小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2010年 11月


暴動情報検証 : 2010年 11月
14.DEC.10
1.〜3.は実地検証済み。4.以降は未検証、情報のみ。  暴動レベル評価基準は文末に掲示。

1.11/02 北京市平谷区馬坊鎮小屯村で、立ち退き問題を巡り、村民と工事労働者?が衝突。
                                                           暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 北京市平谷区馬坊鎮小屯村では、鎮政府がリニアモーターカー駅の建設のため、村民に立ち退きを要求。村民は補償額に不満で、立ち退きを拒否。村には10月末、1台のショベルカーが現れ、電信柱を倒したりしたので、村全体が断水・停電状態となった。11/02、再びショベルカーなどが村に入ってきたので、20人ほどの村民が集まり、断水や停電の復旧を要請に行ったところ、100人余の正体不明の男たちが現れ、村民たちを棍棒などで襲った。村民8人が男たちに殴られ負傷、入院した。鎮政府は、工事現場に抗議に来た村民たちが、ナイフなどを持っており、危険を感じた工事現場労働者20人余との間で、衝突が起きたと説明している。なお、鎮政府は工事と断水・停電は無関係であるとして、村民に関係部門と協力して早期に復旧することを約束した。村民よると、立ち退き補償金は住居部分が1u=540元、庭などが270元であるという。

・実情 : 約1か月後の12/10、小屯村を訪ねたときには、周囲はすっかり人家が取り払われていた。ショベルカーが数台、最後の家屋の取り壊しを行っていた。すでに村の後方には、立派な5棟の高層マンションが完成していて、その横ではなお数棟のマンションが建設中であり、クレーンがたくさん動いていた。

家屋の取り壊し現場で、老婆が1人、工事関係者らしい数人の男たちを相手に、なにやら大声でまくし立てていたので、それを聞きに言ってみた。老婆は取り壊し中の家の住人らしく、「補償金が少な過ぎる。あの高層マンションに住めというがまだ内装がしてない。電気代や暖房費が高い」などと訴えていたが、男たちは適当に聞き流し散って行った。老婆によれば、補償金は1u=2000元で、11/02には、警察もたくさん来て、村民を蹴散らしたという。また後方の高層マンションには村民300人のうち、すでに30人ほどが入居しているという。老婆からはその高層マンションが、鎮政府から村民に無償または格安で提供されたかどうかは確認できなかった。

2.11/02 雲南省昭通市で、道路工事に伴う土地収用の補償に不満の住民と警察が衝突。
                                                      暴動レベル2。

・マスコミ情報 : 11/02、昭通市昭陽区で高速道路建設のため強制収容された土地の補償金に不満の住民約200人が、鳳凰山下の道路に棺桶などを並べ封鎖し、警察の車や通りかかった車など48台を破壊し、燃やした。地元の警察1000人ほどが出動し鎮圧。警官14人を含む23人が負傷した。政府からの補償金が1ムー=13.2万元と公表されたにもかかわらず、住民の手には9万元しか渡っておらず、住民はこのことに強く抗議していたという。

・実情 : 昭通市は500万人を越す大都市であり、同時に多くの少数民族が混在して暮らしている地域である。主要産業は炭鉱、およびタバコ産業である。市内には求人広告が他都市よりも目立ち、経済活動が活発であることを伺わせていた。

回騒いだのは、漢族の住民で、市内に貼り巡らされていたこの騒動の指名手配者は、全員漢族であった。周辺には回族も多く住んでおり、その地域で聞き込んだところ、回族の土地を収用するに当たっては、1ムー=100万元ほどが支払われているといい、少数民族優遇政策が適用されていると聞いたが、確実なウラは取れなかった。とにかくここでも、工事中の周辺には多額の補償金目当てのにわか造りの住居が目立った。

・私見 : 少数民族と漢族が混在している地域では、逆差別が起きている可能性もあることを示した騒動だと思う。

3.11/18 雲南省紅河州瀘西県で、炭鉱主間の資源争い。9人死亡、48人負傷。 暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 11/18、紅河州瀘西県の小松地炭鉱で、隣り合わせた炭鉱主が境界を巡って衝突。お互いに銃や爆薬を使って戦ったため、9人が死亡、48人が負傷。

