小島正憲の凝視中国

最新ニュースで読む中国の変貌2011年9月〜温州商人の夜逃げ〜


最新ニュースで読む中国の変貌2011年9月〜温州商人の夜逃げ〜
3.OCT.11
(目次)
1.バブル崩壊前夜か?温州経営者の夜逃げ続出
2.世界第2位の経済超大国が、なぜ外資の誘致に必死なのか?
3.なぜ今、社会保険の実施を強行するのか?
4.中国全土での「のっぽビル競争」とその安全性
5.モラルの崩壊

1.バブル崩壊前夜か?温州経営者の夜逃げ続出

 浙江省温州市で経営者の夜逃げが続出している。9/12〜21までの間に7社、22日には1日で新たに9社の経営者が夜逃げした。9/20夜11時ごろ、老舗眼鏡メーカー信泰集団の経営者が、20億元(約240億円)の負債を残したまま、行方をくらました。これらの温州市の経営者の夜逃げには、そのほとんどが高利の民間金融(闇金融=インフォーマル金融)に手を出しているという共通の特徴がある。

 信泰集団は1993年に設立、従業員3000人、温州市内に3工場を持ち、分社や店舗も多数を経営、ブランド眼鏡のOEM生産を手がけていた。なお下請け会社は100社余、その従業員数は数千人に及ぶ。信泰集団の経営者である胡福林氏は、20億元の借金のうち、約6割を民間金融から借り入れており、その利息だけでも1か月に2000万元が必要だったという。

 現在、温州市では、金融引き締めの結果、資金繰りに行き詰まり、民間金融からの借り入れでその場をしのごうとしている企業が多い。その結果、民間金融の貸し出し残高は1100億元(1兆3200億円)に上り、そこに預け入れている温州市民の利息は年利180%にも及ぶという。眼鏡業界を含め、実業界の平均的利益は3〜10%であり、当然のことながらこの高金利は実業では返済不可能である。また数年前から、幾多の経営上の困難に遭遇していた実業界の経営者たちは、実業での利益を諦め、自らが民間金融や不動産投資などに資金を融通し、そこから巨額の利益をせしめることに活路を見出していた。ところが不動産の値下がりや民間金融会社そのものの破綻などの帰結として、高利の返済は不可能となり、夜逃げや自殺という事態に追い込まれたのである。なお、温州市では、来年の春節(旧正月)にかけて借入金の支払い期限を迎える企業が増加し、さらなる倒産が相次ぎ、連鎖倒産の発生も激増するとみられている。

 民間金融会社もその原資は、ほとんど民間の個人から高利で借り入れたもので、それがピラミッド型になって、より大きく、より高金利な民間金融会社へ収斂されている。人民銀行温州中心支行の「温州民間金融市場報告」によれば、温州市では89%の家庭や個人、59%の企業が民間金融に参画しているという。したがってその頂点である民間金融会社が倒産すると、その被害は数百から数千人に及ぶ。ただし温州市では、公務員や銀行の職員も、この民間金融に参加しており、その資金の出所を探られると困る人が多く、民間金融会社が破綻しても、それを訴える人は少ないと言われている。

 現在、中国では温州市だけでなく、全国的に民間金融がはびこっており、多くの中国人民や経営者がそれにのめり込んでいる。私は今まで、中国最北端の黒竜江省鶴崗市、最南端の広西チワン族自治区南寧市、最西端の新疆ウイグル族自治区カシュガル市で、民間金融=インフォーマル金融=地下金融の実態をこの目で見て、読者各位に情報を提供してきた。西側諸国の研究機関のレポートでは、2010年度の民間金融会社の貸出残高は約8.5兆元(約102兆円)で、同年金融機関の貸出残高総額の17.8%を占め、さらに同年国内総生産(GDP)の21%を占めたと示している。

