小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2010年2月 


暴動情報検証 : 2010年2月 
23.MAR.10
 2月は旧正月の休みのせいか、暴動情報が少なかった。

 ただし、北京の「アーティスト村」で立ち退き騒動があり、日本人の芸術家が負傷するという事件があった。
 残念ながら、検証はできていないので、北京在住の方たちからの検証情報の発信を期待する。
 1、と2、は検証済み。3、と4、は未検証。※暴動評価基準は文末に掲示

1.2/22、広東省江門市新会区古井鎮長楽村で、騒音と汚染問題で住民と警察の衝突。 暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 2/22午後、江門市新会区古井鎮長楽村で、500人近い武装警察及び身分不詳の者たちと、村民500人が数時間にわたって衝突した。村民数十人が負傷。長楽村のすぐ側に採石場があり、村民はその騒音と汚染に悩まされ続けており、政府や採石会社に抗議をしていたが解決しないので、1/11から採石現場にテントを張り実力阻止行動に出ていた。2/22午後、採石場作業員と村民との間に騒ぎが起き、それをきっかけに武装警察500人が介入し、唐辛子水を放水したり、警察犬をけしかけたりしたので、村民は棒を持って対抗した。警察側には他地域からの身分不詳の者も加わっており、騒動は夜12時ごろまで続いた。なお採石場の持ち主から300万元の採掘費用を行政に支払っているという話だが、それを村民は受け取っていないという。

・実情 : 採石場と長楽村との間には、往復4車線の広い道路があるが、採石現場の振動で村の住居や学校、幼稚園などの建物にヒビが入るなどの被害が出ていた。また夜中の3時まで作業が続き、その爆破音で住民に健康被害も出ていた。1/11から村民が採石現場にテントを張り、実力阻止に出たところ、2/22午後、武装警察500人以上と暴力団風の男たちがテントを撤去しようとしたので、村民1300人が採石現場に駆けつけ、衝突した。村民10人以上が拘束中。


  まもなく閉鎖予定の採石現場


・事後 : 採石会社は騒動の責任を取った形で、操業を中止、採石現場の閉鎖を決定。
3/16時点では作業用の重機などはすでに現場にはなかった。


2.2/26、広東省東莞市大嶺山鎮の家具工場で、2000人のスト。  暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 2/26、東莞市大嶺山鎮にある台昇家具有限公司の工場で、2000人の従業員が賃金引上げを求めてストライキを実施した。ストライキに参加した労働者は、基本賃金の引き上げを770元から900元に要求。会社側は東莞市の最低賃金基準の調整後に見直すと回答している。

・実情 : 東莞市大嶺山鎮建設路にある台昇家具有限公司には、隣接している同じオーナーの企業:東莞台全木器廠と合計して、現在、3000人の従業員がいる。壮麗なオフィスと巨大な工場をもつ大企業。なお上海にはこれよりも大きな工場があるという。東莞の二工場の従業員2000人ほどが、2/26と27の両日、そのうちの2000人ほどが賃上げを要求してストライキを行った。会社側が4/01から給料を20%程度アップすると回答したので、収束。

従業員からの聞き取り調査によれば基本給は、2月末で760元とのこと。


   台昇家具有限公司:正門前


・事後 : 広東省政府は3/18、最低賃金の引き上げを4/01から実施と発表。それによれば東莞市は920元となり、約22%のアップとなる。なお、工場前のレストランの求人広告では、ウェイトレスを月給1000元で募集しており、これと比べれば台昇家具公司はかなりの賃金アップを迫られると思われる。


3.2/18、湖北省武漢市で、立ち退き拒否の住民死亡。  暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 2/18、武漢市の重機製造工場内のアパートが炎上し、1人が死亡、3人が重軽傷。同アパートは不動産業者から立ち退きを迫られていたが、補償金で折り合いがつかず、住民が引っ越しを拒否していたという。1か月ほど前、不動産業者が消火栓を破壊したことから、今回の火事は放火ではないかと見られている。原因究明中。


4.2/22未明、北京市郊外の「創意正陽芸術区」で、芸術家住人が武装暴力集団に襲撃される。
                                                       暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 2/22深夜2時ごろ、北京市郊外の「創意正陽芸術区」に、鉄パイプなどで武装した集団200人ほどがトラック2台とクレーン車3台で押しかけ、当直の日本人アーティストの岩間賢さんを含む芸術家住人を襲撃した。岩間さんは頭を殴られ重傷。警察がかけつけ制止したため、破壊襲撃活動は収束。公安当局は襲撃の疑いで18人を拘束。「創意正陽芸術区」は再開発の対象となっており、立ち退きをめぐるトラブルが発生していたという。芸術家グループは22日午後、市中心部の長安街でデモを行った。このデモは指導者が見事な采配を見せ、天安門広場まであと1〜2キロというところで解散した。デモがおおいに世間の耳目を集め、同時に当局との無益な衝突を避けたという点で、高く評価されているという。

☆この事件は、北京市で起きただけに、ネット上にも多くの情報が溢れているが、その真偽を判断するために、ぜひ北京市在住の諸氏からの検証情報を寄せていただきたいと願っているところである。

☆なお、北京のアーティスト村に関しては、麻生晴一郎氏がその著書、「反日、暴動、バブル」(光文社新書)の第2部でその成り立ちなどを含めて詳しく書いている。


≪私の暴動評価基準≫
暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし
暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む
暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動
暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動