小島正憲の凝視中国

チャイナ・インサイドウォッチ:2011年12月01日 & 上海あれこれ11月〜12月


チャイナ・インサイドウォッチ : 2011年12月01日 
01.DEC.11
 前回までのチャイナ・インサイドウォッチに、読者各位からさまざまな疑問や異論、反論が寄せられた。
 今回は、それらへの回答という形式で、中国のバブル経済の破綻を浮き彫りにしていきたいと思う。

1.疑問・異論・反論への回答

@小島正憲は、宮崎正弘氏や石平氏のような「中国崩壊論者」になったのか?

 宮崎正弘氏や石平氏のような保守派の論客は、最近の中国経済の変調を捉えて、「中国大崩壊」を合唱し、あたかも中国国家が破綻するかのように喧伝している。私はこれまでの拙論でも明らかにしてきたように、彼らの側に与する者ではない。私は、中国のバブル経済が崩壊しても、中国国家が大崩壊することはないと考えている。また大崩壊させてはならないと考えている。これらについては、日経ビジネス:「中国ビジネス 2012」の拙論を参照していただきたい。

 私は、チャイナウォッチャーを職業としているわけではない。中国に幾多の工場を持つ一介の中小企業経営者として、中国経済の激変の中で生きている。情勢を読み違えれば大損をするし、うまく当たれば大儲けできる。つまり私の情報への感度が自企業の生死を決するわけである。また私は中小企業家同友会上海倶楽部の代表を務めている。その立場から、会員各位にもっとも有益な情報を、素早く提供する責務を負っている。したがって私は、命がけで情報を集めている。しかも場合によっては、自企業に多大な損害が及ぶことを覚悟の上で、収集した情報を発信している。

 私は中小企業経営者として、日本の労働者を搾取して生きてきたことに、自省の念を強く抱いている。また中国に企業進出し中国人民を収奪して金を儲けたこと、私たちの先輩が中国に多大な損害を与えたのに、個人としてそれを償っていないこと、などなど、私は中国にまだまだ恩返ししなければならないことが多いと思っている。バブル経済崩壊の波が中国を襲うことが、現実的になっている今、私は中国の人民といっしょになって、中国の行く末を考え抜くつもりである。もちろん閉塞した日本国についても、必ずそれを打破し、若者たちが希望を持って生きていくことができる社会に造り変え、1000兆円に及ぶ借金も、それを作ったわれわれ団塊の世代が、解決して死んで行くつもりである。

Aかつて「中国崩壊論」を叫んだ者は、懺悔すべきなのではないか?

 「この20年間、“中国崩壊論”は繰り返し叫ばれてきた。しかし中国は崩壊するどころか、今や超大国に成長してきた。かつて“中国崩壊論”を叫んでいた論者は、この際、はっきりとその誤りを認め、懺悔すべきである。彼らは自省の念を持たず、またぞろ“中国崩壊論”をわめきたて、愚行を繰り返している」という反論もあった。

 私は香港返還時、この種の“中国崩壊論”をまともに信じて、リスク分散のためミャンマーに工場進出し、結果として大損をして中国に戻った。私は一時期、それらの論者を恨んだ。しかし中小企業経営者の決断はすべて自己責任である。だれにもその責を問うことはできない。したがってそれ以来、もっとも大事なことは、自らが確実な情報を掴み、独自に情勢分析を行うことだと考えたのである。また私は、中国情勢に関する限り、現場に密着した情報の集積がきわめて重要であると考えた。現場を動き回り、人脈とカンを頼りに、情報を検証することが絶対に必要であるとも思う。

 私はそのようにして集積した情報を、読者各位に無料で配信している。この私の情報を誰がどのように利用するかは、関知しない。それは利用者の自己責任である。ただし私は、中国のバブル経済が来年中に崩壊しなかった場合は、潔く誤りを認め、筆を折ることに決心している。それだけの覚悟で情報発信に臨んでいる。

 逆に情報発信を生業としている人や、公的機関に所属している人で、中国がこのまま成長すると予測し、そのような情報を発信している人たちは、もしバブル経済が崩壊したら、道義上、責任を取るべきだと思う。その場合は潔く職を辞す覚悟で、情報発信に臨んでもらいたいものである。

 タイ大洪水に関して、多くの日本企業をあの場所に誘致した日本の公的組織の関係者や、民間コンサルタントたちはまったく責任を感じていないのだろうか。今また、中国では湖北省武漢市に日本の主要企業が、日本の公的機関や銀行、コンサルタント会社らの誘いに乗って、こぞって進出しようとしている。たしかに武漢市は中国の要の位置にあり、今後の大発展が期待できる都市である。私は進出大歓迎である。しかし武漢市は揚子江に接しており、新規の工業団地などはかつての遊水池に立地しており、洪水に見舞われる危険の可能性がある場所である。ここに進出してくる日本企業は、せめて工場を2階建てにして、主要な設備は階上に置くべきである。これが20年前から、武漢近辺で仕事を続けている私の現場発信情報である。なにしろ15年ほど前、上流の堤防を切って、武漢市を洪水から守ったこともあるほどである。

B些細な情勢の変化でバブル崩壊と騒ぐべきではない、8%成長を続ける限り中国は安泰である。

 2003年夏、私は珠江デルタ地域で起きた人手不足情報に接して、中国経済の異常を察知した。そのとき武漢や上海にある私の工場の現場でも人手不足現象が浮上し始めていたからである。私はこの奇怪な現象について、多くの人に情報発信したが、当初はほとんどの人から笑いものにされた。その後、私は独自に中国全土の店頭求人広告ウォッチを行い、人手不足現象を立証した。今では、「中国には労働者が潤沢に存在している」などと寝ぼけたことを言う人は居なくなった。しかしこの人手不足現象の原因について、現在に至るも、だれも明快な解析を行い得ないでいる。

