09年6月暴動情報検証
09年6月:暴動情報検証 |
22.JUL.09 |
6月4日は天安門事件20年に当たっており、民衆の動向が注目されていたが、中国を含む世界は意外に平静であった。 6月1日の日経新聞は「中国、進む風化 進まぬ民主化」とうまいネーミングで天安門事件20年の記事を載せているが、6月4日を迎えた世界はまさにそのように進んでいることを証明したようだ。 6月3日夜、米国ワシントンの連邦議会議事堂前では、天安門事件20年集会が催され、「天安門のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた柴玲さんや、元北京大学生の王丹さんらが当時の仲間と久々に再開を果たした。 柴玲さんは天安門事件後、中国当局の指名手配を受けた活動家21人のひとりで、国内逃亡の末、90年4月に香港ルートで国外脱出に成功し、現在は米国のボストンでコンピューター関連の企業経営者として成功しており、海外での民主化運動からは実質的に遠ざかっていた。 人道支援などの活動を積極的に行っているというが、まさにこの柴玲さんの生き様が天安門事件の風化を象徴しているのではないだろうか。 それでも香港では5月31日から6月4日にかけて集会やデモが行われた。 当日には追悼集会が開かれビクトリアパークのサッカー場に15万人が集結した。 これは天安門事件後、最大規模の集会であったという。 この文章を書いている最中に、ウルムチで大きな暴動が起きた。 これは今回の記事の中のB・C・D、ことにDの広東省の工場での騒動が直接の原因となっているされている。 このウルムチ暴動については、7/13付けで「ウルムチ暴動緊急短信」として各位にお知らせしておいたが、詳しい真相については、現地調査を慎重に行い、遅くない時期にしっかり報告したいと考えている。 今回も@、Aは実地検証済み、B〜Jは未検証で情報のみ。 また、暴動評価基準は文末に掲示。 @6/15 江西省南康市 家具業者、新税制に反対し、大規模抗議 暴動レベル2。 マスコミ報道 : 6/15午前10時、約100人の家具業者が市政府の新税制に反対して集団陳情。 彼らは午後、国道105号線を封鎖したため、野次馬が数千人集まり、近辺の交通が麻痺した。
排除しようとした警官隊と衝突し、怒った抗議者により、パトカー14台が壊された。 抗議者数人が逮捕された。 同日午後、市政府はこの税制の執行の延期を発表。夜9時ごろになり、抗議者は解散。 家具業者はこの新税制の延期ではなく、撤回をもとめて引き続き抗議活動を行っていく予定。 暴動理由 : 家具業は同市の主要産業。市政府が6/15から家具、木材に関する税率を大幅にアップしたた
め、家具業者が抗議行動を起こした。従来の税金は400〜500元/トラック1台分で、新税は 200元/1立方メートル。これにより業者の税負担はかなり重くなるという。 6.15車両破壊現場 6.15国道での抗議 6.15家具市場前 7.17同上現場 7.17同上国道現場 7.17同上買う市場前 実状 : マスコミ報道とほぼ同じ。下記は追加情報。 @.7/17現在では、上記の現場対比写真のように平穏そのもの。警察の警戒車両などもまったく見当たらない。 A.南康市は80万人ほどの地方都市で、中国3大家具生産基地の一つだという。中級家具を生産しており、市内
の目抜き通りには家具の卸売り店がずらりと並んでいる。 B.6/15、家具業者たち数千人が市の新税制に反対して家具市場前に結集。それに2万人を超す野次馬が集
まった。C.急に野次馬の人数が増えたので、警察は遠巻きに眺めているだけで手を出せなかった。警察車両 が破壊された。 D.家具業者の婦人たちは、独自に人民政府前に抗議に行ったが、警察犬に追い立てられて解散。 E.副市長が市政府の代表として、説得のため抗議現場に現れたが、群集に殴られて怪我をして退散した。 F.6/15、武装警察が出動。抗議者と野次馬は解散。死者なし。負傷者もほとんどなし。 G.南康市共産党書記は解任。 A6/19、20 湖北省石首市 警察の不審死捜査に憤慨し暴動 暴動レベル2。 マスコミ報道 : 6/17、勤務先のホテルの前で、このホテルの男性料理人が遺体で発見された。警察が詳しく
