小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2010年 10月  


暴動情報検証 : 2010年 10月  
25.NOV.10
2.3.4.は実地検証済み。1.5.〜9.は未検証。  暴動レベル評価基準は文末に掲示。


1.10/19、青海省同仁県などで、多数のチベット人中高生と教師が「教育改革」に反対しデモ。
                                                 暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 
10/19、青海省同仁県で、数千人のチベット人中高生が、政府の教育改革に反対し街頭に出てデモを行った。
10/22、北京にある中央民族大学で、チベット人学生400人ほどが抗議デモ。
10/24、青海省黄南州尖扎県で、千人余のチベット人教師と学生が、同じく教育改革に反対し抗議デモ。
10/26、27、甘粛省甘南チベット族自治州夏河県で、約200人のチベット人学生と教師が教育改革に反対しデ
モ。

※青海省政府は9月、「2015年までに、省内のすべての学校の教科書を漢語版に変更し、チベット語と英語の科
目以外の授業は全部、漢語で行う」と決定した。上記のデモは、この決定にチベット人中高生らが抗議したもの。

・実情 : 私はただちに青海省西寧市の知人に連絡を取り、同仁県に取材に入ろうとしたが、外国人がその地域
に入ることは禁止されおり、中国のマスコミの取材も制限されているとのことで断念した。地元の人々にも、この問
題へ踏み込んだ場合、身の保障はないという通知がなされたという。政府側と抗議デモとの衝突はなかった模様だ
が、尖閣諸島問題での反日デモと重なっており、政府側の対応はきわめて慎重かつ厳重なものだったと伝えられて
いる。一連の抗議デモの後、政府は「改革は漸進的に行う」と発表した。またチベット人学者や教師を動員して、漢
語の優位性を説く宣伝活動を活発化させている。若干の日程の先延ばしはあるものの、政府の教育改革は実行さ
れる模様。

今回のデモの主体が中高生であったのは、今後の大学入試が漢語のみになり、チベット人受験者に不利になるこ
とに危機感を抱いた当事者たちが立ち上がったというところに主因があったという。この点の解決にも、入試の採
点結果にチベット族のみにかなりの「下駄が履かされる」などの工夫がなされるだろう。

2.9/26、遼寧省大連市中山区不朽巷で、再開発のためのマンション住民強制退去で騒動。
                                               暴動レベル0。

・マスコミ情報なし。

・実情 : 私の友人がこの場所のマンションに居住しており、この騒動の情報が私に入った。マスコミ情報はなし。
市政府がこの地区の再開発という名目で古いマンションを取り壊し、高層マンションの建設を決定。住民を強制退
去。

9月初旬から、強制退去実施の噂が流れていた。
9/26、武装警察数十人の同行のもと、再開発事業関係者が現地で強制退去事項を発表。
10/9、退去事務を取り扱う事務所が開設され、住民300人以上が補償問題などの問い合わせに殺到。「打倒共
産党」や「政府批判」を叫ぶ人も現れ、騒動に発展。

10/10、近所の銀行で、強制退去にまつわる補償金問題でトラブルが発生。
10/20、マンションの水道が断水。引っ越しの住民や中古品業者で大混雑。

            

《強制退去実施要項》

  @.退去期限は10/11〜11/20。
  A.早期退去の奨励金として、10/26までに退去した人には、3万元を出す。
  B.退去補償金は、1u=12500元。
  C.新設マンションに入居希望者は入居の権利有。ただしその場合は補償金無。
  D.引っ越し費用は政府負担。 引っ越し代800元、有線テレビ移行費用70元、
    インターネット移行費用50元、電話移設費用200元など。

・私見 : このような再開発が、現在、全国各地で行われており、これが政府の新たな財源になっている可能性が
ある。マンションなどの再開発は各関係者がそれぞれに儲かり、大騒動に発展することが比較的少ないからであ
る。つまり政府は業者にその権益を高値で売って儲け(また政府関係者は多額のバックマージンを得る)、不動産
開発業者は高層マンションを建設し、旧マンションの数倍の住居数を確保しそれを売却することによって大儲けし、
旧住民は損をしないで新築マンションに入居できるため、ほとんど反対はしない。それでも住民の中には、もっと多く
の補償金を要求し、籠城を決め込んだり、関係事務所に押しかけたり、裁判に訴えたりする者がいるので、時には
武装警察の出動という事態にもなる。しかし農民との土地騒動のような激しさはないようである。この構図も、新築
マンションが高値で飛ぶように売れることを前提にしたものであり、マンションバブルの崩壊と同時に大問題となるこ
とは必定である。