 2007年末、私は新労働契約法の施行に当たって、これを施行すれば多くの労働集約型外資企業は中国から撤退し、これが「“中国は世界の工場”の晩鐘」になると警告を強く発した。そしてその兆候を列挙した。案の定、2008年旧正月明けに、派手な韓国企業の夜逃げが始まり、外資の撤退は中国経済の屋台骨を揺さぶるほどになった。2008年5〜7月にかけて、胡錦濤政権は予想通り方針転換を図った。それでも現在、労働集約型外資の多くは中国から姿を消した。

 今まで私は、些細な情報に着目し、それを時間の流れに沿って整理しなおすことによって、大きな流れの方向を掴むことに成功してきた。もちろん上記以外にも、私の予測はかなりの確率で当たっている。この方法で現在の中国経済を見た場合、私は「バブル経済が崩壊する」という結論に到達せざるを得ないのである。

 私は日本のバブル経済の崩壊経験者の一人として、中国のマンションの価格は、今年の8月時点が天井のような気がしていた。そこで投機目的でマンションを保有している人には、売ることを強くすすめた。しかしほとんどの人は、私の意見を無視し、値上がりに期待をつないだ。そのころ読者各位にもその旨の情報を発信しておいた。マンション価格は9月後半から、少しずつ下がり始め、11月後半になって上海市内では約10〜20%下落した。私は多くの不動産屋の店頭を回り、直接、値段交渉をし、これを検証した。郊外では30%以上下がっている物件もある。11月の最終になって、多くの人がマンションの売り出しに回った。現在、店頭では売り手が殺到し、買い手がほとんどいないという状態である。私のアドバイスを聞いて8月ごろにマンションを売った人は、かなり儲けただろう。逆に持ち続けた人は、売るにも売れない状況になっている。もちろん全国的にも、マンション価格の下落のニュースが相次いでいる。現在のマンション価格の下落が、来年、やがて暴落となり、経済活動に大きな変調を来すことはもはや明白である。

 中国の安定のためには、「8%の経済成長が必要である(保八)」という政府の発言についても、それはきわめて疑わしいと、私は考えている。なぜならば、「8%以下になると失業者が増える」ということが、その論拠になっているが、現状の中国ではまだ人手不足が進行しており、おそらく「8%以下になっても失業者は増えない」からである。つまり政府の政策担当者も学者も、海外のチャイナウォッチャーも、だれも中国の人手不足の真因を掴んでおらず、保八というお題目だけが一人歩きしているからである。つまり保八そのものが、無意味な数字なのである。

C中国でバブル化しているのは、マンションだけで、土地はバブル化していないという根拠は何か?

 中国で現在進行しているのは、マンションバブルであって、不動産バブルではない。不動産という言葉は、「土地とその上に立っている建物」を指す。したがって不動産バブルというのは、マンションも土地も同時にバブル化している状態を言う。現在の中国は、マンションとそれが建つ住宅用地はバブル化しているが、商業用地や工業用地、農業用地はバブル化していない。私の企業が所有している中国各地の工業用地も2か月ほど前までは、あまり値動きがなかった。また土地(使用権)はマンションのように、個人が自由に売買できるものではない。つまり日本のバブル時代のように一般市民が猫も杓子も、土地やマンション買いに狂奔するという事態は発生していない。たしかに住宅用地は開発業者間の入札もあり、かなり高騰しており、統計数字も明らかとなっているが、その他の用地は売買価格の統計数値は発表されていない。私は実際に、自企業で工業用地の購入、開発、譲渡を数度行ってみたが、かなり難しく、素人が簡単に「土地転がし」ができるというものではなかった。まさにこれだけで1冊の本が書けるぐらいのドラマがあったし、私は弁護士ができるぐらい勉強をしたものだ。

 これらのことはきわめて重要な意味を持っている。なぜならバブルの崩壊の性格を規定するからである。日本のバブル崩壊は、土地・マンション・株の3点セットの同時崩壊であった。またそれに付随したゴルフの会員権・骨董品・絵画などを含む総合的なものであり、日本経済に深刻な打撃を与えた。米国のサブプライムショックは、主に住宅バブルの崩壊であり、影響は大きかったが、米国市民が暴動を起こすことはなかった。あのとき私は拙論で明らかにしておいたが、サブプライムショックで直接大きな被害を受けたのは、銀行に口座を持てる中間層であり、口座すら持てないような貧困層にはまったく影響がなかったからである。

 このような視点から中国のバブル経済を見てみると、その崩壊の状況を予測することが可能となる。現在、中国では株はバブル化していない。数年前に暴騰、急落し、今では高値から1/3ほどのところでウロウロしている。また上述のように土地一般はバブル化していない。つまり中国でバブル化しているのは、マンションのみである。しかもそのマンションも購入しているのは富裕層である。したがってバブルが崩壊した場合、もっとも大きな打撃を受けるのは、富裕層であり、貧困層ではなく、そこでは暴動は起きない。数年前、株が崩壊したときも暴動は起きなかったし、自殺者すらいなかった。しかし今回は、金融機関の被害は甚大なものとなり、中国経済に与える影響はきわめて大きいものとなるだろう。

 2か月ほど前から、にわかに工業用地の価格が上昇してきた。マンション価格の下落を感じ取った商売人たちが、それを売って工業用地の取得に向かっているのではないだろうか。しかしこれは多くのマンション保有者ができる芸当ではないし、中国経済の下落と共に工業用地需要も減り、価格は下がる。したがって工業用地の価格が上昇し、買い手がある今が、売り時である。

D中国における外資の影響力は、それほど大きくないのではないか?

