉日塑工業の従業員1000名余が、待遇などの不満を理由にストに突入、工場前の道路を塞ぐ等の行動に出たため、公安警察が出動し鎮圧した。その際、若干の労働者が負傷した模様。工場側と労働者側は20日夜、和解しストは中止。

      

この日系工場では1500名ほどの労働者が働いており、昨年までは年末のボーナスが数百元ずつ支払われていたが、今年はそれがなく、忘年会もなく、通常の昼食に鶏の腿肉がついただけであったところから、労働者の怒りが爆発したものとみられている。

7.1/07,広東省広州市越秀区で、商業ビルの強制立ち退きに反対し女性経営者が焼身自殺敢行。
                                                    暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 広州市越秀区にある古い3棟の商業ビルは6年前から立ち退きが進んでいたが、去年末になっても、残り8店舗が立ち退き補償協議を拒み、居座っていた。立ち退き裁判では、居住者側が敗訴したので、1/07の強制執行となった。その日、100名を越す立ち退き執行要員、30名ほどの警察、消防、医療関係者を前に、ある立ち退き反対の女性経営者が、ガソリン缶を抱えそれに火をつけて抵抗した。警察が消火剤などを振りまいてそれを阻止し、女性を病院に運んだ。

 ≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし
暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む
暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動
暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動