小島正憲の凝視中国

深セン雑報 (2010年1月16日) 


深セン雑報 (2010年1月16日) 
20.JAN.10
1.電気自動車、充電スタンド出現

・マスコミ情報 : 昨年末、深セン市龍崗区大運会場館西側に電気自動車用の充電スタンドが建設され、急速充
電器6台と充電コンセント6台が設置された。龍崗区中心城和諧路西側にも同様の充電スタンドが建設。すでに深
セン市内の天光電科技などにも設置済みであり、あらたに充電スタンド2か所と充電コンセント134か所の運用が
開始され、深?市では充電インフラの充実が加速している。

・実情 : たしかに龍崗区大運会場館西側の充電スタンドは建設されていたが、急速充電器は1台のみで、あと5
台分は土台のみが設置されているだけで、上に赤い布がかけられたままだった。また充電コンセント6台は片隅に
一列に並べらているだけで、あまり実用的ではない感じがした。充電に来る電気自動車を見てみたいと思い、事務
所で暇そうにしていた服務員に状況を聞いてみると、「まだ1台も充電に来ていません。ひとまずオープンしました
が、実際に忙しくなるのは半年ぐらい先のことでしょう」と話してくれた。せっかく設置されたのになぜ使用されていな
いのだろうかと思い、その理由を聞いてみると、「深?市内にはまだ電気自動車は100台しか走っていません。ここ
は遠いのでわざわざここまで充電するために来る車はありません」と答え、さらに「急速充電器で充電するのに1.5
時間、充電コンセントでは6時間ほどかかります。それでも300kmぐらいしか走れませんから、誰も来ないでしょう」
と話してくれた。それを聞いて私は、おそらくこの充電スタンドは宣伝用だと思い、急速充電器の前で記念撮影をし
てその場を後にした。

       
  

・追加情報 : 深セン市は2012年までに電気自動車など非ガソリン車を2万4千台、15年までに10万台を普及
させる方針。深セン市を拠点とする中国最大の電気自動車メーカー比亜迪(BYD)は、深セン市ぐるみで着々と地
歩を固めているという。

2.社保退出者、2万人が押し寄せる

・マスコミ情報 : 昨年の12/31、深セン市内福田区の社会保険センターに、養老保険の退出手続きを行う出稼
ぎ労働者約2万人が殺到し、付近の交通が麻痺するなど大混乱した。警官100人ほどが出動し整理に当たった。
中国では「城鎮企業職工基本養老保険関係移管継続暫定弁法」が、2010年1月1日から実施されることになり、
保険加入者は現在の勤務地から他の省に転出してもその地の所管社会保険センターで、保険が順調に移管継続
手続きを行うことができることが決定された。しかしこの法律が執行されるのに伴い、転出・移管継続ではなく、退
出希望つまり保険を脱退しようとする加入者は12/31までに退出することと規定されたため、深セン市内でいろ
いろな噂が飛び交い、退出者が大量に押し寄せたものと思われる。

・実情 : 実際に大量に退出者が殺到したのは、市内福田区中心部の「社会保険基金管理局」ではなく、福田区
八卦2路にある「社会保険個人服務中心」であった。そこは退出手続きを一手に引き受ける場所で、工業開発区の
中にあった。センター付近の道路には「今、慌てて保険を止めると、老人になってから困るよ」とか、「あなたがどこ
で仕事をしても、保険はどこでも継続できますよ」と書いた横断幕が掲げられていた。

  

 周辺の小売店の販売員などに聞いてみると、「12/31には大量の出稼ぎ労働者がここに集まってきたので、大
混乱した。ただし騒動のようなものは何も起こらなかった。1月初めに入ってもまだ相当数の人が来ていたが、やっ
と最近少なくなった」と話してくれた。私がそのセンターに訪れたのは土曜日で、事務所は休みであったが、そこに
は10数人の労働者が来ていた。その中のある労働者は「5年前に四川省から来てここで働いているが、来年には
郷里に帰るつもりだ。今回の法律では10年以上の勤務者でない移管手続きができなくなると聞いたので、退出しよ
うと思ってやって来た」と話してくれた。「そんな規定はないよ。たとえ1か月でも郷里で継続できるよ」と私が話して
やると、側にいたもう一人の労働者が「政府のことは信用ができないし、田舎では手続きが面倒だから、今止めて、
現金をもらった方がよい」と大きな声で反論してきた。