3.10/22、貴州省貴陽市南明区彭家湾地区で、強制退去騒動。住民敗訴。  暴動レベル0。

・マスコミ情報なし。

・実情 : 私が貴陽市に下記の4.と5.の暴動調査で赴いたところ、乗り合わせたタクシーの運転手がこの情報を
教えてくれたので、さっそく現地に行ってみた。現場一帯は古い低層住宅の密集地域で、地元政府が再開発を決定
し、すでにかなりの住居が強制実施された後であり、広範囲にわたって取り壊し作業中であった。1か月ほど前に、
警察が出動するほどの騒動があったようだが、現在は垂れ幕が翻っている程度で、反対運動の面影はなかった。

         

一部の居住者が、補償金の増額を要求して裁判所に提訴したが、10/22に棄却。この住民の元住居は67.5u
だったが、新マンションでは80uのものを2室要求していたという。この再開発では住民が、@金銭での補償、A
新築マンションへの入居+金銭補償、B旧住宅同等の広さの新築マンション2室という選択肢の中から、希望のも
のを選ぶことができるということであり、かなり有利に思える条件である。敗訴した元居住者は欲張りすぎたようだ。

・私見 : 近隣の住民の話によれば、旧居住者の中には新築マンションへの入居を保障された上に、ほぼ100万
元の現金を手にして「にわか成金」と化し、定職を捨て遊び呆けてしまっている者が多いという。これが現代中国の
縮図でもあると思う。なお、この現場には取り壊した建物の中から、ぐにゃぐにゃに折れ曲がった鉄筋を取り出し
て、大きなハンマーで叩き伸ばし、直線状にする作業をしている人たちがいた。「なにをしているのか」と聞いてみる
と、彼らは「次の建物にこの鉄筋を再利用するためだ」と答えた。私には建築設計の知識はないので一概に言えな
いが、この鉄筋で作られた高層マンションには絶対に住みたくない。

4.10/21、貴州省貴陽市烏当区王家寨で、村民と武装警察が強制移転で、衝突。  暴動レベル2。

・マスコミ情報 : 貴陽市烏当区王家寨では1年ほど前に、地元政府と農場管理公司(貴陽三聯乳業有限公司)
が、農民の代々耕作してきた土地と宅地を不動産開発業者に別荘予定地として売却した。不動産開発業者から農
民に支払われるはずの補償金の一部を政府の役人が着服したとの噂があり、補償金も安かったため、多くの農民
が家屋の移転に反対していた。

9月に200人余の暴漢が村を襲い、村民を脅かし移転同意書へのサインを迫った。
10/21、午後2時ごろ、地元政府は武装警察約1000人を投入し、家屋の強制取り壊しを開始したので、村民と
激しく衝突した。村民側に7、8人の重傷者が出たが、地元政府が病院へ行くための道路を遮断したため、村民は
現場に掘っ立て小屋を作り、点滴などの応急処置をした。

          

・実情 : 歴史的にこの土地の所有関係はあいまいであったようで、形式上は農場管理公司のもので、実際には
村民が耕作既得権を持っていたものと思われる。したがって農場管理公司が不動産開発業者に農地や宅地を売っ
てしまうと、村民は生きる術を失うのが実情であった。田畑の耕作者には、3年分の収入が保障されるとい  《 急
造された2階部分 》

うことだが、それでは不十分であり、家屋の移転には1u=1744元の補償金が支払われるということであるが、こ
れで周辺の住宅を購入するには半額にも満たないという。現在、村民がこの地の入り口の道路を封鎖している。村
民の中には、従来の家の屋上に、急ごしらえの部屋を造り、その分まで補償金を取ろうと自衛措置を施している者
もいる。