 中国における民間金融の代表例が温州市や内モンゴルの鄂尓多斯市である。鄂尓多斯市では市内の不動産開発プロジェクトはすべて民間金融でまかなわれており、同市の市民の半分は民間金融への貸し出し元であるという。その結果、鄂尓多斯市は中国最大の「鬼城」となっているのである。また現在までの中国経済の活況は、温州商人の活躍によるところが大きい。中国全土のすみずみにまで、温州商人の勢力が広がっている。また温州商人は世界の各地にも進出しており、日本の不動産買いの原動力にもなっている。ドバイの不動産を買い漁って大損したのも温州商人ならば、それを底値買いしたのも温州商人だったと言われている。その温州商人の足下での、今回の経営者の夜逃げ騒動は、中国経済のバブル崩壊の前兆と言っても過言ではないだろう。

2.世界第2位の経済超大国が、なぜ外資の誘致に必死なのか?

・9/05、深セン市政府は、10/22、25の両日、研究機関の担当者らを率いて米国のシリコンバレーとボストンを訪れ、新たに建設する工業団地「深?国際科技創業園」での高度人材誘致計画の説明会を行うと発表。この計画では、1人当たり80〜150万元(960〜1800万円)の奨励金が支給され、その他の優遇措置もある。深セン市政府は、今後5年で、起業などに携わる優秀な人材1000人以上を誘致することを目標としている。

・9/14、広州市郊外の「広州ナレッジシティ(知識都市)」(シンガポールと中国の共同開発)で、欧州系企業5社やシンガポール企業などが環境製品の実証実験を行うことが決まり、合意覚え書きが結ばれた。具体的には、発光ダイオード照明の実証試験、省エネ技術や次世代ビルや住宅の実証実験、スマート・グリッドの技術の適用・移転を行う予定。

・9/14、上海浦東新区人民政府が主催する同新区の最新情報交流会が東京都内のホテルで開催され、同新区の幹部たちが重点産業政策や投資環境の優位性、物流・人材確保・コスト面のメリットを紹介し、日系企業関係者に一層の投資促進を呼びかけた。同新区では、新エネルギー、省エネ環境保護新材料、港湾設備・船舶を含めた先端製造業および販売拠点に加え、統括会社、研究開発センターなどの現代的サービス業の分野での投資に大きな期待を寄せている。※この項は再録

・9/25、北京市の房山区の北京ハイテク製造拠点に、「中日友好グリーン産業パーク」が開設された。同パークには、日中合弁企業の2社が進出し、第1期プロジェクトでは主にリチウム電池、青色発光ダイオード省エネ製品、カーボンアルミ合金、生物質高純度ホルムアルデヒド製造設備、ナノチューブなどの技術の製造拠点とするとともに、先進的な研究開発センターの建設も予定している。投資総額は20億元(約240億円)、年間生産額200億元、納税額は28億元、雇用数は2000人という。

・9/28、上海市の金山区で上海初の日系向け産業園区「上海金山日本企業産業園」が、設立された。高い技術を有する日系企業の取り込みを図る狙い。同日、最先端技術などを保有する日系企業5社が同産業園区に進出することで契約書に調印した。5社合わせた投資総額は、約1億ドル(約76億5千万円)。

・9/29、蘇州市は、シンガポールの不動産開発最大手キャピタランドと、大型商業施設1棟とオフィスビル2棟の合弁事業を始めることで合意した。投資額は67億4000万人民元(約760億円)。

 上記のように、現在、中国は外資企業や外国人材の取り込みに、異常なほど必死になっている。上記はほんの一例であり、省政府や中国全土の末端政府まで、猛烈な外国行脚を続けているのが実情である。

 中国は世界第2位の経済大国である。その中国が面子をかなぐり捨てて、なぜ外国に頭を下げ続けているのか。

 中国に進出していた労働集約型産業は、2010年度中に、ほとんど中国を去ってしまった。中国は労働集約型産業を追い出し、自力更生で知識集約型・ハイテク型・最先端技術型の産業構造への転換を成し遂げようしていた。ところが実際には、中国の内資企業のみでは産業構造の転換がまったく不可能であることが判明した。そこで慌てて、再び他力依存に方向転換をして、外国行脚を外資の誘致に奔走することになった次第なのである。東日本大震災に見舞われ、電力不足やサプライチェーンの断絶、円高といったさまざまな経営上の困難を抱えている日本企業は、その格好の標的となったのである。

