小島正憲の凝視中国

暴動情報検証 : 2010年6月 


暴動情報検証 : 2010年6月 
11.AUG.10
1.〜3.は検証済み。4.〜6.は未検証。      暴動レベル基準は文末に掲示。


1.6/11、広西チワン族自治区桂林市灌陽県福星村で、ごみ処理場の建設阻止で村民1万人余が抗議。  暴動レベル 1。

・マスコミ報道 : 2009年7月、もともと灌陽県合竜村に建設する予定のゴミ処理場が急に福星村に変更されたので、村民は建設予定地が周辺一帯の主要水源であるため、田畑や飲み水の汚染を心配し、反対行動を起こし、阻止していた。その後、村民たちは、県、市、省、中央など、あらゆる政府機関に建設中止の陳情をしたが、政府は無視し続けた。逆に09年12月、政府はブルドーザーなどをこの村に運び込み、強制執行しようとしたが、村民に実力阻止された。2010年5月13日、再び工事を行おうとしたが、村の老人たち数百人が道路に座り込んで、これを阻止した。6月1日、警察と武装警察合わせて600人が、村に入り、工事を開始しようとしたが、再度、村の女性や子供、老人数百人が道路に座り込んで対抗し、これを阻止した。

6/11、午後1時ごろ、福星村の莫剣という村民が警察に拘束された。午後6時ごろ、政府の関係局長と職員が5名の警察と共に、村に入り彼の妻に拘束通知を渡そうしたが、村民に取り囲まれ監禁状態となった。政府は救出のため武装警察200人を出動させた。ただちに近在の村民1万人が集まり、村民がイスやレンガを投げつけ警察数人が怪我をする大騒動となったが、武装警察が催涙ガスを発射して、午後11時過ぎに村民を解散させた。このとき、村民10名前後が拘束された。

              

・実情 : 村民の話によれば福星村のゴミ処理場建設予定地には、周辺の灌陽・全州・興安3市のゴミが捨てられるという計画で、その量は膨大なものになるという。この建設予定地は近郷18村の主要水源であり、村民はその汚染を心配し、反対運動を起こしていたが、政府から明確な返答はなかった。6/11、突然、村民が拘束され、政府の役人が拘束通知を持ち村に入ってきたので、村民が取り囲んだところ、ただちに武装警察500人ほどが出動してきたので、近郷の村民1万人ほどがかけつけ、大騒動になった。村民10人余が拘束。

その後、現在(8/07)に至るも拘束者は釈放されていない。また工事の進展もなく、未解決。

・私見 : 福星村は少数民族:壮族の居住地であるため、一部のマスコミでは少数民族と漢族の対立が原因ではないかと報道されたが、灌陽・全州・興安にもかなりの壮族が居住しており、その見解は当たらない。

・雑記 : 1934年冬、労農紅軍は長征の途中で福星村の北方を通り、興安市の北方へ抜け、湘江を渡る地点で国民党軍や地方軍閥軍と激戦を行い、おおきな損害を被った。この戦いはコミンテルン派遣の極左的指導によるものとされ、この敗北の総括の結果、遵義で毛沢東の指導が確立した。激戦現場の湘江は、幅50mほどで浅いところでも4〜5mの深さがあり、流量もかなりあった。


2.6/11、安徽省馬鞍山市で、交通事故に怒った市民数千人が騒ぐ。  暴動レベル0

・マスコミ報道 : 6/11、夕方6時ごろ、馬鞍山市の天潤発路の入り口付近で、政府の局長の運転する車が、中学生をはねて怪我をさせた。局長は謝らなかったうえに、その中学生を殴った。それを見ていた周囲の市民が局長の行動をとがめ、車に乗って逃げようとした局長を引きずりおろそうとしたが、局長は車の中から警察に携帯電話で、救出を求めた。そのころすでに数百人の市民たちが車を取り囲んでいた。数十人の警察が現場に駆けつけたが、市民は人垣を作って、車に近寄らせなかった。その間に、どんどん野次馬が増え、1万人ほどに膨れ上がった。夜10時ごろに、市政府の幹部たちが現場に来て、市民たちの説得にあたったが、まったく効果がなかったので、武装警察300〜400人を出動させ、催涙ガス弾を発射したので、夜10時半ごろ、騒ぎはようやく鎮まった。

           

・実情 : ほぼマスコミ情報通り。ただし事件が起きた場所は、湖北東路と王家山路が交わる信号のない三叉路で、スーパー「大潤発」の入り口。事故を起こした政府の役人は馬鞍山市「旅遊局長」で、事故当時、その車に女性1名が同乗していたという。騒動後、局長は免職。中学生には2万元の賠償金が支払われたという。