 「中国政府への外資の影響力はそれほど大きくはない」という反論もあった。たしかに表面的には、その通りである。しかし中国政府が現在、もっとも恐れているのは外資の総撤退である、と私は考えている。中国はケ小平の改革開放以来、近年まで、外資に「安価な労働力と土地を売る」ことによって、高度経済成長を成し遂げてきた。しかしながらその「打ち出の小槌」も打ち尽くしてしまった。その結果、労働集約型外資はさっさと中国から退散した。そこで大慌てで、「中国は世界の市場」の大演出を行い、同時に産業構造の高度化を呼び声にして、新たなる外資を呼び寄せようとしているのが、現状である。もし中国政府の目論見通りに新規の外資が流入しなければ、中国経済は危機に瀕する。つまり現在の中国では、反日も含めて大がかりな外資排斥運動は起こり得ない。

 従来から私は、中国の貿易黒字の過半は外資が稼ぎ出したものであり、それを外資がいっせいに国外に持ち出す時期があることを想定しておくべきだと指摘してきた。現在はその黒字分は人民元に交換され、国内で流通している。政府が買い上げた外貨は、外貨準備として蓄積されている。しかしもし外資が合法的な手段を駆使して、手持ちの人民元を外貨に換え、国外に持ち出そうとした場合、中国政府はそれを拒否することはできない。私は、マンションバブルの崩壊に伴う中国市場の幻想への幻滅が、外資の総撤退の引き金となると見ている。そうなると、韓国のIMF危機の再現になると思っている。

E中国は「走出去」政策により、外国に大量の資金を投下しており、流入外資のみを問題視すべきではない。

 私の「中国への流入外資は、無償の資金援助のようなもの」という主張に対して、「中国は“走出去”政策により、外国に大量の資金を投下しており、流入外資のみを問題視すべきではない」という反論があった。たしかに現在、中国は国外への資金投下を積極的に行っているし、対外資産負債残高から見れば黒字である。つまり債権国である。現在、膨大な外貨準備?を背景に、政府も国有企業も民間企業も、「走出去」政策を利用して国外への投資に熱を上げている。しかしながら中国の「走出去」政策は誤りであり、中国は国外への投資を行うのではなく、その資金を民生の向上などに使用すべきであると、私は考えている。

 「走出去」政策については、人民元高対策であると言われているが、これは本末転倒した考えである。人民元高に対する正攻法は、資本や為替の自由化である。これを回避して、「走出去」政策で人民元高に対抗しようとするのは、邪道である。次に資源・エネルギー確保のため、「走出去」政策を利用して、国外に大量の資金を持ち出しているが、これも本末転倒している。現在、中国に必要なことは、政府が国内の資源・エネルギーなどで自給できるように、人民に節約を訴え、臥薪嘗胆の生活を提起することである。さらに政府は、国外の最先端技術を獲得するために、企業買収に資金を投下し、喫緊の課題である産業構造の転換を成し遂げようとしているが、これまた邪道である。産業構造の転換は他力依存では不可能であり、自力更生でなくては確立することはできないからである。「走出去」政策については、裏の目的があると考えるべきである。

 世界第2位の経済大国であり、目下、日の出の勢いの中国から、政府高官・経営者・富裕層などが、先進資本主義国に続々と移民している。この現象はきわめて異常である。最近、先進各国は投資移民などを受け入れることに積極的である。これは「走出去」政策と無関係ではない。

F中国は貿易黒字続行中であり、今後も経済発展は揺るがない。

 「中国は貿易黒字が続行中であり、今後の経済発展は揺るがない」という反論もあった。たしかに中国の貿易黒字はまだまだ維持されており、たちどころに赤字に転落するという状況ではない。しかしながら欧米の経済不況により、受注が減少していることは事実であり、欧米向け船舶の減便などは、それを裏付けている。最近の情報では、この欧米向けの輸出の減少を、東南アジア向け輸出の増大で補っているという。これを単純に受け止めれば、引き続き貿易は黒字傾向で推移すると考えられるが、私はこれには疑問符を付ける。東南アジア諸国への輸出貨物の中身の検討が必要である。昨年中に労働集約型外資は、中国からほとんど東南アジアに逃げ出した。しかしながらその資材や中間材はまだ中国で生産されている。それが中国から東南アジアに輸出され、その地で組み立てられ、欧米各国に輸出されているのではないか。その結果、中国から東南アジア諸国への輸出額が伸びているのではないか。やがてそれらの資材や中間財の生産工場も東南アジア諸国に移転する。中国が貿易赤字に陥る日は近づいている。

 「それでも中国は先進資本主義各国と比して、財政は健全である」と主張する論者もいる。私はこの論を否定するつもりはない。しかしながら中央財政は赤字であり、土地売却収入に過半を依存していた地方財政はその減少を補うために地方債の発行を始めた。つまり今後は中国も、先進資本主義各国と同じ借金大国への道を歩むことになり、そのスピードは想定外のものとなるだろう。現在の中国が、先進資本主義各国と比べて財政が健全であるという主張は、「目糞が鼻糞を笑う」類の話であり、「“共に川に向かって走るネズミ”が速さを競っている」のを褒め称えているようなものである。企業でも国家でも、無借金経営が原則である。せめて中国には、襟を正して、健全経営財政に戻ってもらいたいと思う。しかしそれは、ケ小平の改革開放以前に遡る道かもしれない。

