小島正憲の凝視中国

09年8月暴動情報検証


09年8月:暴動情報検証 
09.SEP.09
 8月は実地検証が必要な規模の暴動は少なかったが、環境汚染に対する住民の抗議が目立った。

   1.のみ検証ずみ。2.〜8.は未検証、情報のみ。                   

   ※暴動レベル基準は文末に掲示。 


1.8/31 福建省泉州市泉港区峰尾鎮で、工場汚水に住民1万人抗議。 暴動レベル2。


・峰尾鎮誠平村では、ビ(さんずいに眉)州港氣ケン(いしへんに咸)工場とその汚水処理場からたれ流されている汚水とその悪臭のために、8/04、2人の中年女性が病気になった。

この2人の家族が、8/04以降、政府や汚水処理場や工場に抗議を続けていたが、政府からは明確な返答がなかった。

また従来からこの村には癌患者が多く、浜辺では海産物が臭くて売り物にならなくなっており、住民の不満が高まっていた。

8/31、住民の1人が癌で死亡したので、住民1万人以上が政府と汚水処理場に抗議のデモを行った。

鎮政府の副鎮長がデモ隊の説得に当たっているとき、激高して女性住民を殴ったため、住民側も副鎮長を車の中に押し込め監禁し、悪臭を実際に体験させようとした。2日後に釈放。 

         

        副鎮長の閉じ込められた車                 8/31の現場の様子

・武装警察が1600人出動し、騒ぎを鎮めようとしたが、住民側は投石したりパトカーを破壊するなどした。

警察が催涙弾や空砲を撃ったので、住民数十人が混乱して負傷。

・峰尾鎮は人口7万人、誠平村は1万人。

8/31、住民は政府に、工場を移転させるか、住民の移転先を確保するかのどちらかを迫った。

9/10の段階で、政府からの解決策の提示はない。

       

        汚水を垂れ流している工場                        汚水処理場

住民は汚水処理場の前で寝起きして、24時間監視を続行中。

同地区では、2007年4月にも化学工場の汚染問題をめぐり、8千人規模の抗議事件が発生。

       

       汚水処理場の前で監視する住民               監視する住民が寝泊まりしているところ


2.7月末〜 湖南省瀏陽市鎮頭鎮で、カドミウム汚染。村民連日抗議。  暴動レベル0。


・鎮頭鎮では、村人2人が湘和化学工場のカドミウム汚染の疑いで異常死。村民が鎮政府と公安局派出所を包囲し、原因の究明を訴えて、連日附大規模な抗議を続けている。

当局は、8/01、環境保護局長と副局長を停職処分、工場の閉鎖、生産停止処分を決定。


3.8/11〜15 河南省濮陽市の林州鉄鋼有限公司で3000人のストライキ。  暴動レベル0。


・国営企業:林州鉄鋼有限公司の従業員約3000人が、公司の私営企業への売却に伴う大幅人員削減やその補償金を不服として、11日から政府や公司幹部を人質に取り、工場を占拠していた。

地元政府が武装警察を出動させ、15日未明に収束させた。

また地元政府は民間売却を一時凍結して説得に当たった。

・先月、吉林省では同様の鉄鋼業の再編にからんで、新社長が労働者に殴り殺されており、中国鉄鋼業界での企業の買収や合併が問題視されている。


4.8/08 湖南省武岡市 住民約1000人、鉛汚染に抗議。  暴動レベル1。


・武岡市に鉛汚染が広がっていることがわかり、住民約1000人がマンガン精錬工場に抗議。道路を封鎖、パトカーを壊した。鉛中毒の疑いで検査を受けた子どもたちの7割近くが基準値を超えていた。

・汚染源とされるマンガン精錬工場は無許可営業をしており、公司の責任者2名が逮捕。政府との癒着が疑われており、現在調査中。


5.8/11 吉林省 白山金鉱山で近隣農民が道路封鎖。  暴動レベル0。


・豪州の公司が保有している「白山」金鉱山への道路を、近隣農民20数名が封鎖した。公司は一時操業を停止した。

・農民側が、金鉱山の排出物を運ぶ河川の水質汚染に抗議したもの。

・公司側は、農民側の主張が不当であると発言しており、関係当局と調整の上、近日中に操業再開の予定。


6.8/17 陝西省宝鶏市鳳翔県で鉛公害に、数百人の住民が抗議。  暴動レベル1。


・鳳翔県では、調査の結果、子どもたちが鉛中毒になっていることが判明したため、住民数百名が東嶺集団鉛・亜鉛精錬公司に押しかけ抗議をした。その際、住民が公司の柵を壊して敷地内に進入し、トラックなど10台ほどを壊した。

・約100人の警察が出動し、市長も駆けつけ、住民の移住や医療保障について解決する方向の提案をしたので収束。


7.8/21 重慶市 警察幹部を拘束。  暴動レベル0。


・重慶市では、今年6月から市内の暴力組織の摘発を強化していた。主要暴力団の幹部100人余をはじめとして、地元経済界の顔役を含む1500人余、市司法局長や警察幹部少なくとも6人を拘束した。

・重慶市では、古くから暴力団がはびこり、政府幹部の汚職やそれに抗議する住民の暴動が頻発していた。

昨年からの私の暴動情報調査でも重慶市の事件が多かった。


8.8/22〜9/03 湖南省冷水江市の鉱山で大ストライキ。  暴動レベル0。


・冷水江市の湖南省湘煤集団・金竹山鉱業有限公司で、退職金問題をめぐり労働者5000人余りがストに突入。現在も続行中。

・同企業は上場に伴う会社の再編で、労働者を一時解雇して、新会社で再雇用する方針。労働者は永年勤続者が多く、新会社に移行することによって既得の権益が失われることを恐れ、一時解雇時点での退職金の支払いを求めてスト。


附9.8/27 全人代常務委員会 武装警察法を可決。 

・全人代常務委員会は、武装警察部隊が行う保安任務の範囲を規定した人民武装警察法を可決した。


附10.ウルムチ市でラビア・カーディル氏所有のビル3棟、強制取り壊し開始。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動