3.6/27、江蘇省南京市で、警察の交通事故処理に怒った市民数百人が騒ぐ。  暴動レベル1

・マスコミ報道 : 6/27、午後6時40分ごろ、南京市南部で土砂運搬の大型トラックが赤信号を無視して交差点に突っ込み、1台のバイクに衝突、そのまま30mほどひきずった。バイクは男性が運転しており、その男性は足を折る大怪我、後ろに乗っていた幼児と妊婦が即死した。トラックの運転手は車を降り、走って逃げようとしたが警察に捕まった。警察が現場検証のため、トラック運転手を連れて現場に戻ったところ、集まった市民数百人が、運転手に暴行を加えようとしたため、警察がそれを阻止しようとしたところ、怒った市民がパトカーなどをひっくり返し騒いだ。たまたま近くにいた高速鉄道警察官100人ほどが現場に駆けつけ、騒動を沈めた。現場付近では、建設用トラックの無謀運転で死亡事故などが多発していたが、警察は通行料を払う運転手には、スピード違反や過積載などを厳重に取り締まっていないという。この警察の態度に、市民が怒りを爆発させた模様。

・実情 : マスコミでは南京市南部というだけで具体的な地名が出ていなかったので、南京駅周辺でタクシー数台にこの事件を聞いて回ったが、よくわからなかった。そのうちあるタクシー運転手が事故のことを知っているというので、それに乗って現場に向かった。南京市江寧区金盛路という場所で降ろされたので、その周辺で聞き込みを行った。ところが事件は6/30、夕方8時ごろ起き、事故車は乗用車であり、運転していたのは政府の役人で、酒を飲んでおり、交差点で9人をはね、5人を死亡させたという。当時、現場にはすぐに1000人ほどの市民が集まり、警察の厳正な処分を要求したという。その交差点付近で市民に状況を聞いていると、そのうちの一人が、前掲のマスコミ報道のトラック事故とこの事件はまったく別であり、トラック事故騒動はこの地点より、さらに1kmほど南で起きたという。現場はそんなに遠くはないようだったが、すでにかなり暗くなっていたので、その現場に行くことはやめた。

・私見 : 最近は中国も車社会に入ってきたことから、交通事故がらみの騒動が多くなってきている。警察の情実が入ったあいまいな処理が、問題を一層複雑にさせているようである。


4.6/21、山東省イ(サンズイに維)坊昌邑市近郊の農村で、土地収用問題で官民衝突。  暴動レベル1

・マスコミ報道 : 6/21、土地収用に反対する村民約300人と地元政府関係者が衝突。このとき、村民の一人が政府関係者の車に轢かれ大怪我をしたので、村民がその車を壊し、その車の運転手を取り押さえ殴った。さらに村民は政府関係者の車22台を取り囲み、パンクさせて走行不能にし取り押さえてしまった。

村民らによると、2か月前、村民は政府から国道建設のため村の土地を収用するとの通知を受けた。村民は補償金に不満で同意せず、強制執行しようとし重機を運び込んだ政府との間で騒動が起きていた。


5.6/27、四川省徳陽市八角井鎮で、再建賠償金の着服疑惑で官民衝突。  暴動レベル1

・マスコミ報道 : 6/27、徳陽市八角井鎮で村民5000人が、現地政府職員が村民の家屋再建賠償金を着服しているのではないかという疑惑が起こり、高速道路を封鎖するなどして抗議。政府は1000人以上の警察を出動させ、村民を解散させた。この衝突により村民300人が負傷、200人余が逮捕拘束された。

四川省大地震の後、徳陽市の政府は国営企業:東方汽輸機有限公司は工場再建のため、50億元を投資した。その中から村民各戸に26万元の賠償金が給付される予定であったが、8万元しか支払われていなかったので、政府職員の着服疑惑が浮上していた。村民たちは現在も、同公司の門前で座り込みをし続けているという。


6.6/22、湖北省潜江市の臨時採用警察官12人が、北京陳情。  暴動レベル0

・マスコミ報道 : 6/22、潜江市の臨時採用警察官約100人の中の代表12人が、解雇されたことに抗議して北京陳情。潜江市には、毎年非正規雇用警察官から正規雇用警察官へ切り替えられる枠があるが、その資金枠が市の幹部らによって使い込まれ、非正規雇用警察官が解雇されたことに、抗議したもの。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動