 中国政府は「幻想の中国市場」を演出して、世界各国から中国内需を目指した先端産業の誘致を目指し、それに成功しつつある。中国政府は、無償の資金援助ともいえる莫大な投資を呼び込み、同時に世界各国の先端技術を獲得するという一石二鳥の戦略を成功させようと必死になっているのである。ただしその前途には、バブル経済の崩壊、外圧などの幾多の困難が待ち受けている。

3.なぜ今、社会保険の実施を強行するのか?

・上海市、外来従業員の社会保険加入、強制実施
 上海市においては従来、上海戸籍を持つ従業員と外来従業員(上海戸籍を持たない従業員)に対し、それぞれ異なる社会保険納付政策を実施してきた。上海戸籍を持つ従業員は、養老保険、医療保険、労災保険、失業保険および生育保険に加入することが可能な一方で、外来従業員は、福利内容が少ない総合保険にしか加入できなかった。ところが今回、7/01から「社会保険法」が実施されたことを受け、総合保険が廃止され、企業には外来従業員も上海戸籍従業員と同じ保険に加入することが義務付けられた。なお、北京市には上海市とは違う保険制度があり、これも年末までには是正される予定。

・外国人の社会保険加入、10/15から強制実施
 中国人的資源・社会保険保障省は、就業外国人社会保険加入暫定規則を公布、10/15から施行する。日本企業の駐在員なども対象に入り、中国の社会保健サービスが受けられるようになる反面、保険料を日中両国で二重払いすることになる。中国で合法的に就業する全ての外国人は、雇用主と本人が1人当たり合計月額約7万円(年間80万円)の社会保険料を納めなければならなくなる。

・上海市、年間100億元の年金赤字補填に、土地売却収入を充当
 上海市は年間100億元(1260億円)を超える赤字が続く年金財政を立て直すために、土地使用権の売却収入や市が管理する国有企業からの配当収入を投入する方向で検討している。上海の企業を退職した年金受給者は約300万人。このように年金財政が窮迫している上海市の年金は、月額1800元と北京や広州よりも低く、市政府は退職者たちから年金の大幅アップを迫られている。

 中国では、7月1日から、社会保険システムの完備などを目的とした社会保険法が施行された。一般に、それ自体は中国社会の進歩として受け止められている。しかし社会主義思想からいえば、社会保障制度そのものは、資本家階級の労働者階級への懐柔策であり、本来、社会主義社会である中国には不要なものである。このような原則論はさておき、なぜ今、中国政府は急速にその施行に踏み切ったのか。

 それはまず第1に、中国政府が中国人民の将来に対する不安の解消を目指したものである。しかし中国政府は先進各国の年金制度が、一様に破綻し、企業と人民が将来のために積み立てた資金が雲散霧消してしまっている現状については、中国人民に説明責任を果たしていない。それどころか、上海市などでは、現時点での年金財政もすでに大幅赤字であり、その補填のために他の収入から資金を捻出しなければならない羽目に陥っている。

 上海市での外来従業員の社会保険強制加入の背景には、行政末端の役人たちも、上海市の年金財政の窮迫があると指摘している。企業や人民が将来のために積み立てている資金が、現時点の需給者に右から左へ回されているのである。

 なお中国の社会保険制度は複雑で、なおかつ地方でその施行方法が違ったりしているが、保険料は70〜80%が企業負担、残りの20〜30%が本人負担となっている。したがって企業側の負担は重く、これを嫌って、規模を縮小する労働集約型企業が続出している。また従業員側も保険料の納付を嫌がり、それが不要なモグリ経営の企業に流れている。現実にそぐわない中国政府の諸施策は、ボディブローのようにその体力を弱めているのである。

