小島正憲の凝視中国

09年12月 : 暴動情報検証 


09年12月 : 暴動情報検証 
22.JAN.10
1.と2.に関しては検証済み。3.以下は未検証、情報のみ。暴動レベル基準は文末に掲示。

1.12/16 安徽省阜陽市で、営業用三輪車の禁止に車夫が抗議。  暴動レベル0。

・マスコミ情報 : 12/16、阜陽市人民政府前で、営業用三輪車の市内運行禁止に反対する車夫など2000人が抗議。数百人の警察と衝突。抗議者20人が負傷。

・実情 : 阜陽市では近年、電動三輪車などが異常に増え、1万台を超えた模様。それにともない交通が随所で渋滞し、交通ルールを全く守らない三輪車による交通事故も増えたため、市政府は営業用の電動3輪車の市内運行禁止を決定した。

12/16、抗議する車夫など1000人が市人民政府前に集結。そこに野次馬が1000人ほど集まり、交通が麻痺したため、警察200人ほどが整理のため出動。流血騒ぎはなかった模様。

        
     12/16阜陽市人民政府前                 1/18 阜陽市人民政府前≫

市の規定によればガソリン使用の三輪車は禁止対象外。ただし市内の主要6道路については運行禁止。荷運びのための三輪車は電動・ガソリンを問わず禁止の対象外。市政府は営業用電動三輪車を強制的に回収し、補償金として1台につき、2150元(奨励金を含む)支払った。電動三輪車の新車の市内での販売価格は3160元であり、回収されたものは古い三輪車が多く、車夫たちは大損にはならなかったようである。

私見 : 近年、中国では電動三輪車が、安価で手に入るため急増している。それらの電動三輪車を運転するのに免許は不要であり、彼らは交通ルールを守らず、はなはだしい場合には道路を逆走したり、赤信号でも平気で進行したりする。もちろん税金などは払っておらず、またアルバイト感覚でやっている者も多く、低価格で営業をするので、タクシーなどの営業を妨害しているのが現状である。たしかに地方では庶民のかかせない足となっている所もあるが、都市では営業運行を禁止している場所が多い。

  
      三輪車禁止の横断幕

※現在、中国国内で、電動バイクが1億2千万台使用されており、中国政府は1月1日から規制のための新基準を発表する予定であったが、国内自転車メーカーなどからの反発が多く、それを延期した。

2.12/10 広東省深セン市光明新区公明鎮公明工業区で、強制立ち退きに反対する会社の従業員と警察が衝突。暴動レベル1。

・マスコミ情報 : 12/10、茂港区裁判所は光明新区内の深セン太陽管道公司の土地及び建物の立ち退きを、警察70人で強制執行に踏み切った。工場内には労働者数十人がいて、レンガやガラス、花火弾、爆発物などを投げつけ抵抗したので、警察は100人ほどを増員して鎮圧した。衝突は20分ほど続き、労働者20人あまりが負傷した。

この物件は1999年から係争中であったが、茂港裁判所は深セン太陽管道公司の土地及び建物を競売にかけ、深セン市秋碩投資発展有限公司に売却した。ところが深セン太陽管道公司から建物の一部を借りて操業していた会社の労働者たちがその決定に納得せず、騒動に発展した。

  
     深セン太陽管道公司の表門

・実情 : 光明新区は深セン市の中でも、かなり辺鄙な場所であり、区の中心部にタクシーも三輪車もなかった。また飲食店や雑貨品の販売店で、この事件のことを聞いても誰も知らなかった。仕方がないので、違法営業のバイクの運転手10人ほどに聞きまわったところ、ようやく太陽管道公司の場所を知っているという運転手をみつけたが、それでも事件のことは知らないという。とにかくバイクの後ろに乗って、その場所に行ってみることにした。ところがそのバイクがさびれて人影もまばらな工場街を通って突っ走るので、どこに連れて行かれるのかと怖かった。15分ほど走って、公明鎮公明工業区という場所で降ろされた。運転手はここが太陽管道公司だというが、看板も何もなかったので信用できなかった。その工場の裏手に回ってみると、大きな煙突があり、そこにはわずかに太陽管道公司という文字の痕跡が残っていた。また裏門には20人ほどの警察が待機していたので、思い切ってその中の一人に、「ここで騒動がありましたか」と聞いてみると、「そうだ。ここで騒動があった。お前は新聞記者みたいだが、この辺りをウロウロせず早く帰った方がよい」と意外にやさしく答えてくれた。裏門は完全に閉鎖され、警察以外の人間はいないようだった。再度、表門に回りよく見てみると、表門はコンクリートで閉鎖されており、通用口には警察が4人警備に当たっていた。