 温州商人の夜逃げについて、「あれは一地方の現象であり、それで中国全土を推し量るのは誤りである」という反論もあった。私はある超巨大民間インフォーマル組織に着目し、中国全土を歩き回って見てきた。そして、「中国ではインフォーマル金融が全盛である」という結論を出している。今回の温州商人の夜逃げで明らかになった事象は、その一端である。私は一地方の現象を見て、全局を推測しているわけではない。政府高官・経営者・富裕層の多くが、このインフォール金融に関与していることは、中国では今や常識である。現在、もっとも危惧されるのは、マンションバブルの崩壊をきっかけにして、このインフォーマル金融の破綻の連鎖が起きることである。

2.中国社会・経済の最近の動向

@不動産の状況

・11/15、広東省広州市の国土住宅資源管理局は、18日に予定していた天河区など7か所の土地の競売を中止すると発表。不動産市場が低迷しており、落札や入札ゼロの可能性があるためとしている。広州市の今年度の土地競売による目標収入額は646億5000万元に。しかし9月21日までの同収入は206億600万元で、目標額の32%にとどまっているという。

・11/18,国家統計局発表。10月の中国住宅価格は下落都市が大幅増。地方政府が住宅価格抑制策を相次ぎ打ち出し、取引が急減している。価格は高止まりの傾向が続いてきたが、販売低迷で在庫圧力が高まり、開発業者の資金繰りが悪化。本格的な価格下落局面に入ってきた。開発業者の値下げ競争が加速すれば、不動産バブルがはじけるとの懸念も根強い。

・米格付け会社ムーディーズのアナリスト、チェン氏は、中国の不動産バブルの崩壊は予想より早く始まったという見解を示し、「北京の100uの住宅の一般価格とエリートサラリーマンの家庭収入の昨年の倍率を算出したところ、市中心部では40倍、郊外エリアでは25倍に達している。米国の不動産バブル崩壊のとき、倍率がもっとも高いサンフランシスコとニューヨークでもせいぜい約10倍だった。これは現実的にありえないこと」と語っている。

・11/21、新聞報道によれば、中国の沿海部を中心に住宅の値下げ販売に踏み切った開発業者に対し、購入済みのオーナーが集団で抗議し、両者が衝突する事件が相次いでいる。

・11/23、北京では不動産市場の低迷が続く中、半額セールに踏み切る物件が出現した。関係者は、「最近、10〜20%の値下げは見られるが、50%の値下げは珍しい。資金繰りに行き詰まっている業者の投げ売りが始まったのだろう」と話している。

・11/23、10月の広州市の住宅販売面積は7割減。過去5年で最大の落ち込み。不動産抑制策のあおりを受け、広州南駅周辺の開発用地や天河区などの宅地計32区画の入札が流会。

・11/24、新聞報道によれば、青島市で不動産仲介業者の倒産が相次いでいる。

・11/25、内モンゴル自治区鄂尓多斯市の鬼城、バブル崩壊。ネット情報によれば、鄂尓多斯のマンション価格は平均で40%ほど値下がりし、1u=10,000元の物件が6,000元台になっているという。はなはだしいものは70%ダウン。関係者は、「もともと鄂尓多斯のマンション投資は民間金融を利用したものが多かった。それが最近の民間金融危機によって、資金が続かなくなり、投げ売りになっている」と語っている。

・浙江省の統計によると、1〜10月の省内の不動産販売面積は前年対比20%減、販売高は13%減。

・上海の高級住宅成約数、11月は27%減。1〜10月の不動産販売面積は14%減。

・11/28、新聞報道によれば、広州市国土資源・住宅管理局の黄文波副局長は来年の同市の住宅市場について、「価格は下がり、売買契約は減る」との見方を示した。

・深セン市の大手不動産開発大手、深セン緑景地産は来月販売する物件について、3年後に販売価格で買い戻す制度を導入すると発表。政府の不動産抑制策を受けて物件販売が落ちこんでおり、値下げして販売すると以前に高値で購入した人たちから抗議が殺到するので、苦肉の策。

・11/29、新聞報道によれば、不動産仲介大手の易居(上海市)は、21世紀中国不動産(北京市)を買収する方針を発表。当局の住宅価格政抑制策を受けた市場低迷により、両社の取引は急減し業績も悪化している。業界内ではこれをきっかけに仲介業者の再編が加速するとの見方が出ている。

・北京市では不動産仲介業者の店舗閉鎖が相次いでいる。不動産仲介業者によると、10月に閉鎖した中古住宅を扱う仲介業者の市内店舗は177店に及び、今年10か月間の累計では約1000店に上った。今後も閉鎖ラッシュが続く可能性が高い。

・11/29、新聞報道によれば、上海市の分譲住宅の在庫が過去最高に積み上がり、このままの状況では、1〜10月の販売ペースで換算して、消化するのに16か月を要すという。

A財政・金融状況

・中国メディアによれば、銀行の不動産向け隠れ融資(他の名目で借りて、実際には不動産に投資された融資)は、最低でも20兆元(240兆円)規模に膨らんでおり、不動産関連業者は「不動産価格が4割も5割も下落すれば、現金化が難しい担保不動産を大量に抱えた中小の銀行がつぶれることは、米国の例をみても明らかだ」と語っているという。