4.中国全土での「のっぽビル競争」とその安全性

・このほど湖北省武漢市で、高さ666mの超高層ビルの建設計画が進んでいることがわかった。場所は再開発中の武昌の漢正街で完成後は中国で一番の高さとなる。なお武漢には現在、606mの超高層ビル「武漢緑地中心」が建設中であり、新のっぽビルはちょうどこのビルの川向こうに当たる。

・伊藤忠商事が出資する中国民営企業グループ杉杉集団は、97億元(約1160億円)を投じて、浙江省寧波市に同省でもっとも高い高層ビル「寧波中心」を建設する予定。

・山東省青島市中央ビジネス区で249mの高層ビル「卓越・世紀中心」が起工。

・9/19、北京市で高さ500m超の高層ビル「中国尊」が着工。

・2011年以前に完成した、高さ世界トップ10の超高層ビルのうち、中国からは6棟がランクイン。また2001年以降で、世界で高さ200mを超える超高層ビルが350棟以上建設され、そのうち半数以上は中国であるという。

 現在、中国は上記のように超高層のっぽビルの建設競争状態に入っている。ネット上やマスコミでは、このところの高速鉄道や地下鉄の事故の影響もあって、その安全性を危惧する意見が多い。これらの事故を発展途上国の過渡期の現象として捉えることもできる。たしかにかつて韓国でも、漢江にかかる橋が崩落したり、百貨店が倒壊、地下鉄の大火災などが集中した時期があった。そこには世界の先進国に追いつこうと背伸びする国民意識が反映されていると見ることもできる。中国ではそれらの国民意識やバブル経済を背景にして、インフラ整備やマンション、のっぽビルなどの一大建設ブームが巻き起こっている。そして建設過程での莫大な利権に目がくらんだ建設業者らの手抜き工事なども指摘されているように、多くの場面で安全性がないがしろにされる結果が生じてきている。中国で次に起こるのは、おそらく「のっぽビル」の倒壊ではなかろうか。

 一方、9/28、三菱電機は上海市浦東新区陸家嘴で建設中の中国最高層(現時点)ビル「上海中心大厦」向けに、エレベーター計108台を受注したと発表した。現在、中国の「のっぽビル」に必要不可欠な超高速エレベーターは、日本企業の独壇場になりつつあると聞いている。このビルの隣の超高層森ビルも東芝製であった。ライバルのオーチス社はエスカレーターで多くの事故を起こし、なおかつエレベーターでも、9/09、東莞市で落下事故を起こすなど、評判を落としている。より速く、より静かに、より安全にをモットーにして、日々、メンテナンスなどにも努力を重ねている日本製エレベーターに、今、信頼が集まっている。ただし最近、中国国家品質監督検査検疫総局は、トヨタ自動車の一部乗用車に部品破損による死傷事故が発生していたと指摘した。同社は、「事実関係がわからず、調査している」とコメントした。また同局は富士重がワイパーを動かすモーターの不具合を理由に、9/28から計3万6728台をリコールすると発表した。このように中国では、安全面でも反日意識も手伝い、どうしても日本製品への風当たりは強い。日本製エレベーター会社も、あぐらをかくことなく、最大限の注意を払う必要がある。

5.モラルの崩壊

@空のモラルも崩壊か?
 上海虹橋空港で、8月13日午後、吉祥航空の機長が管制官の指示を無視する事件が起きた。当時、雷鳴のため上海浦東空港に着陸できなかったドーハ発カタール航空機が、燃料切れを訴えて虹橋空港に緊急優先着陸を要請していた。管制官はそれを認め、吉祥航空機に進路を譲るように7分間に6回にわたって指示したが、同機も燃料不足を理由に拒否し続け、先に着陸してしまった。すぐにカタール機も着陸し、事なきを得たが、そのときカタール機の燃料は18分間分しか残っていなかった。吉祥機の残量は42分間分。事態を重く見た中国民用航空局は、同機の韓国籍機長の免許を剥奪、吉祥航空に減便を命じた。さらに同局華東管理局は、管理区域内で乗務している6航空会社の外国籍機長219人の資質や能力などに関する一斉調査を10月末までに実施すると発表した。