3.武装警察約100人出動。農民、土地代金の増額を求め抗議行動か

・他の暴動調査のために、タクシーで深セン市光明新区に入ったとき、交差点に20名ほどの警官がいた。通常の
交通整理にしては異様に多かったので、誰か政府の幹部が視察にでも来るのではないかと思いながら、大通りをし
ばらく走った。するとその道路の突き当たりの場所で、100人ほどの武装警察が道路の両側と会社の前を封鎖し
ていた。残念ながら私は、今まで長い間暴動調査を行ってきたが、その現場に立ち会ったことは少ない。だから私
は「犬も歩けば棒に当たる」のことわざのように、今回は運がよかったと思って、さっそくタクシー降りその付近の住
民に話を聞くことにした。

  

・住民の話によれば、「この辺り一帯の土地を米国の“杜ホウ太陽能”という会社が地元政府から、高値で購入し
た。ところが数年前に農民がこの土地を地元政府に売り渡したのはその1/10ほどだった。したがってそれに不
満な農民が、この土地に座り込むという噂が出たので、武装警察が警戒している。つまり武装警察が騒動を事前に
防いでいる格好なのだ」という。

・私はその衝突場面が見られるかと思い、1時間ほどその場に待機していたが、「どうも農民側が今日は来ないよう
な様子だ」というので、あきらめてそこを後にした。

・なお、その日の前後数日間のマスコミ情報に詳しく目を通してみたが、この場所での騒動の記事は見当たらなか
った。何事も起こらなかったのか、小さな事件なので報道されなかったのか、真偽のほどは結局わからなかった。

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※以下の4.と5.は、未検証なので未確認情報として扱っていただきたい。ただし複数のメディアから同様
の情報を入手したので、まったくの誤報ではないと考えている。


4.深セン市でウィグル人男性刺殺される。 広州市ではネットでデマ情報の男性、拘束される

・12/06夜、深セン市経済特区内にある新疆料理店で、お客の漢族7人とその店のウィグル人男性服務員が、
サービス態度をめぐって喧嘩となった。この服務員が刺し殺され、漢族男性7人が警察に拘束された。警察は新疆
ウィグル自治区への飛び火を警戒し、現場一帯を厳重に監視中。

・2010年1/07、広州市の3人の男性が、「新疆からでてきたウィグル人男性が、中山5路5月花広場付近で万
引きをして広州市民や守衛に捕まり殴られ、騒動となった」とネット上に情報を流した。実際には、「12/22午後6
時ごろ、ロシア国籍とカザフスタン国籍の2名の男性が、北京路付近の商店でベルトを1本盗んでいったので、店員
が5月花広場まで追いかけ取り返そうとし喧嘩となり、現場近くの守衛2名もそれに加勢し、騒動となった。野次馬も
かなり集まった模様」だった。ちょうどそのときそれを目撃した男性たちが、それをウィグル人だと思いネットに誤っ
た情報を流した。広州市公安局はこの男性たちをただちに拘束した。

5.児童の誘拐続発

・深セン市南山区や福田区で、児童の誘拐・殺害事件が連続して発生している。
 今のところ日本人学校へ通う児童が被害にあったという報告はない。

・市当局の7月の局内会議で、「4月には52件の誘拐事件があり、第1四半期では月平均44件の誘拐事件が発
生した」との報告があったという。

・市民の間に10月には20人近くの児童が誘拐されたという情報が広まったので、12/08、市当局は「10月に4
件の児童誘拐事件が発生し、2人が殺害された」ことを認めた。

・誘拐は身代金目的の組織集団によって行われている模様。父兄は自分の手で学校への送迎を行うことで自衛し
ており、登下校時の学校周辺は大混雑となっている