・実情 : この炭鉱では、地元政府から業者に採掘権が払い下げられており、それが次々と転売され、関係者が複雑に入り組んでいた。10月始めに、鄭春雲が新たに採掘権を購入したところ、この炭鉱の下を隣の王建福が掘り進んでいることが判明。鄭が抗議したが王は聞きつけなかったので、11/18午前、鄭が80人余の手下を連れ、銃などを持ち王の炭鉱倉庫に殴り込んだところ、突然、仕掛けられていた爆薬が炸裂。その後銃撃戦となり、鄭の側に9人の犠牲者と48人の負傷者が出て、病院に担ぎ込まれた。現在、鄭と王を含む21人が警察に拘束中。

・私見 : 中国の炭鉱問題は、政府の方針が一貫せず、採掘権をめぐる紛争が絶えない。また弱小零細炭鉱では爆発や落盤事故などが頻発している。政府は弱小零細炭鉱の閉鎖および整理統合の方針を打ち出しているが、末端では遅々として進んでいないのが実情である。なお、瀘西県の街中には、「銃や爆発物の携行禁止」の掲示が多く見られ、治安が悪いことを物語っていた。

4.11/03 安徽省池州市梅龍鎮で、立ち退き保障金に不満の村民が武装警察と衝突。 暴動レベル2。

・マスコミ報道 : 11/03正午ごろ、安徽省池州市梅龍鎮で、農地の強制収容をめぐり、立ち退き補償金に不満の村民約1000人が、200人以上の公安警察を伴って村に入ってきた方西屏市長を取り囲んで、市長を殴ったり、乗用車をひっくり返すなどして激しい抗議を行った。市長はただちに電話で武装警察を出動させ、その場から脱出した。村民に30人余のけが人が出た。村民によれば、強制収容範囲は5村、2千世帯に及び、補償金額は政府標準の1/3であるという。

5.11/15、湖南省チン州市で、バイク運転手が大規模な抗議。 暴動レベル1。

・マスコミ報道 : チン州市政府は11/13、交通安全のために市内の一部の区域で、バイクや電気自転車の走行を禁止する条例を施行しはじめた。バイクや電気自転車で、客を運んだり飲料水などを運搬して生計を立てていた人たちが、15日、市政府前などに集合して、この条例の撤廃を訴えた。交通警察が殴られたり、パトカー数台がひっくり返されたりしたので、多数の警官や武装警察が出動した。一時は野次馬5000人ほどが集まったため、現場一帯の交通が麻痺した。

6.11/16 湖北省武漢市黄陂区後湖村で、立ち退き抗議の男性が車で警備隊に突入。 暴動レベル1。

・11/16、武漢市黄陂区後湖村で、現地当局が大規模な家屋取り壊しの強制実施のため、3000人ほどの警備隊を現地に派遣していたところ、住民の1人が怒り狂って車で警備隊員の隊列に突入した。当局の発表では工事関係者12人が負傷、当の本人は病院へかつぎ込まれたという。住民の話では、車から引きずり下ろされ、殴打され、病院に運ばれたが死亡したという。現地では、約1000世帯が3〜4年前に政府の許可を得てその土地を購入し、家屋を建てたが、今回、市から突然の強制取り壊し命令が出たという。

7.11/24 湖北省潜江市広華街道で、数千人のウン県からの移民が抗議、武装警察と衝突。
                                                       暴動レベル2。

・11/24、南水北調のため、移転をさせられたウン県からの移民数千人が、移転先の住居の不備や補償金の不足を訴えて、潜江市広華街道を塞ぎ、政府に抗議した。25日、抗議者と警察が衝突し、数台のパトカーが川に突き落とされたりした。26日、5000人の武装警察が出動し、事態を鎮めた。移民30人ほどが拘束された。一時は現場周辺に、野次馬を含め4〜5万人が集結したという。

8.11/26 広東省仏山市陳村鎮仙湧郷で、土地をめぐり、村民と警察が衝突。 暴動レベル2。

・11/26、仏山市陳村鎮仙湧郷で、村民が地元政府と不動産開発商の手に渡った文登路一帯の土地の、権利奪回を訴えて抗議をしていたところ、正体不明の男たちが手に刀や棍棒を持って襲撃。村民1人が死亡、数十人が負傷した。数千人の警察が出動した。