 中国経済の急成長を背景に、航空各社は急速に増便を行っており、圧倒的なパイロット不足が進行していた。一般にパイロットを育てるには10年以上が必要だと言われており、同時に他社からの引き抜きを当局から禁じられているため、各航空会社は即戦力として外国籍パイロットを採用することが多くなっていた。現在、中国では1300人の機長が就労していると言われている。しかし外国籍のパイロットの採用基準が甘く、経歴詐欺などもかなり存在するようだという。また航空会社の燃料節約指示(節約した燃料の4割をボーナスとして支給)などが、今回の機長を欲ボケさせた模様。いずれにしてもこれは、「空のモラルも地に落ちた」というべき事件であった。

Aなにを食べたらよいのか?
・9月初旬、市販されているペットボトルなどのミネラルウォーターから高濃度の発ガン性物質が検出された。中国国家質検総局がこのほど、北京市や天津市、河北省などの地区の飲用水製品を対象としたサンプル検査を行ったところ、211社の220種の飲用水製品の中で、18種類から大腸菌やカビなどが検出され、6種類は国家基準を超えた発ガン性物質を含んでた。

・9月中旬、北京市で長蛇の行列ができるほど人気のあった肉まん店で、使用禁止の香料を使用されていたことが判明。警察や税務当局が取り締まりに乗り出した。同様の香料を使用した店は、山東省や天津市では数多くあるという。半年ほど前には、上海でも超人気の饅頭が違法着色料の使用で摘発されている。

・9月中旬、下水道の廃油や残飯などを原料とした地構油(下水油)を製造・販売する業者32人が、山東省などで摘発・逮捕された。押収された地構油は100トンに及んだ。中国ではこのような地構油が年間2〜300万トン出回っているという。

・9月下旬、中国国務院食品安全委員会弁公室の責任者はこのほど、食品添加物の違法使用をめぐる取り締まり強化で、5か月で違法企業約5000社を処分したことを明らかにした。今年上半期、裁判所は食品添加物関連事件で計104件、81人に対し裁判を行ったが、このうち国家公務員57人が37件の事件に関わっていたことが判明している。

Bニセ領収書の押収、1〜8月で1.33億枚

 国家税務総局はこのほど、今年1〜8月に全国の税務機構が調査・処理した領収書の偽造、違法発行事件が4万1769件に達し、1億3300万枚の各種ニセ領収書を押収したと明らかにした。これはおそらく氷山の一角であると思われる。つまり中国ではニセ領収書発行がビジネスとして成り立つほど、脱税が横行しているのである。これも経営者のモラルが崩壊している一例である。

C医療ミスへの報復

 先日、北京市の同仁病院で、患者が医師をメッタ突きにし重傷を負わせる事件が発生した。事件の原因は、2006年10月、この病院で喉頭ガンの手術を受けた患者の王氏が、手術後、医療ミスで声がまったく出なくなった事を恨み犯行に及んだもの。患者の王氏は当時、当該医師に多額の謝礼金を支払っており、快癒を疑っておらず、医師も簡単な手術であると説明していた。患者の王氏はただちに裁判に訴えたが、その後3年間、まったく進展をみせなかったので、王氏は最後の手段として犯行に及んだという。この事件後、同病院の医師は、安全な治療環境を求めてストライキを行った。ネット上では、この王氏の行動を支持し、多額の謝礼金を必要としたり、医療ミスが続出する現代の医療体制や医師の良識を批判する書き込みが多い。