5.10/29、貴州省貴陽市雲岩区宝山北路の警察官舎で、住民と武装警察が衝突。暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 10/29、貴陽市雲岩区宝山北路の警察官舎で、強制移転に反対する住民(警察官OBが多
い)と、約400人の城管、公安、武装警察が衝突した。政府側が住民を強制的に戸外に連れ出そうしたので、抵抗
した10数人の老人が負傷して病院に運ばれた。この官舎には、定年退職した警察官やその遺族、子弟などが住
んでいる。政府側と不動産開発業者が老朽化した住宅を建て替えることを名目に、住人の強制退去を迫った。住
民は補償金が安く、新築されるマンションに居住するには、追加資金が必要であるため、移転に反対していた。こ
の事件は、長く警察に勤務したものでさえ襲われるという点で、社会の注目を浴びている。

     

・実情 : 現場をくまなく歩き、方々で聞き込みを行ったが、まったく情報がつかめなかった。さすがに警察官舎だ
けあって情報統制が徹底しているようだった。ただし中央の老幹部の集会所の掲示板に、銀行からの住宅貸し付
け金に関する情報が数種類貼られており、老幹部たち10数名が、心配そうな顔でそれをのぞき込んでいた。

6.9/21、甘粛省臨夏回族自治州臨夏市で、イスラム教住民数千人が娯楽施設の開業に反対行動。
                                                     暴動レベル2。

・マスコミ情報 : 9/21、臨夏市でマッサージ店やカラオケが含まれる大型施設がオープンした。従来からこの
施設の開業に反対していた住民のイスラム教徒数千人が、当日、この施設を襲い、設備を破壊するなどして警備
員と衝突し、10人余が負傷した。

7.10/03、江西省萍郷市で、地元政府の宝くじ発行の不正に怒った市民数万人が抗議。
                                              暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 10/03夜、萍郷市で地元政府の発行した災害救済目的の宝くじに不正があったとして、市民
数万人が発行現場に集まり、抗議した。政府はすぐに現場に、バス2台分の武装警察が投入し、市民を蹴散らし
た。

当日、午後になり、残りくじが少なくなっても6口あると発表されていた1等賞(25万元)は、まだ誰にも当たっていな
かったので、一部の市民が残りのくじを全部買い占めた。ところがその中にもまったく1等賞がなかったので、不正
が発覚したという。


8.10/11・12、四川省都江堰市で、出稼ぎ労働者数千人が給与の未払いに抗議、警察と衝突。
                                                  暴動レベル2。

・マスコミ情報 : 都江堰市で出稼ぎ農民工数千人が、給与の未払いに抗議して警察約1000人と衝突。農民工2
人が死亡、100人以上が負傷。

9.10/15、雲南省文山チワン族・苗族自治州硯山県河彝族郷で、村民が土地収用に抗議。
                                               暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 10/15、硯山県河彝族郷で、地元政府はアルミニウム採鉱のため、1か月前に同地を村民か
ら強制収用した。補償金は1ムー=1万5千元であったが、これに不満の村民が抗議行動を行った。地元政府は警
察を派遣しこれを鎮めた。このとき村民100人余と警察10人ほどが負傷した。10/17、村民1000人以上が硯
山県庁前に集結し抗議を行ったため、武装警察1000人が出動し対峙した。政府は少数民族問題に転化するのを
危惧しており、武装警察の大量投入で早期の解決をめざした模様。


《ストライキ情報》

1.10/13、広東省深セン市のリコー子会社の工場で、スト。

・マスコミ情報 : 10/13(20という情報もあり)、深セン市にあるリコーグループの子会社の「リコー越南美」と
「リコーデジタル」の2工場で、それぞれ千人以上の従業員がスト。今月始めに両工場の合併が発表され、それに
併せてリストラが行われるのでは危惧した労働者が、給与の5割アップ、リストラの際の退職金の割り増しなどを要
求。ストライキは整然と行われており、過激な行動はなかったという。会社側は23日には収拾したと発表している。

2.10/21,広東省深セン市の日系事務用機器部品工場で、約1000人の従業員が全面ストに突入。

・マスコミ情報 : 10/21、深セン市の日系事務用機器部品工場=香東工業公司で、従業員が賃上げを求めて
スト。要求は1100元を1300元へと200元アップ。


《反日デモ情報》

尖閣諸島問題に関連して、中国内陸部の各地で、学生を中止にした反日デモが起きたが、これについては現在調
査中である。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動