9.11/12 広東省深セン市の日中合弁会社で大規模スト、警察が鎮圧。 暴動レベル0。

・11/09から、深セン市の深セン三洋華強激光有限公司で、会社側が受注の減少を理由に、大浪工場を梅林工場に合併することを決めたところ、大浪工場の労働者約1000人が工場移転に伴う補償や退職金問題巡ってストライキを行った。労働者たちが工場から出て道路を塞いだりしたので、12日午後、市政府は広州市で開催中のアジア大会に影響が及ぶのを恐れて、解決のため警察を投入。首謀者数人を逮捕し鎮圧。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動



中国の天災・人災など :2010年10〜11月
03.DEC.10
1.10/24、大連新港で石油パイプラインが再び炎上。

・今年7月に大規模な爆発事故が起きた大連新港で、10/24午後4時ごろ、再び石油パイプラインが炎上した。今回は、前回爆発が起きたタンクを解体作業中に、火花が飛び、タンク内の残油に引火したもの。原油の流出などはなく、25日の午前1時ごろには鎮火。爆発が起きたタンクの周辺には、有毒化学品のタンクも多数あり、一時は有毒ガスが広範囲に拡散すると危険視されていた。

私見 : 大連新港近辺は立ち入り禁止となっており、撮影できなかった。なお7月に 起きた爆発の結果の原油の流出は、かなり離れた大連の海水浴場も汚染されており、3か月後でも、除去作業は終わっていなかった。現在の中国には、このような事故に敏速に対応する手法が確立されていない。ここにも中国経済大躍進の負の部分を見ることができる。

2.11/15、上海市静安区コウ州路教師公寓で、火災発生。50人以上が焼死。

・火災の起きたマンションは市の中心部にある。出火原因は、外壁改装中の溶接工の火花が引火物に燃え移った模様。施工業者は孫請けであり、そこに雇われていた溶接工は無資格であり、火災後、数人が逮捕された。出火当時は300人以上がマンション内にいたのではないかと言われているが、救出されたのは100人余であり、死者数が100人を越す可能性があると言われている。消防車が現場に到着したのは、通報後、1時間以上経っており、その遅れが致命的であったようだ。なお、高層マンションのため、消防車の消火能力が不足していた。90m以上の高さの消火ができる消防車は2台しかなかったということである。

韓正上海市長は事故後、全工事現場の一斉総点検を行うように指示し、今回の事故の教訓を生かす取り組みを継続するために11月15日を「都市公共安全日」に設定した。

・私見 : 現在、全中国にマンション建設やインフラ整備事業のブームが起こっている。そこには危険作業などに大量の無資格の労働者が従事している。これらの建設現場では事故が多発しているし、完工後にも多くの問題が起きることは必定である。建設資材も問題がある物が多く、今回の火災で多くの死者が出たのは、有毒ガスが発生する無許可の資材が使われていたからではないかと言われている。また高層マンションの乱立に、消防車などの消火活動体制がまったく追いついていない。なお、上海市の行政幹部は、この火災が万博開催中ではなかったので、胸を撫でおろしているという。

3.わずか数か月でため池と農地が数千トンのゴミで埋め尽くされる−広東省東莞市中堂鎮呉家湧村。

・今年4月からこの村のため池や農地、バナナ園などが、周辺の製紙工場から運び込まれた数千トンのゴミで覆われてしまった。現場には隣の製紙工場からゴミがトラックで運び込まれており、塗料、包装紙、ガラス、石などの工業ごみが主である。なお、この周辺には広西省や湖南省から廃品回収業者が来ており、ゴミから金属などを抜き出している。地元農民は政府と製紙業者に、現状の復元を求めている。

4.廃棄化学工場の貯蔵タンクから強酸廃液漏れ−9/17午後3時、浙江省金華市。

・市内の廃棄化学工場の貯蔵タンクから強酸廃液漏れの事故発生。一時は周辺の地域に有毒ガスが漂い、街が赤く染まった。当該工場は4年前に他所に移転、現場には硫酸・硝酸・塩酸などが残留している数基のタンクが、放置されたままだったという。それらのタンクが腐食し、今回の事故になった模様。死傷者はなし。

5.集中豪雨で250万人被災−10/9、10の両日、海南省文昌市。

・49年ぶりといわれる豪雨に見舞われた海南省では、文昌市を中心に250万人が、浸水などの被害を受けた。瓊門市では潭門鎮の合水ダムが放水したため、下流の港に係留中の10数隻の漁船が転覆、68隻が海に押し流され、数十人の死者が出た模様。