捜査をせず、自殺と断定したので、家族がそれに納得せず、ホテル経営者による殺害を疑い警 察に抗議。この事件に暴力団が介入し、さらに拡大。19、20の両日に石首市の主要道路である 東岳山路と東方大道を封鎖し、排除しようとした警察と衝突。このとき野次馬を含めて1万人ほど の民衆が集結。警察車両を壊し、ホテルを焼き討ちするなどに及んだ。民衆200人が負傷した。 6.20 ホテル前に集結した石首市の民衆 6.20 炎上するホテルの玄関前 野次馬が集結した東岳山路:7.15撮影 7.15時点 修復中のホテル 実状 : 基本的にはマスコミ報道通りであったが、情報として下記の諸点を追加する。 @.このホテルの共同経営者に公安関係者が入っており、ホテル側は事件を表沙汰にせず処理しようとした模様。 A.このホテルでは、数年前にも14歳の男性が怪死しており、同様に処理された。 B.石首市は麻薬関係者が多く、このホテルも関係しているのではないかと疑われていた。ホテルの裏の地中から
麻薬用の注射針が相当数発見されたという。 C.男性料理人の死因は、肩の骨折を含む全身打撲・内臓破裂であり、警察は飛び降り自殺として処理したが、他
殺ではないかと疑われた。男性は14歳から10年以上このホテルに勤め、ホテルの内情に通じていたので、な んらかのトラブルに巻き込まれたのではないかと推測される。遺書があると言われているが、親族は死亡した 男性料理人は遺書が書けるほどの教養がなかったと話している。 D.6/20、警察が男性料理人の死因をあいまいにしたまま火葬にしようとしたので、親族がそれを阻止するた
め、暴力組織関係者といっしょになって、ホテルの玄関に火をつけた。 E.ただちに野次馬が数千人集まったため、仰天した石首市公安関係者が大規模暴動発生として、武装警察の出
動を依頼した。武装警察が到着するまでに、野次馬によって地元警察の車両が数台破壊された。その後、野次 馬は2万人ほどに増えたという。 F.武装警察1万人ほどが出動したが、野次馬と大きな衝突とはならず、6/21未明に野次馬は解散した。 G.6/21、22、23とネット上に、ホテルから別の死体が発見されたという噂が流れたので、ホテル前に数百人が
再び集まったが、警察の調査により誤報と判明し解決。 G.6/25、死亡した男性料理人の親族にホテル側から賠償金22万元が支払われた。親族も納得し解決。 私見 : 7/15の時点では、街は平穏そのものであり、1か月前に暴動があったとはまったく想像できなかった。武装警察1万人の出動は、石首市警察の野次馬に対する過剰反応であった可能性が大きい。しかし石首市は麻薬関係者が多い場所のようで、6/28付けで、禁毒を呼びかけるチラシが至るところに貼ってあった。
なお、6月末に麻薬取締り一斉捜索が警察の手で行われ、700名余が逮捕された。 石首市の人口は62万人。 B6/03 新疆ウィグル自治区カシュガル テロ組織を撲滅 暴動レベル0。 ・カシュガルの張健共産党書記は、同地で今年1月から4月までの間に、7テロ組織を摘発、解体したと発表した。 ・張書記は、以前はテロリストがタジキスタンなど中央アジア諸国から侵入して活動していたが、最近ではインターネ
ットを通じて住民を扇動していると指摘している。 C6/16 新疆ウィグル自治区ウルムチ 警官、抗議行動で関係者を誤って射殺 暴動レベル0。 ・ウルムチで、6/16、複合ビル建設の結果、日照不足が起きると周辺住民が抗議行動を行った。 ・抗議の住民60人ほどが、建設現場の出稼ぎ農民工約40人と衝突した。解散させようとしていた警官が、誤って
発砲しビル建設会社の現場監督者を射殺した。 D6/26 広東省韶関市の香港系玩具メーカーで従業員同士が衝突 暴動レベル1。 ・6/26午前2時ごろ、韶関市の香港系大手玩具メーカー:旭日国際の工場で、漢族とウィグル族の従業員同士が
衝突し、ウィグル族の2人が死亡、120人(大半がウィグル族)が負傷。 ・警官や武装警察など400人余りが出動し、争いを収束させた。 ・同工場は、韶関市の西の郊外にあり、2003年に設立され、従業員総数は8000人、電子玩具などを生産してい
