上海発中国万華鏡(中国カレイドスコープ)

上海点描 2009年から2010年へ&短信:人民元の国際化をめぐる一考察


上海点描 2009年から2010年へ
2010年1月1日
2010年が明けて、5月1日開幕の上海万博まで120日。
これからはオープニングにむけてのカウントダウンに入っていく。
そして、発展著しい上海は日増しにその“貌”を変えていく。

 上海の日系金融機関で仕事をするアナリストから届いた
2009年から2010年、年明けにかけての点描です。

また、11月の短信「人民元の国際化をめぐって」を付録として掲載します。


2010年1.1上海 外灘にて

                   

「2010年元日の夜、上海、黄浦江の西側外灘(バンド:旧市街区)から浦東新区の陸家嘴金融街方面を眺めた風景。冷たい風が顔に当たっているのに、顔は熱く火照る。心の中はもっと熱く感じます。この熱さは日々変化し、躍進する上海への感慨から来るものでしょうか。そして、私が立っている後ろ側、つまり外灘道路沿いにある、100年近くの歴史を持つ数々の西洋風の建物も光を浴びて美しく輝いている。」


                         上 海 点描 20009.12.31

  

     101階建ての上海環球金融中心                    浦東側から見た浦西側の夜景


   

   黄浦江に面する旧灯台をベースに改築したレストラン                浦東新区ヤオハンデパート


                      上海 浦東新区陸家のビジネスビル概略図
              


上 海点描 2009 秋

     


  


 上 海  2009年春から夏へ

   

    2009年6月のある朝、101階の上海環球金融センターを           2009年4月始め、上海浦東新区の春
照らす朝日が眩いばかりに輝く。500メートルの上空に白い        手前のマンションは立地がよく造りもいいので、販売価格は
光が無数の矢のように熱い空気を突き破って放射している。        1平米当たりおよそ40〜50万円。上海の一般庶民にとっては
こうした様子を中国語では「光芒四射」という。                手の届かない豪華な物件であるが、ニューリッチの急増する
ところで、僕は毎日このビルに通勤していて、時々は数十階        上海では、こうした物件が毎日千件単位で売れている・・・。
階段を歩いて健康づくりに励んでいる。


短信:人民元の国際化をめぐる一考察
2009年11月8日
 すでに伝えられている「越境貿易人民元決済試行管理方法」の公布・施行(今年7月)など、人民元の国際化が始動、最初の一歩を踏み出している。

 本当の意味での人民元の国際化に至るまでは、中国国内のみならず国際的なコンセンサスなど「環境整備」に相当な時間やプロセスを経なければならないことはいうまでもない。
 しかし、人民元の決済業務のスタートは中国のみならず世界経済のこれからにとって大きな意味を持つことは間違いない。

 さしあたり以下の2点で注目すべきだといえる。 
 ―これは人民元為替レートの上昇につながる。
 ―これは新しい国際金融秩序の形成につながる。

そこでいくつかの具体的な【動向】についてメモしておく。

1)今年(2009年)8月から、人民元による貿易決済が正式にスタートした。当面、対象地域は中国では上海、広州、深セン、東莞、珠海の5都市、国外は香港・マカオ及びASEAN諸国である。これによって輸出企業は約3〜5%のコスト削減になる。対象地域は今後更に拡大されていくと予想される。

2) 今年9月、中国財政部が、香港で総額60億元の人民元建て国債を発行した。中央政府が香港で人民元建て国債を発行するのは、今回が初めてである。このほかにも、中国交通銀行やHSBC中国法人である匯豊銀行(中国)有限公司が香港で人民元建て債券を発行した。

3) 2010年に始動する中国とASEANの自由貿易区における人民元の活用・役割拡大が予想される。

4) 中国の証券取引所に外国株ボードの開設が検討されている。

 こうした動きを背景に、人民元の国際化の今後を展望する際、いま語られている【人民元の国際化三段階説】について簡略にまとめておくと以下のようになる。


T.範囲

第一段階 「周辺での国際化」香港・マカオ、ベトナム、ラオス、ミャンマ、ネパール、モンゴル等周辺国・地域での流通。現在、人民元の国際化はこの段階にある。

第二段階 「アジア地域での国際化」アジア他の国との間の主要流通通貨になること。

第三段階 「全域での国際化」。

U.役割

第一段階 人民元を国際貿易における決済用通貨に。

第二段階 資本投資用通貨に。

第三段階 外貨準備用通貨に。

 現在、以上のような段階とプロセスを踏むことがイメージされているが、一方では、人民元の国際化が進むにつれて問題とリスクが増えることから、中国は人民元の国際化を急ぐわけではない。

 問題とリスクについていうなら、さしあたり人民元へのニーズの増加に伴う人民元為替レートの上昇が予想されることである。これは中国の輸出競争力の低下、貿易収支の悪化をもたらすおそれがある。

 世界経済・国際金融市場からの影響を受けやすくなるというリスク、政府によるマクロ経済調整の難しさが増すという問題をどうのりこえるのか、中国にとっての課題も重い。

 金融危機後の最悪期を脱しつつあるといわれながら、世界経済の不均衡を解消できず米国の金融機能の回復も程遠いなかで、人民元の国際化の動きは目が離せない重要なイッシューとなってきた。

(参考:「人民元国際化三段階説」など「中国経済信息」2009/20から整理)