・私見 : 今回の騒動は企業間の債権・債務問題に絡み、裁判所が下した判決とその強制執行に、元の会社から一部を借り受けて稼動していた工場に勤務していた労働者たちが騒動を起こすという事件であり、かなり複雑な様相を呈していた。今後は中国でも、このように権利関係が複雑に入り組んだ事件が増えてくるのではないかと思う。


3.11/27 貴州省貴陽市雲岩鎮 土地開発商が雇った男たちと住民が乱闘。  暴動レベル1.

・貴陽市雲岩鎮で、11/27未明、土地開発不動産業者が雇った身元不明の男たち10名ほどが、就寝中の住民をバスに拉致しそこに押し込め、ブルドーザー2台で住居を破壊し始めた。30分ほどで26軒を壊した。駆けつけた警官が男たちを止めようとしたができなかったので、上部に連絡し応援を依頼した。一方、住民側も30名ほどが大きなドラム缶や横断幕で道路を封鎖し、男たちに対抗した。この影響で、現場の交通は朝7時から9時まで完全に麻痺した。多数の警官が現場に駆けつけたので、男たちは撤収して行った。

・行政から土地開発の許可を取った不動産開発業者に対して、従来からそこに住んでいる民衆が立ち退かなかったため、今回のトラブルとなった。

・不動産開発業者側の男ら20人、住民4人が警察に拘束。

4.12/01 広西壮族自治区横県石塘鎮霊竹地区で、警察と村民が交通取り締まりをめぐり衝突。  暴動レベル1。

・横県石塘鎮霊竹地区で、12/01、交通警察がナンバープレートをつけていないオートバイを調査していたとき、村民がニセ警察と疑って、警察に身分証の提示を求めた。ところが警察はそれに応じず、村民を殴った。

・この強圧的な振る舞いに怒った村民が、警察を取り巻き、レンガなどを投げつけるなどして抗議。

・すぐに現地に応援の警察100名が駆けつけ、村民を鎮圧。村民側の負傷者26名、重体1名、30名以上が連行。

5.12/05 四川省甘孜藏族自治州雅江県で、チベット人抗議。  暴動レベル2。

・12/05、100人以上のチベット人が2002年に逮捕、現在も投獄されているチベット族僧侶の釈放を求めて、県政府前でハンガーストライキ決行。100人以上が逮捕。7人が負傷、3人が治療中。

・600人以上のチベット人が応援に駆けつけたが、阻止された。

・当局は現地に軍隊を駐留させ、雅江県に戒厳令を敷いた。現地の商業活動は停止、主要道路は閉鎖。

6.12/16 山東省煙台市で、約300人の退役軍人が抗議。  暴動レベル0。

・12/16、煙台市で約300人の退役軍人が、待遇の改善を求めて市政府の陳情受付事務所前に集合し抗議した。

・数百人の警察が包囲する中、市政府の人事副局長が善処を約束したため、解散。

・退役軍人らは、退役後も、次の職場で現役時代と同等の待遇を約束されていたにもかかわらず、現状はかなり劣るので、それの改善を要求。

7.12/28 天津市で電動3輪車の車夫が鉄道線路上で抗議。  暴動レベル1。

・天津市で、12/28、電動3輪車の車夫が市政府の営業禁止命令に抗議した。車夫のうちの数人が鉄道線路内に入り込み、抗議活動。

・北京行きの長距離列車に轢かれ、4人が死亡、多数が負傷。

・当局は鉄道の正常運行を妨害したとの理由で、車夫らを逮捕。

8.12/31 広東省懐集県詩洞鎮で、土葬墓をめぐり村民と警察衝突。  暴動レベル1。

・懐集県詩洞鎮で、12/31、土葬を禁じている政府の方針に従わない村民に対して、警察が土葬の墓を掘り起こして強制的に火葬にしようとした。

・これに村民が抗議。警察は村民を銃で威嚇し、電気棒で殴打した。数百名の武装警察も加わり、催涙弾を放つなどして村民側を制圧。20人余りの村民が負傷。3人が意識不明の重体。

・村民はメディアなどに訴えようとしたが、当局が村周辺を封鎖。記者などは立ち入り禁止となっているという。


≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動