6.ダムからモリブデン残滓が漏れ、河川が汚染−10/14、陝西省洛南県の黄龍河と石門河。

・モリブデン鉱の残滓を貯蔵するダムから、大量の残滓が漏れ出し、河川を黄赤色に染めてしまった。それらの地域では魚が大量に死に、住民たちも河に入ると皮膚がかゆくなり、1週間ほど治らないという。地元政府環境部門は事故を起こした陝西秦嶺モリブデン業公司に、生産停止と緊急修復を命じた。

7.炭鉱でガス爆発、26人が死亡−10/16、河南省禹州市。

・10/16午前6時ごろ、禹州市中部に位置する河南中平能化集団傘下の、石炭・電力会社の禹州煤電公司運営する第4炭鉱の坑内でガス爆発事故が発生。作業員26人が死亡、11人が行方不明。

中国の公式統計では、2009年の1年間で、約1600件の炭鉱事故が起きており、死者数は2631人に上っている。ただしもみ消されている炭鉱事故まで含めると、さらに多くの死者が出ているという。

8.炭鉱で浸水事故、29人全員救出−10/21、四川省内江市威遠県。

・10/21、内江市威遠県の炭鉱で浸水事故が発生。一時坑内に29名の作業員が閉じ込められたが、22日全員救出。

9.原発で冷却水漏れ事故発生−10/23、深セン市の大亜湾原子力発電所。

・11/15、大亜湾原発の運営会社の香港中華電力有限公司は、当該原発が10/23に原子炉格納容器内のパイプに亀裂がみつかり、放射能物質を含む冷却水が漏れ出していたと発表した。当公司は漏れた冷却水は少量で、外部の安全に影響はないとしている。同発電所は5月にも原子炉燃料棒から放射性物質が漏れる事故を起こしており、このときにも公表が遅れ、批判を浴びたばかり。今回も3週間後の発表であり、その隠蔽体質に周辺住民は不安を募らせている。

10.高架道路建設中に橋桁落下、作業員7人死亡−10/26、江蘇省南京市。

・建設工事中の高架道路の橋桁が、約10m下の地面に落下し、作業員7人が死亡、3人が負傷。この工事はインフラ建設大手の中国鉄建傘下の会社が請け負っていた。中国鉄建が受注した工事では、今年1月から7月までに、大連や深?などで重大事故が5件発生している。今回の事故は急造した工事量に施工能力が追いついていないのではないかと危惧されていた矢先のことであった。

11.集団転倒で児童120人負傷−11/29昼、新疆ウイグル自治区アクス市。

・アクス市の第5小学校で、昼のラジオ体操をするために大勢の児童がいっせいに階段へ殺到し、将棋倒しになった模様。123人が病院に運ばれ、7人が重傷、うち1人は危篤状態。

12.浙江省沿岸地域や杭州市近辺、農地の50%弱が重金属汚染か?

・11/23、浙江省の人民政治諮問会議は、浙江省の沿岸地域や杭州市近辺の農地が、50%弱が重金属によって汚染されており、さらにその半分近くは食用作物の栽培には適していないと公表した。工場などの産業廃棄物や都市生活の廃棄物によるもので、水銀、銅、鉛、亜鉛、カドミウム、ヒ素など。

13.水産業者が「あさりの砂出し」に工業塩を使用−食べればめまい、吐き気、下痢などを起こす、青島市。

・青島市の水産業者は、名物の「あさりの砂出し」に、工業塩を使用している。この工業塩は、口に入れると、めまいや吐き気、下痢を起こす可能性が大きい化学物質からできており、健康に害を及ぼす危険性がある。水産業者は現在でも、これを乱用しているという。

14.発がん性の高い「鶏肛油」が流通か?

・最近、中国では鶏の肛門から作った油が市場で流通しているという。この油は発がん性が非常に高い。9月下旬、この油を売っていた業者が摘発された。今年3月には、排水溝や下水溝に溜まっている油を採取し、再生した「地溝油」が問題となったばかり。

15.偽目薬販売の病院を摘発、業務停止−上海市。

・上海市当局は、市内にある香港との合弁病院の「上海瑞安腫瘤診所」を偽目薬販売の容疑で摘発、業務停止とした。この病院が販売した目薬を使用した患者の多数が、目の炎症や視力低下を訴えたので、調査したところ判明した。