 現在、中国ではこのような事件が頻発している。1/31、上海市の華東病院で医師と患者の衝突で、医師と看護士10人が負傷(うち6人は重傷)。5/30、江西省上饒市人民病院で、100人余の病院を囲んで医師に暴行を加えた。8/16、東莞市の長安病院で医師と患者が衝突、医師1人が死亡、1人が重傷を負う。
 医師と患者、双方のモラルが問われている。

E肥満体急増 

 中国国家体育総局は、このほど2010年度の「国民体質観測」の結果を発表。成人以上の肥満傾向はますます強まり、専門家は「過去10年間の国民の体重増加は、西洋人が過去30年間で増えた分とほぼ等しい」と述べ、急速な肥満化に警告をならしている。今、中国人の自己管理が問われている。

F狂犬病急増 問われる飼い主のモラル

 上海市はペットの急増に伴い、今年5月、「飼い犬管理条例」を施行したが、ワクチンとセットになった飼い犬登録をしない飼い主が依然として存在しているほか、条例で公安部門による収容が決められている大量の野良犬も放置されたままであるという。その結果、1〜8月の狂犬病の発症例は6件、犬や猫に噛まれるなどの被害が4万5738件に達した。当然のことながら、犬の散歩の際の糞の始末などにも、無頓着なモラルの低い飼い主がほとんどである。やがて上海市内が犬の糞だらけになるかもしれない。


続:温州商人の夜逃げ 
17.OCT.11
 温州経営者(温州商人)の夜逃げ現象は、その後も拡大している。
 しかし中国のネット上では、10/15夕から、夜逃げの情報が少なくなった。政府が情報統制に入ったと思われる。
 一部の経済学者は、このハイリスク高利貸しブームが、「中国発の金融危機要因」になると警鐘を乱打している。

1.10/03・04両日、温家宝首相、温州市の夜逃げ現象視察へ

 温州市で経営者の夜逃げや、民間金融の融資の焦げ付きが多発し、これが全国各地に飛び火する懸念が浮上してきたため、温家宝首相は国慶節の連休を返上して、10/03/04の両日、温州市入りし、金融秩序の回復に全力を挙げ、高利貸し付けの蔓延を抑制する措置を講じるように指示した。

 既報のように、温州市ではこれまでに、80社以上の企業でオーナーが逃亡するなどして倒産した。このうち9月には26社が集中し、同月22日以降で3人が飛び降り自殺を図り、うち2人が死亡。

 このような事態を前に、温州市政府は同月28日、金融秩序の安定に向けた意見書を出し、貸出金利の上限を30%以下にするように求めた。しかし危機の拡大を食い止めるため温家宝首相は2日間の現場視察で3度の座談会を開き、中小企業経営者らから詳細な聞き取りを行った。温家宝首相は貸し渋る銀行などに対して、中小企業などへの金融サービスを改善するように要求。さらに中小企業向けの優遇政策拡大を検討するほか、民間金融に対する監督を強化し、リスクの拡散や蔓延を防止するように指示した。

 9/28、温州市の経済情報化委員会が緊急実施したアンケートによれば、温州市の重点企業855社のうち、76.7%の企業が、「資金繰りがとても厳しい」と答え、その原因として「銀行の貸し渋りと不景気による売掛金の回収サイトの長期化や回収不能が原因」を挙げた。

2.10/12、温家宝首相、沿海部の信用不安対策を指示

 経営者の夜逃げが続出している温州市を視察した温家宝首相は、10/12、国務院常務会議を開き、沿海部を中心に深刻化する民間企業の資金調達難や信用不安を解消するため、地下金融の監視強化や金融サービスのてこ入れ、税財政支援に乗り出す方針を決定した。具体的には、中小零細企業向け融資のてこ入れや、金融機関による不当な経費徴収の禁止、新たな金融サービスの拡充、減税措置の導入などを指示。民間金融の健全な発展を促すため、高利融資の傾向を抑え、違法な資金集めなどを厳しく取り締まり、金融機関従業員が民間金融に関わることなどを禁じる方針を打ち出した。