・11/15、IMFは、中国の金融システムの安定性評価書を初公表。IMFは、金融システムか健全と評価した上で、高貯蓄や豊富な流動性をもたらす経済構造が、不適切な資本配分や不動産などのバブルの危険性を招いていると警告。与信の急拡大と質の悪化、ヤミ金融市場や簿外債務の拡大、不動産価格の下落や世界経済の不安定さなどをリスクとして挙げた。IMFはまた、大手17銀行を対象にストレステストを実施し、大半が資産価格急落や、金利、為替相場の変動といったリスクへの対処能力を備えていることを確認した。しかしIMFは、同時に複数のリスクに直面すれば、銀行システムは深刻な打撃を受ける恐れがあるとしている。

・11/15、民生銀行、上海浦東発展銀行、興業銀行の3行による中小企業向け融資のための人民元建て金融債、計1100億元(1兆3530億円)が発行される見通しとなった。中小企業の顧客の資金圧力を緩和するため、1件当たり500万元以下の融資を行う予定。

・中国政府の地方債試験的発行の決定に伴い、下記の4市が地方債発行。

11/15、上海市は71億元の地方債発行。入札で決まった利息は3年物で3.10%、5年物が3.3%

11/18、広東省は69億元の地方債発行。今年の債券引受会社は中国建設、中国工商銀行など金融機関18社。

11/21、浙江省は67億元の地方債発行。11/28、深セン市は22億元の地方債発行。

・11/18、中国社会科学院経済研究所の張暁晶主任は、中国の政府債務規模はGDP比50%程度との試算を明らかにした。ただ政府系企業の負債も含めると60〜80%に膨らむという。

・11/21、中国人民銀行は10月末時点の外国為替資金残高が25兆4869億3100元(約313兆5000億円)と、9月末から約249億元減ったと発表。前月比で減少したのは4年ぶり。金融引き締め策で資金の流動性が低下していることを示すほか、欧州の債務危機などで海外投機マネーが中国から資金引き上げを図り始めたことが影響しているとする見方もある。また中国が人民元相場下支えのため、4年ぶりに外貨を売却した可能性があるとの指摘もある。

・11/22、中国鉄道省は11/22の鉄道債発行分で、来年4月までの発行枠(1000億元)を使い切った。依然として資金繰り難が続き、工事停止に追い込まれている路線の再開は難しい状況。鉄道債の発行残高は5000億元(約6兆円)近くに達し、支払利息だけで毎年200億元に上る。

・11/15、中国の国家発展改革委員会の張暁強副主任は、2010年度における中国の対外直接投資は3000億米ドル(約23兆円)を突破して、世界第5位になったと明らかにした。そのうち鉱業、エネルギー、金融、製造業が90%。

・11/23、国家工商行政管理総局は、債務の株式化の登記・管理規則を発表。債権者と債務者である会社が合意すれば、会社は借入金を返済する代わりに、債権者に株式を発行できるなどとした。周伯華局長は、「中小企業の資金難を緩和したい」と話している。

・11/08、中国紙は、珠江デルタ地区の民間融資が数百億元規模になっていると報じている。広州の中小企業経営者たちは、「企業が民間金融やヤミ金融に頼るのは、もはや普通のこと」と語っている。

・11/28、広東省会計検査庁は、同省の2010年末の債務残高が7502億9600万元(約9兆2000億円)以上に達したと発表。

・11/30、中国人民銀行は預金準備率を12/05から、0.5%引き下げると発表。

B一般経済

・11/14、広東省の朱小丹省長代理は記者会見で、同省の輸出が第3四半期から欧州債務危機で大きな影響を受けており、その厳しさは「08年のリーマンショック時並みだ」と語った。

・11/16、中国商務省の沈丹陽報道官は記者会見で、「中国企業はまだ、コスト上昇圧力など多くの重圧に直面し、保護貿易主義や貿易摩擦も高まっている」とした上で、「今後一定期間、輸出環境は楽観できない」と語った。

・11/24、中国紙は、中国の建設機械メーカーの販売が、第4四半期に大幅なマイナスに落ちこむ可能性が出てきたと報じた。鉄道投資の遅延・減少に加え道路投資も減速し、需要が急減。さらに欧州の債務危機などを背景に輸出の伸びにも陰りが出ている。業界内の各社は、ここ数年で急速に生産能力を拡大しており、過剰な供給能力を背景とした価格競争の激化により、販売台数の減少を上回るペースで業績悪化が進むという予想も出ている。

・11/22、中国紙は、コンテナ貨物の減少を受け、中国の海運会社が米国路線の運航を相次いで停止していると報じている。米国側も中国に向かう輸送能力を削減している。上海の専門家は、金融危機に伴い世界の海上輸送の主要路線11本が削減された2008年末から09年の初頭を上回る厳しさと語っている。

・11/22、中国紙は、広州市の中高級レストランの売り上げが、前年同期の1/3に減っていると報じている。ある大手レストランの責任者は、「2008年の金融危機発生時よりさらに悪い」と語っている。

・11/22、中国紙は、中国本土の巨大な消費市場を狙い、店舗展開を加速した香港の小売企業が軒並み業績不振に陥っていると報じている。市場関係者は、「本土での小売業は、店舗賃貸料、人件費、在庫コストがいずれも上昇している上、同業との競争が激しく、特定ブランドが突出するのは難しい状況だ」と分析している。

・11/22、日経新聞報道。中国の新車市場が「低成長期」に入りそうだ。政府の購入補助策の効果で年率40%前後の伸びを見せた過去2年から一転、今年は3%増程度に減速。来年も1ケタ成長にとどまるとの見方が多い。