る。 ・同工場では、今年5月以降、ウィグル自治区から出稼ぎ従業員800人余りを受け入れていた。ウィグル族が同工
場で働き始めてから、工場内で窃盗や婦女暴行が多発しているといううわさが広がり、今回の衝突に至った。 ・漢族の従業員が会社をいったん退職したのち、同じ会社に再就職しようとしたところ、断られたことを根に持って、
ネット上で、「同社のウィグル族6人が漢族少女2人を乱暴した」とのデマを流した。これが衝突の原因を作ったと 見られている。警察はこの元従業員を逮捕したと発表した。 この事件が発端となって、7月5日のウルムチでのウィグル族の大暴動につながっていったのだが、この時点ではそのような展開は予測できなかった。 E5/31 福建省普江市 大手スポーツ用品工場でスト 暴動レベル0。 ・5/31深夜、普江市にあるスポーツ用品メーカー「361度」の工場で2000人規模のストライキが発生。 ・公司側が、警察を導入してストを制圧。武装警察も出動し、100人以上を連行、少なくとも2人が重傷を負う。 ・労働時間が長くなったのに給与が2/3に減ったため、労働者が抗議。公司側は臨時手当300元を支払い収
拾。 F6/13 広東省広州市 立ち退き問題でトラブル 暴動レベル0。 ・6/13、広州市花都区の村民が、立ち退き問題のトラブルで地元当局の都市管理要員数名を拘束。 ・約1000人の警察が出て、都市管理要員を救出。警察と村民双方に負傷者が出た。 ・村民は「花都汽車城区拡大計画」に絡んで立ち退きを迫られており、その立ち退き料に不満で抗議をしていた。 G6/17 広東省肇慶市 立ち退き補償に不満な住民と警察が衝突 暴動レベル0。 ・6/17、肇慶市封開県の地元住民が、砕石現場建設にともなう立ち退きへの補償に不満で、警察と衝突。 ・同地で視察中の警察官3人が約60人の住民に取り囲まれ、8時間に渡り拘束された。 ・救出に向かった約100人の警察官と約300人の地元住民が衝突。双方に負傷者が出た。 H6/22 広東省汕脳市 セーター工場のオーナーが殺害される 暴動レベル0。 ・汕脳市竜湖新津街道にあるセーター工場で、従業員がオーナーを殺害した。 ・従業員はオーナーと退社問題でトラブルとなった。オーナーの態度に不満をもった従業員は、親族10名ほどを集
め、公司に乗り込み、オーナーと家族7名を殴った。この怪我でオーナーと家族1名が死亡した。 I6/29 湖南省チン州駅で江沢民夫妻乗車中の列車衝突 暴動レベル0。 ・6/29未明、湖南省チン州駅で、長沙発深?行の旅客列車と銅仁発深セン西行の列車が衝突、3人死亡、60人
余負傷。 ・この列車には、前日長沙市内を視察した江沢民夫妻が同乗していた可能性があり、現場には武装警察が出動し
警戒にあたった。劉志軍鉄道相が現場に急行し、救出作業の指揮をとった。 J6/20 山東省荷澤市東明県の住民、決死隊結成 暴動レベル0。 ・荷澤市東明県の住民には、従来から近くの化学工場の排水による環境汚染が原因とみられるガンが多発。 ・数年来、住民は汚水処理の改善を各方面に陳情してきたが、まったくの無対応が続いた。2008年度には住民
の6〜8割が甲状腺ガンにおかされるという事態になった。 ・住民は全国民に向けて決死の「公開状」を公表した。その中で決死隊を結成し、工場を破壊し、県長と共産党書
記だけを殺害すると宣言している。 ≪私の暴動評価基準≫ 暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし 暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む 暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動 暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動 |
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