3.10/13,国務院、資金難の中小企業のため、「中小企業管理局」の設置検討

 国務院関係者によれば、国務院は、金融引き締め政策などの影響で資金難に陥っている中小企業を支援するため、国務院直轄の新機関「中小企業管理局」を設置することを検討しているという。同局は、銀行に対して中小企業向け融資を促すとともに、関係当局と連携して中小企業の株式上場を促進する役目を担う。

4.10/13、温州市公安局、金融安定のための対策10か条を発表

 10/13,温州市公安局は経済金融秩序を安定させ、経済建設を促進するため、「債務危機の企業の責任者の行動の監視、民間金融の暴力的取り立て行為の監視、ネットなどでの風評監視」などを定めた対策10か条を発表した。ここには公安局が、債務危機の前兆がある企業の責任者や、違法民間金融の責任者の行動を監視・監督すること、すでに逃亡した容疑者を追跡し法律によって処罰することなどが明示されている。その他、次のような指示が並んでいる。違法な資金集め、財産の隠匿などの行為の禁止と摘発強化。貸付金の暴力的取り立て禁止。従業員の給与未払いおよび遅延行為の禁止。従業員が企業の設備などを略奪することや、交通を麻痺させる行為の禁止。ネット上で悪意のある情報や社会秩序を乱すようなニュースを発信することの禁止。

 ことに温州市公安局は、夜逃げ経営者予備軍の海外への逃亡を阻止するため、夜逃げの意図があると予測される経営者の資料を出入国管理局に通知し、出国登録手続きを厳格に監視することに決定した。またすでに夜逃げした経営者の家族に対しても同様の措置を取るとしている。

5.ネット上に、大手経営者夜逃げリスト登場

 10/14,ネット上に、今年の4月以降の温州市の、大手経営者の夜逃げリストが登場した。これらの大手経営者たちはほとんど民間金融に手を染めており、その資金を賭博に注ぎ込み、大損をし夜逃げしている者も少なくない。

6.温州経営者の賭博、摘発

10/15、ネット情報。
・9/29、海南省公安局は、105名の賭博団を検挙。全員が温州人と判明。このうち30名は女性。この賭博場の経営者も温州人。
・今年、6月、上海市宝山公安局が、温州人経営の賭博場を摘発。客は温州人富豪の夫人や2代目が多かったという。1時間で1700万元負けた富豪夫人もおり、負けた場合、その場で民間高利貸しから借りることも少なくなかったという。
・国際賭博集団も、温州人に目を向けており、韓国の済州島、米国のラスベガスなどのカジノからの営業集客活動も活発に繰り広げられているという。

7.10/14、温家宝首相、広州交易会で輸出企業経営者と懇談

 10/14、温家宝首相は5年ぶりに広州交易会に出席し、輸出企業経営者たちと懇談し、欧米の不況で受注の大幅な減少が予想される中、経営者たちから事情を聴くとともに、自らの参加で交易会をてこ入れした。

なお、これに先立つ10/11、広州交易会のお膝元、東莞市では、靴メーカーが8月だけで65社の企業登記が抹消されたと発表。登記をしている企業はごく一部であるため、実際の倒産数はかなり多いとみられる。

8.鄂尓多斯(オルドス)市で不動産開発責任者が夜逃げ

 10月の国慶節連休中、鄂尓多斯市中富不動産開発有限公司の責任者であり最大株主のカク小軍が夜逃げ、2番手株主の王福金が自殺。この会社には借用証書が2000通、借金が2.6億元(約32億円)残されていた。鄂尓多斯市公安局は、カク小軍の行方を追うとともに、市内の他の夜逃げ予備軍の経営者の監視を強化することにした。

 鄂尓多斯市政府は、企業の債務返済能力を査定して、危機水準にある企業には適正な処置を行うと発表。また不法な貸出を行っている民間金融の指導を強化するという。ただし数日前にネットで流れた、民間金融への5000万元以上の融資者に対するチェックは行わないと言明。