・11月、日経新聞報道。中国製造業が相次いで生産調整に乗り出した。鉄鋼大手が高炉の操業を休止、石油化学大手はエチレンの減産を始めた。欧州の債務危機や米経済の不振で輸出の伸びが鈍っているほか、10月の自動車販売が5か月ぶりに前年同月比マイナスに転じるなど国内需要の減速も目立つ。今冬には深刻な電力不足も発生する見通しで景気の先行きに不安が膨らむ。中国経済が減速する中、エネルギー不足がさらに下押しする恐れがある。

・造船大国の中国の1〜10月の受注は、ほぼ半減。

・12/01、中国物流購買連合会は、11月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は前月比1.4ポイント低下、49.0となり、2年9か月ぶりに50を割ったと発表。

C夜逃げ情報

・温州の「夜逃げ」ブームは一段落か? 11/05、温州市政府は、銀行に対し中小企業への貸し渋りや取り立ての中止を要請したり、民間金融の金利を銀行の4倍に制限するなどの措置を取った結果、「夜逃げ」ブームが下火になったと発表。一方で市政府は、「緊縮政策は変わっていないため、中小企業は依然として資金難である」としている。

・11/11、温州市オウ海区老人マンション“芙蓉山荘”の経営者が失踪。負債は1.07億元。

・11/12、浙江麦浪実業有限公司の経営者の周小龍が3億元を持って、夜逃げ。被害者50人が連名で警察に訴え。

・11/12、浙江省湖州市の投資会社の経営者、10数億元の債務を残したまま夜逃げ。

・11/18、江蘇省蘇州市の経営者の池万明は、35億元の負債を残したまま、9月にルーマニアに逃亡、その後、政府の勧告を受け帰国したが、10月下旬に再度失踪。

D高飛び・移民情報

・11/04、河南省中央備蓄直轄倉庫の元主任で周口市の全人代の代表を勤めたこともある喬建軍が、1億元を上回る公金を持って、海外へ逃亡。

・11/10、米国政府は中国からの入国ビザ発給申請が激増していることを受け、中国に駐在する大使館・領事館職員を50人増員することを決定。

・11/20、中国から米国への投資移民が急増。今年の米国への中国人の投資永住権申請者は2969人に上り、全体の3/4に当たるという。この数は2007年度の10倍に当たる。申請者の急増の主な要因は、富裕層の拡大にあり、1億元以上の資産を持つ富裕層のうち、約40%が米国への移住を希望しているという。

・10月、50万ドル以上の住宅を現金で購入した外国人にビザを発給するという法律が、米国議会を通った。

・韓国済州島当局は、このほど中国人400人の投資移民を受け入れた。

Eストライキなど

・10/06、福建省厦門市で、タクシースト。タクシー運転手はノルマを軽くすることを要求。当日は、厦門市のタクシーの8割が参加。ストに参加しない車輌を破壊する事件が発生。

・10/17、広東省深?市の冠星精密の工場で、従業員2000人がスト。この工場ではシチズン腕時計の部品を製造。従業員側は労働環境の改善を要求。21日には、従業員と日本人管理者との間でトラブル、従業員が負傷との報道。デモ隊が工場の窓ガラスを割ったりし、暴れた際に負傷したとも言われている。会社側の給与システムを成果給から時間給への変更決定に不服。休憩時間の変更に伴う給与減に抗議。

・10/17〜26、浙江省杭州市の旧「杭州西湖ビール」の工場従業員全員がスト。労働条件の改善を要求。同工場からは、今年8月、アサヒビールが撤退。

・11/02、広東省東莞市の興昂靴工場で、従業員と会社幹部が衝突。従業員300人が職場放棄。靴工場の閉鎖に伴い、従業員が他の工場への転職に伴う勤続手当の消失に対する補償を要求。

・11/07朝、上海市楊浦区の上海交通大学医学附属新華病院で、清掃や配膳、患者の搬送などを担当する派遣労働者500人余が待遇改善を求めてスト。高温手当、残業代、休暇の取得などを要求。

・11/14、ペプシコの中国工場でスト。ペプシコの中国工場は24か所、従業員は2万人。このうち少なくとも重慶、成都、南昌、福州、長沙の5工場の従業員が横断幕を掲げスト突入。台湾系の食品大手康師傳がペプシコ工場を買収することが発表されたことを受け、雇用の継続や転籍補償を要求。

・11/17、深セン市で、女性下着のトップメーカーの工場の従業員500名がスト突入。23日にほぼ収束。残業代の支払いについての不満が溜まっており、従業員の一人が自殺したことがきっかけになった模様。

・11/22、深セン市で、台湾系のパソコン部品工場で従業員3000人のうち、1000人がスト。


上海あれこれ : 2011年11〜12月中旬
13.DEC.11
1.上海に「梅屋庄吉像」登場

 

 11/04、上海市の中心部の紹興公園に、中国の辛亥革命を指導した孫文を物心両面で支えた長崎県出身の実業家「梅屋庄吉(1808〜1934年)」の銅像がお目見えした。銅像は、長崎県が辛亥革命100周年と、長崎・上海の友好都市関係樹立15周年を記念して寄贈し、梅屋や孫文が居住していた近所の、紹興公園に建てられた。

紹興公園は市内中心部にあり、小さな公園であった。梅屋像以外には、なにも記念像のようなものはなく、老人や子供の遊びになっていた。また簡単な運動器具なども設置されており、運動に汗を流している人もいた。子供たちが梅屋像によじ登って遊んでいたが、側にいた母親らしき人も含めて、だれも咎める人はいなかった。

2.12/04、「東レ杯上海マラソン」開催

 12/04の朝7時半、外?の陳毅像前から、多くのマラソンランナーが走り出した。今年の参加人数は昨年の22000人から26000人と増え、全員がスタートし終わるまで、17分かかった。外国人は5250人ほどとなっており、結構、その姿が目立っていた。東レ杯であったせいか、かなり警備員も多いような気がした。今年は優勝賞金も25000ドルから45000ドルへアップされ、多くの若者たちが、朝の寒さを熱気で吹き飛ばすように走り出し、多数の応援者も旗を振ったり、大きな声援をおくったりしていた。

 

3.上海市内の百貨店が年末セールに突入

 12/02から始まった上海市内の百貨店の年末バーゲンセールに、多くの客が殺到し、一部店舗では大混乱した。ことに「巴黎春天:五角場店」では、2〜4日にかけて2夜連続48時間営業で大割引セールを行った。店内の商品の多くは、7割引に近く、入り口にお客が殺到し警備員を押し倒すなどの騒ぎとなった。市内の多くの百貨店も、急拡大するインターネット販売の年末セールに対抗し、例年より早く年末商戦に突入したという。私が12/09に「巴黎春天」に行ったときでも、「199元以上買い上げたお客さんには100元の値引きをします」という割引セールを行っており、店内は結構、賑わっていた。

 
       巴黎春天:五角場店 

4.上海「久光百貨」で防犯BGM

 歳末商戦たけなわの上海市の「久光百貨」では、店内のBGMを利用した防犯対策を講じて、効果をあげているという。同対策は、セキュリティ部門が見覚えのある窃盗・万引き犯などが入店した場合、通常のBGMよりテンポの速い音楽を流し、店員に緊張感を与え、よりいっそうの注意を促すもの。その他、雨が降ってきたときには、水がしたたり落ちる音楽を流したりして、店員からお客さんに伝えるようにしているという。

私が「久光百貨」に入ってBGMを聞いたときは、普通の音楽のようだったので、店員にたずねてみると、「現在は普通の音楽です。ときおりテンポが速いBGMが流れてくるので、そのときは緊張します」と話してくれた。

5.閑古鳥が鳴く上海市内の不動産屋

 この数日、私の携帯電話に、しきりに不動産仲介業者から、マンション購入の勧誘のメールや電話がかかってくる。それは物件の2割ダウンで話が始まり、まだ交渉可能だという。それでもまだ物件売却希望者が多く、購入客はほとんどなく、不動産屋の店頭では閑古鳥が鳴いている状況である。中には店を閉めてしまった業者もある。

最近の民間保険業者の調査によると、中国の富裕層の住宅保有数は平均3.3軒であることがわかった。つまりこの富裕層がマンションを買い占めており、バブル状況を作り出しているのであり、バブル崩壊でもっとも痛手を被る層である。市外の物件にも買い手がなく、ほとんど動きがない模様。

 
   市内の閉鎖された不動産屋    

6.上海万博跡地の「上海国際カーニバル」閉園

11/30、上海万博跡地で開催されていた移動式遊園地「上海国際カーニバル(上海国際嘉年華)」が、7/28から95日間の営業を終え、閉園した。多くのアトラクションが楽しめるというふれこみだったが、当局の安全検査が遅れ稼働できなかったり、地下鉄から15分ほど離れていたため、来場客が66万人にとどまり、閉鎖という結果になった。サービスも不評だったようだ。

 
 現在、万博跡地は建物の取り壊し中であり、大型トラックが行き交っている。

7.エレベーターのメンテナンス

ケ小平の「南巡講話」以降、すでに20年が経過した。その間に上海は大発展し、今や市内のいたるところに高層ビルやマンションが林立している。その景観は、見る者を畏怖させるほどである。しかしながらこの急発展の陰で、最近、問題点が多く浮かび上がってきている。その一つが、エレベーターの老朽化問題である。上海市内に設置されているエレベーターのうち、1/4が今後5年以内に、15年の使用期限を越えるといのである。現在でもエレベーターの事故は相次いでおり、今後、急増していくものと思われる。

もともとエレベーターやエスカレーターは、専門業者の保守メンテナンス作業が不可欠であり、そこにかなりの費用が発生するのは、先進各国では常識となっている。しかし中国では、ビル管理会社はエレベーターの保守に責任を持つ意識が希薄であり、メンテナンス会社は急増するエレベーター需要に追いつくメンテナンス体制を整えていない。またメンテナンスができる熟練工も不足している。当局は、メンテナンス企業の設立認可をより厳格にするなどの対策を取るとしている。

重慶市でも、最近、エレベーター事故が多発している。今年は11月末までの時点で2392件、1日約7回の事故が起きている。市内のエレベーターの台数は約46000台で、毎年2割ずつ増えており、使用年数が10年以上の老朽化したエレベーターが約1800台あるという。

今後、このような急成長のヒズミは、インフラを含めて中国全土の随所であらわれ、それに対する費用が莫大なものとなり、これが中国の経済成長の足かせになる可能性もある。


8.ニセ宅配業者事件

上海市警察は、インターネット通販の着払い顧客情報を不正に入手し、上海や北京などの中国各地で宅配業者を装って、一足先に別の商品を届けて金を騙し取っていた詐欺グループを摘発した。

このところ中国では、無認可の宅配業者が激増しており、そのうちの悪質な部分が摘発された模様。一説では、無認可の宅配業者(モグリ業者)は、正規営業者と同数ほど存在しているという。それらの大半は、問題を起こさず営業を展開している。宅配を委託する業者も、モグリ業者の方が、料金が安いためそれを有効活用している。

今回はモグリ宅配業者が問題となったが、中国では、なにか事件が起きるたびに、その背景としてモグリ業者問題が浮上してくる。驚いたことに、最近、北京では警備会社のモグリ業者が大量にはびこってきているという。数日前の日本のメディアでも、四川省で白タク運転手が取り締まり中の警官を、ボンネットに乗せたまま暴走したということが報道されていたが、この白タクも中国全土に相当数はびこっているモグリ業者の類である。


9.スクールバス、一斉検査

 11/17、上海市教育委員会は市内の通園、通学バスに対し、定員超過で運行していないかなどを一斉調査するように各区県に緊急通知した。このところ中国では、幼稚園の送迎バスなどの事故が相次ぎ、極端な定員超過で走行している場合が多いことが発覚、問題視されている。しかもこのような問題が噴出しているときに、中国政府がマケドニアに通学バス23台を無償援助したため、ネット上では批判が数十万件に上った。その後、政府関係者や古参外交官などが火消し発言をしたため、やっと収まった。

・11/16、甘粛省で幼稚園の送迎バスが大型トラックと衝突。園児19人を含む21人が死亡。定員9名のバスに64人の園児が乗っていた。
・11/29、河南省で幼稚園の送迎バスがトラックと衝突。園児10人が負傷。定員9名のバスに16人が乗車していた。
・11月中旬、中国政府、バルカン半島のマケドニアに通学バス23台の寄贈を発表。
・ネット上では、「自国のことが解決できていないのに、なぜ多国に援助なのか」、「マケドニアの教育費はGDPの5%、中国は4%。2010年のマケドニアの1人当たり平均収入は4540ドル、中国は3650ドル。それなのになぜ無償援助をしなければならないのか。マケドニアの子供の方が、ずっと幸福だ」などの批判で炎上した。
・11/28、外務省副報道局長が、「援助は相互のものだ。マケドニアは四川大地震で対中援助をしてくれた」と発言。

・古参外交官:呉建民氏のネット上での発言 


 我が国のスクールバスは、まだ良いとは言えない。この問題解決に向けて、政府はすでに動いているとは思う。しかし、他の人より良く発展してから援助するのは、表向きは良く見えるが、実質的には損をすることになる。

 このことについて、多くの方は、誤解しており、世界のことは全て繋がっていることについて理解していないと思う。例えば、他人に対する援助は、必ずしも自分より貧乏でなければならないことではない。例えば、災害が発生した時、皆から援助が入る。我々が援助する国は、私たちより豊かである場合だってある。しかし、災害に見舞われたので、助け合うのは、当然である。
 マケドニアは、一人当たりのGDPは中国より高いが、抱えている問題もある。国と国の関係を発展している中で、スクールバスを援助するのは、問題ない。
 中国は、何と言っても大国である。世界の中における信用はどこにあるのか。人間味や道義があり、他の国に対して関心を寄せている国でなければ、他の国から好まれない。中国の発展は、世界と切り離すことが出来ない。
 中国の発展は、世界との関係が緊密であるため、スクールバスに問題があるからと言って、援助しないという事は良くないと思う。
 以前、中国が相当苦しい時でも、タンザニアやザンビアに、鉄道の建設に援助したことがある。1.5億ボンド掛かった。
 当時、一般民衆からも批判が有った。民衆には民衆の視点がある。1.5億ボンドは、当時、中国の外貨準備高の3分の1に当たる金額である。援助の結果として、アフリカ諸国に対する政策が西方諸国と明らかに対照的であった。鉄道が完成した時、タンザニアの総統は、過去、色んな国がアフリカで鉄道や道路建設を行ったが、いずれも略奪のためであった。中国が私たちのために鉄道を作ったのは、アフリカの発展のためである。中国人は本当にアフリカのために助けてくれている、と話している。
 1971年、中国が連合国に復帰した時、毛主席は、「アフリカの兄弟達が連合国の中へ運んでくれた」と感銘していた。1971年、中国と国交がある国は64カ国しかない。多くの発達国家は、中国と国交がなかった。1978年に改革開放政策を実行しているが、多くの発達国家が中国と国交を結んだのは、連合国へ復帰してからとなった。1971年に連合国へ復帰していなければ、1978年に世界へ向けて開放することが出来たのだろうか。中国に今日のような発展を遂げる事が出来たのだろうか。
 アフリカに対する援助にはお金が掛かったが、開放するための基礎を作る事が出来た。
 寄贈することは、好意があるから寄贈することである。困難な時に助け合うのは、国と国との間に平等互利の関係であり、貧乏か裕福かとは関係がない。
 中国のブン川地震の時だって、貧乏な国からの援助も多かった。これは、人間として相互友愛の感情であり、大事なことである。

・12/11、国務院法制弁公室は、「スクールバス安全条例草案」をまとめ、一般意見の公募を始めた。草案には、スクールバスの時速制限を60km以下とする、公共バス専用レーンを設ける、安全上に問題のあるミニバンなどの非専用車を3年以内に淘汰する、そのための補助金や優遇税制などの財政負担は中央政府と地方政府で分担する、などが盛り込まれている。

☆ある新聞によれば、国内の小中学生は2億3千万人とされており、このうち児童・生徒1億人がスクールバスを使用した場合、40〜50万台が必要となるため、毎年13〜16万台の新規需要が生まれることになり、国内の商用車メーカーはこの降って湧いたような商機に色めき立っているという。なお現時点の国内の商用車メーカーの年間総生産台数は30〜40万台である。